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ミュンヘンなんて、どこ吹く風

ミュンヘン工科大留学、ロンドンの設計事務所HCLA勤務を経て
群馬で建築設計に携わりつつ、京都で研究に励む日々の記録

シチューの味

2005-11-14 09:31:02 | ミュンヘン・TUM
朝十時から夜七時まで大学の作業室でマックスとスタジオ作業。

夜はくろさかくんいそのさんと一緒に寮の僕のキッチンで夕食を食べる。
いそのさんがつくってきてくれたシチューと、くろさかくんが炊いてくれたご飯とくろさかくんが漬けてくれた漬物と、僕が買っておいたオレンジジュース。久しぶりに食べたシチューがおいしかった。日本で食べなれた味だった。食後はくろさかくんが買ってきてくれた生姜のパウンドケーキを食べながら、ティーパックで淹れた紅茶を飲む。さらに、くろさかくんがむいてくれた柿を食べたり、いそのさんがもって来てくれた丸大豆せんべいをかじったりした。夜の十一時くらいまで、ドイツのテレビ番組の話や、ドイツのポップミュージックの話、ドイツの弓道場の話や、オリンピアツェントラムのスポーツジムの話、語学学校の話や、就職の話などをして過ごす。くろさかくんが毎日デパ地下通いしていることをネタにして笑いあったり、九州出身のいそのさんを田舎ものだとからかったり、僕が飯炊きに失敗したことを話してあきれられたり…。
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生きてます

2005-11-13 06:49:25 | ミュンヘン・TUM
今日は更新できませんが、僕は生きてます。
ブログは明日更新すると思います。
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カーニバルシーズン到来

2005-11-12 00:47:56 | ミュンヘン・TUM
TUM Bibliothek (Library)

家を出ようとしていると、マックスからメールが。「10分遅れます。マックス」
昨日僕が少し怒って見せたのが効いているのだろうか。でも本当は時間にルーズなのはお互い様だったりするので僕もこれから気をつけなければ。途中のパン屋で昼飯を買ってからのんびり大学へ行く。「了解。僕はもう昼飯を買いました。作業室で待ってます。ヨースケ」

パソコンを開いてメールチェックしていると講義を終えたマックスがやってきた。
手ぶらだったので昼飯はもう食べたのかと聞くと、昼飯は自分にとってあまり重要ではないとの返事。昨日もメンザでほんの少ししか食べてなかったし、昼飯はあまり食べない人なのかもしれない。カスタードのパイを食べながら、ミーティングを始める。マックスは必修の講義「都市計画演習」の共同作業が夕方からあるので三時に抜けるという。今日は週末の作業に向けて考えを整理したり作業環境確保のための準備をしたりする日にする。昨日は模型材料をどうするかというところで話が止まっていたのだった。スタディ模型にスタイロフォームを使おうと思っているのだが、スタイロカッターをどこで借りられるのかがわからない。秘書さんに聞こうとマックスと一緒に研究室に行ったが、金曜日は誰もいないらしく閉まっていた。仕方がないのでホールデンスタジオのホームページの案内から機材のある工作室の場所を探し、ともかく行ってみることにした。その部屋はWEBカメラで24時間撮影されているらしく、ホームページ上ではライブ映像が配信されていた。「誰もいないね。今日は閉館なのかな」「いや、ちょっと待って、…ほらここ。何か動いた!ほらここ、右上の方で誰かが背中向けてる」

別棟になっている工作室に行ってみたが、閉まっていた。
開館時間も書いてなかった。使用料だけが書いてあって、3ユーロらしい。マックスもTUMの新入生なので大学施設の使い方はよくわかっていない。これは誰か他の友達に教えてもらう必要がありそうだ。「今回はスタイロはあきらめて、バルサで作らない?」とマックス。

