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セッティング講座 ・ リアサスペンション編 <その4>

2014-06-24 22:38:07 | 基本講座・車両セッティング

さて、いよいよ、リアサスペンションの“プリロード調整”も佳境に入ります。 一人では作業が難しい事もあると思いますが、大切な事ですから、焦らずに進めていきましょう。

◆ 手順 3. リアサスペンションが縮みきった位置(フルボトム時)を測定します


・・ スタンドを外し、オートバイを直立させた状態で、リアシート部に大きな荷重(2~3名がリアシードに座り、他は補助的にテールカウル付近を押して)を掛け、リアサスペンションを最大限に縮めてリアシート部を沈みこませます。

・・ この時、リアホイール中心部から「手順 1.」で描いた印(ガムテープ上の)までの距離を測ります。

・・ 小型の車両であれば成人男子3~4人の体重と力で測定は可能ですが、測定が不可能な場合にはこの作業はキャンセルして次に進みます。


◆ 手順 4. リアホイールの最大移動量(ホイールトラベル)を計算します

・・ リアサスペンションの働きによりリアホイールが上下に移動しますが、その最大移動量(ホイールトラベル)の算出方法は、「手順 2.」 で測定した距離( 0G 時)から、「手順 3.」で測定した距離(フルボトム時)を引き算して求めます。

・・ 「手順 3.」 で最大限に縮めた位置(フルボトム時)を計測できない場合には、メーカーの広報資料などから、リアのホイールトラベル量を調べましょう。

・・ リアのホイールトラベル量は、車両形式や設計年代によって異なりますが、現代のオンロード車両の場合には、120 ~ 130㎜ 前後が一般的になっています。


◆ 手順 5. ライダー乗車時の位置(1G’ 時)を測定します


・・ 前後のタイヤを接地させ、ライダーが乗車してオートバイを直立状態にして、左右ステップの上に両足を置いた乗車姿勢をとります。

・・ この時、リアホイール中心部から 「手順 1.」で描いた印(ガムテープ上に)までの距離を測ります。

・・ この作業には、補助役に2~3人のサポートがあると楽です


◆ 手順 6. ライダー乗車位置(1G’ 時)が適切な位置になるようにプリロード調整をします

・・ ライダー乗車時(1G’ 時)のホイールトラベル量を計算します。
「手順 2.」で測定した距離(0G 時)から 「手順 5.」で測定した距離(1G’ 時)を引き算すると、ライダー乗車時(1G’ 時)のホイールトラベル量なります。

・・このライダー乗車時(1G’ 時)のホイールトラベル量が、「手順 4.」で求めた最大ホイールトラベル量の 1/3に一番近くなるように、プリロード調整を行ないます。




8. 補足の説明です

○ 二人乗車で荷物満載&高速走行が前提に設計されている、欧米向けの大型車両の場合には、小柄な人の一名乗車に最適な設計となっていない為、上記の 1/3 調整が出来ない場合があります。

○ どんな設計の車両であっても、1/3 調整が最も適した調整であり基本です。仮に、どうしても 1/3調整ができなくで、その車両の能力を適切に発揮させたい場合には、リアサスペンションのスプリング(バネ)の変更をお勧めします。

○ オートバイの基本はリア(リアタイヤ&リアサスペンション)です。
次章の「リアの車高調整」でも述べますが、適切な「プリロード調整」が施されてない車両では、リアタイヤのグリップ(トラクション)や運動性、安定性が十分には得られない恐れがあります。

○ この「プリロード調整」(イニシャル荷重の調整)は、リアサスペンションの場合には 1/3調整が基本ですが、フロントサスペンションの場合には 1/3調整を行なわない事を勧めます。(経験的に、フロントサスペンションの場合には 1/3調整は最適な調整にはなりません)

○ サスペンションが伸びきった状態を一般的に 0G (ゼロジー)と呼び、ライダーが乗車した状態(両足はステップ上)を 1G’ (ワンジーダッシュ)、サスペンションが一番縮んだ(沈み込んだ)状態を フルボトム(または 残ストローク)と呼びます。
(これからの講座でも用いますので、覚えておくと便利です)

○ ちなみに、オートバイの前後タイヤを接地させて直立した状態は 1G(ワンジー)と呼びます。(ライダーは乗車していない状態です)


