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“東京目線”で進められる震災処理

2013-12-20 21:26:40 | 日本の被災対応

大震災の数日後、ようやく電気が復旧した部屋の中、
真冬に暖房も無く、目一杯に服を重ね着して、久し振りに観たTV。
そして、そのTV番組で交わされていた言葉に僕は寒気を覚えた。

「 もし、同じ地震が東京で起きたら ・ ・ ・ 」という言葉に。

1995年 1月
未だ、被災した街の中では、押し潰れたビルの中の多くの亡骸さえ救い出せず、
無事だった人も水や食べ物に日々困っている最中なのに ・・・ 、

「 東京はそんなに大切か!? 」と


【 “東京目線”による報道の罪 】

それは、NHKの特別番組だった。
知識人や専門家が数名集まって意見を出し合う討論形式のもので、始まりこそ阪神淡路大震災の現状の報告であったが、やがては、同じ規模の地震が東京で発生する可能性や、万が一発生した場合の話題へと移っていった。

「 どんでもない話だ! 」

「 東京が行政関連機関の集積地である事は理解しているし、経済や文化の中心地だと分かっているけれど、それがどうした? 」
「 被災をして亡くなった人が居て、その方の家族の人々が悲嘆に暮れ、今なお数多くの方々が明日の生活さえ見えない不安な状況に直面しているというのに。 」

「 そんなに、東京だけが大切なのか? 」
「 人の命や生活は、暮らしている場所が異なっても、全てが等しく大切なもの 」
「 そして、国家行政は国民の一人ひとりの守り、マスコミは全国民を対象にする責任がある筈だ 」

日本を代表するマスコミが、その時点で最も必要な事柄を客観的に捉えず、
突然の災害に困惑し、家族や友人を亡くした悲嘆にくれ、日々の生活に困窮しているというのに、“東京”という 一地方だけに通じる話題へとすり替える事はあってはならない事だ。


【 繰り返される “東京目線”報道 】

“東京目線”報道は、災害時だけではなく、日常的に繰り返されている。

NHKでは、様々な製作番組の中で、広さを表す尺度に「東京ドーム」や「山の手線」、そして「東京23区」などを平気で使っている。
それらの尺度は 東京または関東地区に居住か勤務している人々に通じる表現であり、日本全国を対象に番組の製作報道する責任ある立場、ましてNHKであればやってはならない事である。

それなのに、大震災という非常事態であっても、“東京目線”は繰り返される。

2011年3月、東北地方太平洋沖地震では、人的被害が僅かな関東地方の被害状況だけを先行して報道を繰り返し、東京都内での飲料水中の放射性物質濃度の軽微な変化に報道の熱を上げたが、それは単に取材報道の容易さからと言うより、より深刻な人的被害を受け、なお健康被害が懸念される放射線濃度の環境に置かれていた人々の心情を無視した行為だ。

今年11月8日、台風30号で甚大な被害を受けたフィリピンの報道でも同様だ。
11月18日放送のNHK番組「クローズアップ現代」では、番組前半では被災状況を詳細に報道を行なったが、やがて地球温暖化の進行で日本も同様な台風被害を受ける可能性へと話題が移り、番組後半はCGシミュレーショんを交えて「東京が同様な台風に襲われると・・」と、“東京目線”による東京地方の為の報道へとすり替わっていった。

「 なぜ、東京なのだ? 」

日本に住む多くのフィリピン出身の方々の心情を考えると、一層いたたまれない。


【 “東京目線”で進む行政 】

“東京目線”で処理しているのはマスコミだけではない。行政も同様だ。

「帰宅困難者対策の為の法案」や「電気事業法改正案」が進められているのは、2011年3月の震災以降、基盤の脆弱な東京地区で多くの帰宅が困難な方が発生し、計画停電により様々な生活上の不便さを受けたのが東京を中心とする地区だったから。

仮に、1995年の震災の時の様に、東京から遠く離れた地区での大災害で、東京電力が一切の被害を受けずに電力送信を行なっていたなら、決して今回の様に法案が進んでいなかった可能性が高い事は無視してはならない。

現在もなお、防潮堤の建設、高台移住、産業構成と就業問題、そして除染や廃棄物処理場など、実際に大きな課題に直面している地区や人々の為の行政の行為と云えば、復興庁の設置や特別税の設定はあったものの、効果的に対処が進んでいる様子は無いし、それを中央行政府が検証して発表する様子もない。

つまり、東京に関わる事柄は神経質に取り扱うが、東京という地域から離れた遠くの地域の事になると表面的な対応でお茶を濁していると言える。

別な言い方をすれば、東京近辺に住む人々の声には敏感に反応して、そうではない地域の人々の声には鈍感であるのだ。
これは、沖縄問題と表現されている事案の原因であり、隣国の中国や韓国などとの領土紛争の底流に流れる要因にも繋がっていると言える。





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