ARTEC(模型材料店)に向かう道すがら、模型材料事情について聞く。
日本だと、建築の模型材料といえばまずスチレンボード・スチレンペーパーが浮かぶけれど、こっちでは一般的なのは紙か木らしい。プラスチックはどうかと聞くと、ほとんど使わないという。廊下に展示されているホールデンスタジオの過去の模型を見ると、白くて厚みの薄いプラスチック板を使っているものが多いように感じるのだが、これは特別なケースのようだ。確かに他のスタジオの模型を見ると、だいたいがボール紙かバルサ材で作られている。

「ところで、ヨースケはTUMに1セメスターだけいるんだっけ?」と聞かれる。
僕が「そうだよ」と答えると、「滞在を延長できないの?もう1セメスターとか」と重ねて聞いてきたので「無理だね。僕らの交換留学制度は半年間限定なんだ。三月には日本に帰らないといけないんだよ」と返す。「どうしても無理なの?他に方法無いの?」とさらに聞いてきたので「もちろんドイツに残りたいけど、この交換留学制度のままでは延長は出来ない。あらためて別の方法を探さないと」と答えて、マックスにAUSMIP制度の説明をしてあげる。「じゃあ逆に、僕もこの方法を使えば日本に行けるんだ?」「そうだよ、でもそのためには日本語を勉強しないとね」「日本語は難しそうだなあ」「難しいと思うよ。僕にとってのドイツ語みたいにね…!」

ARTECで模型材料を物色。
土日は手を動かしながらスタディをするつもりだけど、まだ図面があったりするわけではないので材料は目分量で適当に買う。マックスが模型のつくり方について相談してくる。細い材で骨組を作るやり方と、厚い材を買って削りだしていくやり方。僕の感覚では断然前者の方がよいと思うのだが、マックスは後者の方がきれいに出来るという。バルサ材を使えばカッターで簡単に削りだせるというので僕も同意した。確かに形が決まっていないのに骨組みから精巧なカタチなんてつくれないだろうしな。アルミの棒材も何本か選び、昨日つくった二人の“共同財布”でレジを済ませる。

大学に戻り、これからのスケジュールとやるべきことの整理する。
明日までに各自がリサーチしておくことを書き出す。マックスは明日実家から工具箱を持って車で来るそうだ。途中ホームセンターで買い物が出来るので、今日買えなかったような材料の買出しをお願いする。僕は今日も夕方から時間があるので、僕らの計画案に使えそうな材料やディテールについてリサーチを進めておくことにする。

なぜか、「今日は11月11日(1が並んでいる日)だ」という話題になった。
「そういえば一年前の今日、僕は彼女と出会ったんだよ」「じゃあ、今日は君たちにとって大事な日だね」「いや、そうでもないよ。付き合い始めたのは今年の三月からだからね」「じゃあ、たいせつな日はそっちだね」「でも11月11日は僕らの地元デュイスブルグではとてもたいせつな日なんだ。カーニバルが始まる日だから」「カーニバル?どんな?」「11月11日11時11分にみんなで仮装して市庁舎に集まって、騒ぐんだよ。女性はみんなはさみを持っていて、男性のネクタイを切り取ってしまうのさ。それが三月まで続くんだ」「随分長いね!」「もちろんずっとやってるわけじゃなくて、その間にいろいろな別のイベントが挟まれるんだけどね。だから僕らの地元ではカーニバルは“5番目の季節”って呼ばれてるんだよ。秋、冬、春、夏、カーニバルってね。またドイツの文化が一つ学べたね!」

マックスが置いていったドレスデン時代の材料学の教科書をちらちら拾い読み(読めないけど)しながら、作業室の僕らのブースでインターネットを使ってしばしリサーチ活動。マックスは明日、冷凍の「寿司スターターキット」を持って僕のアパートに迎えに来るらしい。昼飯にそれを食べてみよう!、と張り切っていた。
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初めての炊飯器