9. 苦言・提言

◆ オートバイを購入した後で、足着き性(足の着きやすさ)をよくする為だけに、リアサスペンションのプリロード調整を行なっている事例を見かけます。

しかし、それはオートバイ本来の能力が正しく発揮させられず、安全性を損なう事に繋がる恐れがある事を理解すべきです。

ライダー自身の快適性や安心感を優先させて、本来の安全性を損なったり周りの他者の生命や健康を脅かす危険性を無視する事はやってはいけない事です。


◆ 一部のオートバイ販売店では、小柄で非力な女性に販売する目的で、リアサスペンションのプリロード調整部を改造して、リアの車高を大きく下げた状態で販売している例が数多くあります。

中には、本来の調整が不可能な改造を施した例も少なくなく、オートバイ本来の安全性や運動特性を大きく損なっています。
しかも、その改造によってもたらせる危険性を十分に告知せず販売されている例が殆どであり、ライダーの安全性を最大限保障するメーカーおよび販売店は決して行なってならない行為です。

しかし残念ながら、現状はメーカー指定の販売店でさえ行なわれている行為であり、その改造を謳った広告を目にしているメーカー、そしてオートバイ雑誌業界の全てが問題提起さえしていません。

この様な状況を見る限り、オートバイの設計・工作技術は一流であっても、生活の中で必要なオートバイ文化は一流に至っていない点が多くあると言わざるを得ません。


◆ 同様に、一部のオートバイ雑誌ではオートバイのセッティング記事を掲載していますが、それらの記事では一様に「 オートバイ・○○車は、プリロードは ◇◇mmが最適 」などと、プリロード調整からダンパー(減衰力)調整など、「 これが、ベストセッティングだ! 」などと、誤った無責任な書き方ばかりが目立ちます。

今回のプリロード調整でもそうですが、セッティングとは乗る人の体格や体重に合わせてオートバイとのバランスを取る作業ですから、乗る人が違えば(セッティング)調整値は異なるのが当然です。仮に、そういう事を無視したまま記事を掲載しているとすれば、良識が疑われる事柄です。


◆ では、私達ライダーが成すべき事は何でしょうか。

いつまでも、楽しく、安全に、オートバイライフを楽しむためには、より正しい知識を得て、多くの意見や体験を共有し合い、家族や知人達との環境を作る事に情熱を注ぐ他に無いと、私達・GRAは考えています。
そのために、私達は提案を続けていきます。




次回は、<番外編(仮称)> として、【 とても大切!リアの車高 】を書く予定です。
これは、リアサスペンションのスィングアームの適切な角度の調整(セッティング)にあたり、どんなオートバイでも操縦性や安定性を大きく左右する事柄です。

この【リアの車高】(スィングアームの角度)は、今回のプリロードの調整と大きく関係していて、車両メーカーによってよく練り上げられたオートバイかどうか?の判断ができるポイントなのです。

ぜひ、楽しみにしていてください。

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GRA公式Webサイト・イベント案内ページ

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※ 『GRAのセッティング講習』 の開催案内を下記の通り紹介します
ぜひ、ご利用ください

『 GRAのセッティング講習 』

http://gra-npo.org/schedule/setting/setting_top.html




セミの脱皮、GRAの脱皮

2014-06-23 22:43:09 | GRA活動の目標達成
一般的に、セミは土の中で 7年ほど暮らすらしい。
土の中では数回の脱皮(アブラゼミで4回らしい)を繰り返して、その度に大きく成長していく。

そして、地上に出てきて最後の脱皮(羽化とも言うらしい)をして、あの鳴き飛びまわる蝉になるらしい。
土の中の暗い生活から明るい世界に出て、しかも空を飛ぶなんて、きっと本人は予想さえしなかった変化を体験しているに違いない。

GRAも、長い活動期間の中で、3回の脱皮をしてきた。
脱皮の度に、参加する顔ぶれが変わり、活動の内容も変わってきたが、最後の脱皮は“羽化”なのかも知れない。
目にする顔ぶれが変わるどころか、全く違う姿(活動)になっているような気がする。

でも、良い事ばかりではない。
土の中では脚を踏ん張っていられたが、飛んでしまったらそれどころではない。
自由度や空間が広がったが、危ないのである。
何処へ飛んで行って、何処かにぶつかってしまうのか不安でもある。

けれど、羽化した蝉より長生きはしてやるぞ。






セッティング講座 ・ リアサスペンション編 <その3>

2014-06-20 22:29:41 | 基本講座・車両セッティング

6. リアサスペンションは、ライダー乗車時に 1/3 作動(調整)が基本

まず初めに、図 7 を見てください。
これが、「プリロード調整」を正しく行なった後のイメージです。


ライダーが乗車した時の位置(1G’ 時)が、リアサスペンションが一番伸びた位置( 0 G時)から、最も縮めた(沈めた)位置(フルボトム時)までの間の 1/3 の位置になる様にするのがプリロード調整の基本です。