2005-11-11 10:15:29 | ミュンヘン・TUM
Practice Room 4107

「昼ごはん食べた?まだだったら一緒に食べない?ヨースケ」
大学に着く前にこんなメールを送ったら、「了解。作業室で待っているよ」とマックスから返信が来た。作業室に着くと、僕ら以外にもいくつかのグループが話し合いをしている。マックスがメールを書き終えるまで待ってと言うので、隣で僕もパソコンを開く。マックスに教えてもらいながら、無線LANが使えるようにパソコンの設定を変更。これで家でもここでも高速でインターネットが使えるようになった。ためしに自分のブログを開いてみる。「これ僕のブログ。ブログ知ってる?ネット上の日記。マックスのこともいっぱい書いてあるよ」と言うと「日本語だけ?英語で書いてくれなきゃ僕読めないよ~」とくやしがっていた。

昼飯を食いながら、なぜ昨日工場見学に来なかったのかを尋ねる。
昨日は一日中ミュンヘン市内でアパート探しをしていたのだそうだ。そしてようやくドイツ博物館の近くに部屋を見つけたらしい。12月1日から入居できるとのこと。「その頃には僕らの共同作業も追い込みできつくなってるだろうし、ちょうどいいよね!」と言われ、苦笑い。

カフェテリアで火曜日の講評会で指摘されたことを振り返る。
僕は「聞き覚えのあるタイトルだし、新鮮味が無いわ」と言われたと思い込んでいたのだが、まったく逆だったようで、「ナディーン(女性アシスタントさん)は僕らのタイトルをとても評価していたね。キャッチーなタイトルだし、それだけで興味そそられるって」とマックス。二つ提示した提案のうちどちらを今後進めていくかについて話し合う。僕は両者は補完しうる(補完すべき)と思うのだけど、マックスはそのうちの一方はもう捨てるべきだという。どちらの案もキープした上で、一旦どちらも忘れてみてもう一度ブレインストーミングの段階からやり直してみることを僕は提案した。もちろん、その結果としてまたこの二つの案に回帰してきてもそれはそれでいい。模型材料店「ARTEC」に言ってブレインストーミング用のカードを買い足して、三時からアパートの契約に行かなければというマックスと別れる。

マックスがいない間、一人でスタディ。
ひもで結んだ二つのカードを融合させて、新たなカードを作ろうと試みる。例えば、「“もう一人の家族(ペットや自転車を指す)”の存在」と「交通手段」を組み合わて、「よりパーソナルな移動手段の可能性」のカードを作る、というように。そんな風にいろいろ考えていたら新たなコンセプトが浮かんだので、マックスにメールする。マックスは4時頃帰るといっていたのに、いつの間にかもう七時だ。腹も減ってきて、少しいらいらする。「新しいアイデアが浮かんだので説明したいんだ。何時に帰ってくるの?ヨースケ」しかし、返信は無かった。

七時になったので、これ以上待っても無駄かもしれないと思い電話してみる。
「今日は何時に大学に戻れるの?」「もう少し待って。あと30分くらい…」作業室でスケッチしながらさらに40分くらい待つ。寛容すぎるのも考え物だ。こういうことはしっかり言っておいた方がいいと思い、帰ってきたマックスに「随分遅かったじゃないか。アパートの契約はたしかにめんどくさいから君の状況も理解できるけど、約束の時間にこんなに遅れるならメールなり電話なりするべきだったんじゃないの?」と冷静に諭した。すると僕のほうが拍子抜けするくらいマックスは素直に謝ってきた「ごめんよ。ずっと大家さんと契約のことで話していたので電話は出来なかったんだ。でも君を待たせていたんだから連絡はとるべきだった。ホントごめん。次からはもうこんなことはないようにするよ」。少し言い過ぎたかなと反省。「ああ、そうだよね。わかるよ。もう心配しないで。さあ、君の留守中に僕が考えた新しいアイデアを聞いてくれるかい?」

その後は、僕の考えた案が今までの2案とどう関連付けられるかについて議論。
より包括的なアイデア(でも僕がずっと興味を持ってきた事柄)なので、単独で使うよりも何かのアイデアを補強するために使う方がよさそうだ。

このあたりでアシスタントさんに一度エスキスを受けようと提案する。
マックスがいない間にアシスタントさんが様子を見に来たので「明日マックスもいるときにエスキスしてください」とお願いしておいたことを言うと、マックスはエスキスを受ける必要はまだ無いと言う。彼曰く、「火曜日の段階からほとんど進んでいないので、火曜日に聞いたこと以上のアドバイスは得られないだろう」とのこと。僕は「方針に迷っているこんなときこそアシスタントに相談すべきだ」と主張したが、マックスは「自分たちの考え方を深めてから行かないとアシスタントも何も言えないだろう」と依然反対の立場を崩さない。僕が「アシスタントは三人目のメンバーだと考えるべきだ」と言っても、マックスは「僕らはアシスタントのために作品をつくっているわけではない」と譲らない。「アシスタントの気に入るようにつくろうとは言ってない。アシスタントさんのアドバイスを聞いてから、僕らはそれに従うか従わないかを決めればいいのだ。週末に労力かけて作業をしようとしている前のこの段階で、客観的な意見を聞くのはいずれにせよ無駄ではないと思う」と主張すると、マックスは「僕が今週あまり協力的でなかったのは申し訳なかったと思ってる。でもそのせいもあって僕らのアイデアは火曜日以降深まっているとは思えない。週末作業して月曜日にエスキスを受けても遅くはないと思う。そのほうがよりよい時間を持てると思う」と言ってきたので、月曜日に絶対にエスキスを受けに行くことを約束して僕が折れることにした。確かに火曜日からあまり進んでいないのは事実だし。もうこんな不毛な話し合いをしなくていいように、自分がもっと引っ張らなくてはと決意を新たにする。マックスは日本で言えばまだ学部の3年生なのだ。

家に帰り、くろさかくんから炊飯器を借りて米を炊く。
今日は僕の飯炊き当番なのである。預かっていた鍵を持ってくろさかくんの部屋に炊飯器を受け取りに行くと、置き手紙が置かれていて、ドイツ語の参考書も貸してくれるとのこと。僕の昨日のブログの記述(日本語で書かれたドイツ語の参考書がほしい…)を見てくれていたらしい。

実は飯を自分で炊くのは生まれて初めてなのだが、見よう見まねで挑戦。
「水の濁りがなくなるまで米を研ぐ」と昔家庭科の時間に聞いたような気がしたので、一生懸命研ぐ。「(たしか、よく研がないと米ににおいが付くんだったよな)」なかなか濁りがなくならないので必死に研ぐ。かれこれ30分くらいは研いでいただろうか(あきれないでください…)。米粒がいつの間にか砂粒大になってしまったことに気づき、さすがに自分でもおかしいと思う。濁りは取れていないがそこでやめる(今思えば、すりつぶされた米粒のかけらが濁りを新たにつくりだしてしまっていたのである…)。指定された分量の水を入れ(このとき目盛りを一つ間違えて1合分余計に水を入れてしまったのが第二の失敗)。炊飯のスイッチを押して待つ。一時間くらいたった頃アラームが鳴ったので、ふたを開けて生まれて初めて炊いた米と対面。「(何も変わってない…!?)」おもわず言葉を失う。あいかわらず濁った水面が炊飯器の中で1時間前と何も変わらずに揺らめいている。唯一変わったのは水が少し暖かくなっていることくらい。しゃもじで底をさらってみると、砂粒のような米のかけらがさらさらと水中に舞い上がっただけだった。くろさかくんがちょうど帰ってきたのでSOSを発信。自分の非常識ぶりを見せるのは恥ずかしかったが、「これが東大生だと思わないで。普通の東大生は米くらい炊けるからね」と念を押してから炊飯器の中身を見せる。「米炊くの初めてだったんですか?デンジャラスなことしますね…」
その後は失敗した米を鍋を使ってくろさかくんになんとかおかゆにしてもらい、二人でふりかけをかけて食べた。くろさかくんに炊飯器の使い方を指導してもらい、一時間後には無事まともな米が炊けた。飯炊きをくろさかくんにばかり任せているので申し訳なく思い当番をかってでたが、かえってくろさかくんの時間を奪ってしまったようだ。でももうこれで米の炊き方はマスターできたと思う。くろさかくんが懲りずにまた僕にやらせてくれるといいのだけど…。今度は絶対失敗しませんので(たぶん)。
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2005-11-10 09:33:36 | ミュンヘン・TUM
a foggy night in Felsennelkenanger