どうですか? イメージはできますか。
仮に、十分にイメージ出来なくても心配はありません。
初めての事ばかりですから、事項で調整の手順を一つひとつ順番に説明をしますので、一つひとつ進んできてください。


7. プリロード調整の手順

プリロード調整を行なって、1/3 作動の位置に合わせるには、次の 6つの手順の作業を行ないます。

なお、この作業に慣れていない場合には、二人以上複数人で行なう事を勧めます。
特に、リアホイールの最大トラベル量(後で説明します)を、車両メーカーの資料で調べる事が出来なかった場合には、体力のある大柄な男性が3名ほど(♪)いると良いでしょう。

◆ 手順 1. 機材の準備とマーキングをします

・・ 必要な機材は、ガムテープ(布製がベター)、ボールペン(筆記用具)、
メジャー(金属製巻尺がベター)

・・ リアホイールの中心部から真上の位置にあるシートカウルまたはシートの側面にガムテープを貼り、最も外側に膨らんだ場所にボールペンで横線と縦線で印をつけます。( 図 8 を参照 )

◆ 手順 2. リアサスペンションが伸びきった位置(0 G 時)を測定します

・・ センタースタンドを架けて、リアタイヤが地面から離れた状態にして、リアホイール中心部から(手順 1)で描いた印までの距離をメジャーで測ります。(図 8を参照)


・・ センタースタンドの無い車両は、サイドスタンドを立ててオートバイを左側に傾けてリアタイヤを地面から浮かした状態で測定します。



・・ レーシングスタンドではリアサスペンションを伸びきった状態に出来ませんので、この測定( 0 G時 )の時には使えません。

( 次回は、手順 3. から始まり、プリロード調整の最後までを書く予定です )


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『 GRAのセッティング講習 』

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事務局の電話番号が変わりました

2014-06-19 21:23:14 | Web GRAの紹介
GRA事務局の電話番号が変わりましたので、ご案内いたします。

1995年の大震災以来、ずっとNTT固定電話で同じ番号を使っていましたが、時代の流れに合わせて変更します。

新しい番号は、 070-5044-8437 (基本・固定利用)です。

( 住所、メールアドレスには一切変更はありません )

■ GRA事務局情報 ・・ http://gra-npo.org/policy/explanation/office.html



☆ イベント 紹介 ☆

7月13日、『“わがまま”イベント 』を開催します。
イベントの内容は、参加者の“わがまま”(要望)に合わせて、イベントのカリキュラムやスケジュールを決める、参加者オーダーメイド方式です。

ですから、「 上手に走れるようになりたい! 」という人や 「 セッティングをして欲しい 」という人まで、オートバイに関係する事の“わがまま”であれば、誰でも参加を歓迎です。

詳しくは、以下の案内ページか、GRA公式Webサイトページで確認してください。

“ わがまま ”イベント・内容案内ページ

GRA公式Webサイト・イベント案内ページ







1997年 “イベント資料” 作成中 !

2014-06-14 15:58:40 | Webサイト 作成日記
年間 イベント開催回数 43回、参加者総数 2030名と、1997年は前年に続き イベント開催数が増えていった年になりました。

そのイベント開催も、単に同じ内容のイベントの数を増やしたのではなく、『 レディースベーシックジムカーナ 』や『 走行セッティング講座 』など、他には開催例の無い特徴あるイベントを企画開催する事で増えたものです。

現在は、1997年に開催した各イベント毎に“イベント資料”を作成中です。
しかし、1997年に関する “コース図一覧表”、“参加予約者一覧表”、“リポート一覧表”、“当日資料一覧表”などは完成していますので、是非 ご覧下さい。

コース図一覧表

参加予約者一覧表

リポート一覧表

当日資料一覧表

開催ポスター 一覧表



☆ イベント 紹介 ☆

7月13日、『“わがまま”イベント 』を開催します。
イベントの内容は、参加者の“わがまま”(要望)に合わせて、イベントのカリキュラムやスケジュールを決める、参加者オーダーメイド方式です。

ですから、「 上手に走れるようになりたい! 」という人や 「 セッティングをして欲しい 」という人まで、オートバイに関係する事の“わがまま”であれば、誰でも参加を歓迎です。

詳しくは、以下の案内ページか、GRA公式Webサイトページで確認してください。

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