朝七時半に起きて、かいくんと大学へ向かう。
天気は霧。そしてものすごく寒い。地下鉄が遅延していて(理由はわからない)、少し集合時間に遅刻してしまった。大学に向かう途中でかばさわくん、ギドとも合流。今日はホールデンの講義「インターナショナル・ビルディング・タイポロジー」の第二回見学会。前回はカヤックとパラグライダーの工場(工房)を観に行ったが、今日はBMWの工場見学。大学のメインエントランス前に集合し、バスに一時間半くらい揺られる。マックスもこの見学会に申し込んでいるはずなのだが、来ていないようだ。さては寝坊か…?途中、電子辞書でBMW社について調べてみる。BMWとは「バイエルン自動車製作所」の略称らしい。たしかに思い出してみれば、BMWのエンブレムには中央に白と水色の格子模様があしらわれている。そうかあれはバイエルン州の州旗の模様を意味していたのか。

30分くらい走ったところでアシスタントのヴァルターからなにやら説明。
ドイツ語だったので何を言っているのかわからなかったが、ヴァルターはそのまま後部座席の僕らのところにやってきてもう一度英語で説明してくれた。この講義はレクチャーと見学会とで単位が別々に出るらしい。見学会は出席していれば単位が出るが、レクチャーはレポート提出が義務付けられているようだ。といっても日本の大学と単位互換のない僕らには関係のない話だが、ヴァルターは「でもせっかくだからレポートは出してみたらどう?」と言って、提出すべきレポートについて説明してくれた。この講義は“建築分野以外”の現場を観に行くことによって、それらの技術が建築にどう影響を与えているか(あるいはこれから与えていくことができるか)について考察していくことを目的としている。またそれと同時に、そうした考え方から生まれた優れた建築作品を模型にして年代順に並べて一同に展示するという最終目標もあるのだという。リストアップされた建築作品の中から、どの模型をつくりたいか聞かれる。スケールは1/50で、白模型でよいそうだ。最終的には2月の講義終了時までに出来ていればよいのだが、途中経過を随時見せたり、途中その建築作品について簡単な研究発表をすることになるらしい。かいくんとかばさわくん、僕とギドが一緒に座っていたのでそのままペアをつくることになった。ギドとも何か一緒にやってみたいと思っていたのでちょうどよかった。説明がよくわかっていなくて不安そうな顔をしているギドに向かって「君と組むヨースケはすでにディプロマを持っている。心配することはない」とヴァルター(日本におけるディプロマはこっちの感覚とは違うんだけどなあ…)。見せられた建築リストのなかで、フラーのウィチタハウスがすぐに目に入った。その模型をつくってみたい衝動に駆られたが、ギドはフラーにあまり興味なさそうだったので、ギドに好きな建築を選んでもらう。ヴァルターも推薦してくれたのでKFNアソシエイツの「SU-SI」にした。トラックでもそのまま運べるプレファブ住宅システム。「模型をつくるときはいつでもつくりかたを相談しに来なさい」とヴァルター。ギドが「スーシ?」と言いながら僕に向かって寿司を握る真似をする。「違う違う(笑)。スシじゃないよ、スーシーだよ」

いつのまにか眠ってしまい、気づくとBMWの工場に着いていた。
今日は写真撮影はNGらしい。工場のラインに入ると、金網で区切られた区画の向こうではコンピュータープログラムで制御されたいくつものロボットアームが体をくねらせながら車体の部品を組み立てている。いっせいに“ロボットダンス”を踊っているようでもあり、折に入れられた猛獣が強制的に働かされているようでもあり。その間をTOYOTAのフォークリフトが走り回り、出来た部品を大きな籠に入れて一箇所に集めている。作業服を着た人間たちは、工場作業員というより動物園の飼育係のように見えた。ここではドアとフロントカバーをつくっている。質疑応答ではマテリアルの問題を質問している人がいた。プラスティックやアルミニウムの可能性について質問していたようだ。ドイツに来てから一ヶ月たってやっぱりまだドイツ語で話されるとわからないのだけど、単語の語彙数が増えてきたせいか今だいたいどんなことをしゃっべているか会話のリズム・雰囲気が少しわかるようになってきた。今は具体的な数値をあげつらっているなとか、今は専門用語を使って難しいことをしゃべっているなとか。でもきちんと理解するためには、知っている単語の数があまりにも足りない。電子辞書を持ち歩きながら、工場内で目に付いた単語を片っ端から引くように心がけた。

大学に戻ると三時を過ぎていた。
ミーティングのことを相談しようとバスの中からマックスにメールをしたのだが返信がない。今日は工場見学の後に作業をしようと予定していたのだが、マックスは大学にも来ていないようだ。僕もすぐにドイツ語講座が始まるので、いずれにせよ時間は取れそうになかった。遅い昼飯をかいくんと食べてから、ドイツ語講座の教室へ行く。今日は宿題をやってきていたので自信を持って授業に臨めた。先生に指されても無事に答えられた。簡単な小テストがあって、わかることのうれしさを久々に感じる。今日の講義ではイレギュラーな変化をする動詞を習った。もちろん丸暗記でもよいのだろうけど、それよりもなぜそのような不規則変化になるのかその大元の理由・原則が知りたい。文法規則や文章の組み立て方などは超初級講座では教えてくれない。日本語で書かれたドイツ語の文法書を持ってくればよかったと後悔。ドイツ語に慣れてきたら、今度はもっときちんとわかりたいという気持ちが強まってきた。

そろそろ僕の飯炊き当番なので、日本食材店ミカドで米を5キロ買ってから帰る。
カールスプラッツ周辺にはなぜか警官がたくさんいて、路地には警察車両が何台も止まっていた。中には待機中の警官たち。何かがこれから起こるのだろうか?言われてみれば、なんとなくヤンキー風の若者が今日はいつもよりたくさん目に付くような気もする。ミカドで米を買って、カールシュタットで毛布を買って、マリエンプラッツから地下鉄U6でミュンヘナーフライハイトへ行ってU3に乗り換え、さらにシャイドプラッツでU2に乗り換える。途中、電池切れ寸前の携帯電話からマックスにメールを送った。「今日は工場見学に来なかったね。さては寝坊したな?いずれにせよ、僕らのコラボレーションをリスタートしなくてはね!僕明日は講義とってないので午前中からでも始められるよ。九時からとかどう?返信ください :-) ヨースケ」送信した直後くらいに電池が切れた。

寮に戻ると、フェルゼネルケナンガーにはいまだに霧が立ち込めていた。
部屋に戻って携帯電話を充電しているとマックスからメールが。「ごめんなさい。今日僕が大学に行かなかった理由は明日話します。明日は午前中に講義を取っているので12時でもいい?マックス」。「了解。また明日ね!」と送信し、洗濯物を片付けに寮のコインランドリーへ。霧で地面が湿っているせいか、今夜はキックボードの車輪がいつもよりなめらかに走っている気がする。朝晩随分寒くなってきた。そろそろ冬に備えてコートやマフラーを買う必要がある。
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お知らせ

2005-11-09 05:26:15 | ミュンヘン・TUM
書きかけだった昨日の記事「dontforgetme」を書き終えました。
おとといの記事「月の石と、ウサギのビール」はまだ途中です。
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ファースト・インパクト

2005-11-09 03:28:15 | ミュンヘン・TUM
Lecture room 4107

かいくんと朝電話で起こし合って、一緒に大学へ行く。
今日はスタジオの最初の中間講評会がある日。各グループのコンセプトモデルを発表することになっている。昨夜マックスと大学に残ってプレゼンを仕上げてから帰ったので気は楽だったが、それでも、他のグループの進捗状況がよくわからなかったのでドキドキしていた。講評室に着くと、先に到着したグループが壁にピンでプレゼンボードを貼っている。「A3で3~5枚。複数のプロジェクトを用意すること」と連絡されていたはずなのだが、ほとんどの人が守っていなかった。一枚の人もいれば、10枚近い人もいるし、だいたいのグループがプロジェクトは一つに絞っている。マックスを探すがまだ来ていない様子。昨日つくったプレゼンボード四枚をロッカーから取り出して、壁に貼る。マックスにメールを送ったり電話をかけたりするがつながらない。一人で発表する覚悟をする。
何から話そうか考えているときに「ヨースケ!」と話しかけてきたのはギドだった。スイス旅行には来なかったし最近ドイツ語講座にも出席していなかったので、ドロップアウトしてしまったのかと心配していたのだが大丈夫だったようだ。僕が送った連絡のメールにも返信がなかったので理由を聞くと、つい最近までしばらくイタリアに帰省していたらしい。「ごめんね。メールはありがたかったよ。でももらったその日にイタリアに出発だったんで返信してる時間がなかったんだ」。講評会の日時はアシスタントから聞いていたようだが、プレゼンは用意してこなかったようだ。グループをまだつくれてないこととか心配していたので、「まだ最初の講評会だから今からでもまだ間に合うと思うよ」と言ってあげた。

左端に張られたプレゼンボードから発表が始まる。
ホールデンは来ていない。こういった小規模な講評会はこれからもアシスタントさん主導で行われていくのだろう。アシスタントさんは全員出席している。

最初はグウィネス・パルトロウに似た女の子とフェアリーのグループ。
シンプルな線で書かれた単色のスケッチと、整然と並べられた文字列による、すっきりとしたプレゼンボード。ドイツ語で話されたので何を言っているのかはわからなかったが、たぶん丁寧にスタディしたんだろうなという印象を持った。トップバッターだからか、講評は厳しめ(何言ってるかはわからないので、あくまで雰囲気だけど)。わかったような顔して聞いてたら、隣に座ったギドが話しかけてきた「今言ってたことわかった?」「ううん、何もわからない(笑)」「だよね、俺も(笑)」

次はかいくん。
昨日ギリギリまでとても悩んでいたようだったけど、その甲斐あって、すごくわかりやすくて刺激的なプレゼンだった。やられたな、と思った。“ファブリック(布)”をメタファーにして考えるというもの。アシスタントさんも「このコンセプトなら最後まで通してやれるでしょう」とお墨付きを与えていた。かいくんはまだパートナーを見つけていなかったので、アシスタントさんが振り返って僕らに言った「彼のこの素敵なプロジェクトを一緒にやろうという学生はいませんか?」。するとブルガリア人のきれいな女の子が手を上げて立候補。「よろしい。では二人はこの後よく話し合ってお互いの考え方を理解しあうこと!」

次はこのスタジオが卒業設計になる人とその友達のグループ。
彼は最終学年だけあって落ち着きが違う。プレゼンボードも大量に用意していて、漠然としたコンセプトにとどまらず、すでに何らかのアイデアを持っているようだった。計画のキーになる構造体のサンプルをつくってきていてそれを回覧する。アルミホイルと樹脂で作られた、軽くて透明でとてもつよい構造体。ドイツ語だったので単語くらいしか聞き取れなかったけど、みんな聞き入っていたように思う。昨晩も遅くまで大学に残っていたのできっと大学に泊まって徹夜明けなのであろう。日本にも滞在経験のある人なのでスイス旅行中も何回か日本とヨーロッパの建築について話をさせてもらった。視野の広い人だなあと思っていたので、彼のプレゼンはちゃんとわかって聞きたかった(あとで英語でもう一度教えてもらおう…)。

次はかいくんとグループを組むことになった女の子。
彼女は前回のプレゼンテーションで「英語推奨」と言われていたにもかかわらずドイツ語でプレゼンしていた人。スイス旅行中もなにやら見たことのないアルファベットで書かれた本を読んでいたので、東ヨーロッパの人なのかなと思っていたらやはりブルガリア人だった。ただし英語ができないわけではないらしい。プレゼンボードは手描きだった。

次は僕によく絡んでくるダニエルたちのグループ。
気さくに話してきてくれるけっこう好きな友達。プレゼンは「論理的に一貫性がない」と一刀両断されてしまっていた。またきっと今夜もスイス旅行のときみたいに「ああ、退屈だ。こんな夜は飲まずにはいられないぜ…」って言いながら飲んじゃうんだろうなあ。
このあたりでようやくマックスが合流。遅れた理由を聞くと、「電車を一本乗り過ごしてしまって、その次の電車は一時間後で、しかも各駅停車でさあ!」と言い訳される。「だったら、君はもっと早く起きるべきだったね」と少し怒って言うと、「でも僕今朝六時半に起きたよ…」と言われてしまったのでそれ以上何も言えなかった。マックス、そんな遠くから車と電車乗り継いで一時間半以上もかけて通うのは無謀だから、早くミュンヘン市内にアパートを見つけてください…。

次は僕らの発表。
ブレインストーミングをするところから始めたことを初めに言って、「向こうの壁でやりました。今も貼ってあります」と説明したら、「だったらその前で話を聞こう。せっかく時間かけて作業したのだから見せてください」ということになり、みんなでブレストした壁の前に移動。ブレインストーミングのプロセスを説明し、「異なる要素の間にネットワークやコネクションをつくる」、というその過程そのものが僕らの大きなコンセプトになったことを説明する。アシスタントさんたちはノッてきてくれて、カードも一枚一枚説明を求められる。一番話しづらくて怖かったアシスタントさんから「このやり方は非常に興味深い。なぜならこの方法には「問いと答え」という単純な構図が生まれないので、縦横斜めに線を引いているうちに思わぬアイデアが見つかったりするからだ。最終的にできる問いと答えのコンプレックスはとても面白い。みんなもよくみておくように。このプロセスこそ、このスタジオが求めていたものに近い。せっかくだから君たちはその作業をもうあと2,3週間は続けてみなさい。カードを加えたりはずしたり、あるいは三次元的に展開させてもいいかもしれない。来週の途中経過を楽しみにしているよ」と言ってもらえてうれしかった。「僕らはドイツ人と日本人で言語の壁があるので、それでも議論を発展させられやすいようにこの方法を選びました」とマックス。細かいツッコミは多々されたけど、それだけ興味を持ってもらえてよかった。「でも一番重要なのは、そこから何を結論として引き出すのかなのよね。まだよくわからないわ」とアシスタントさんから冷静なツッコミを受けてプレゼンを終えたが、もう一度ブレストボードに戻って結論を急がずにもう一度考え直してみようと思う。マックスも満足げな様子で、席に戻るとギドもダニエルも小さくガッツポーズしてくれた。

次はクリスティアンとヴィリー。
二人とも学年は若いのだけど(建築始めて三年目)、建築への知識は深い。マックスは小声で「この二人はアナリティック(分析的)すぎるね」と勝ち誇っていたけど、緻密な分析(何を分析したのかはよくわからない)が書き込まれたプレゼンは見た目もきれいだった。ヴィリーはもともと物理学を学んでいて建築に転向して来た人なので、そういう分析的なアプローチになったのかもしれない。スイス旅行中も連れて行かれた建築に厳しく批評を与えていた(しかも的を射ている、気がする)二人。今日のプレゼンテーションを聞いても、僕はやっぱりこの二人は「できる」と思った。
右隣に座ったダニエルが退屈そうに小声で話しかけてくる「ねえねえ、日本語で“シット”ってなんて言うの?どうやって書くの?」「クソ、だよ。こうやって書くよ(なんで今そんな話?)」「へえ、難しい字だなあ。覚えられそうにない」「覚えなくていいよ(笑)。汚い言葉だからもし日本に行っても使っちゃダメだよ」

次はブルガリア人の女の子二人組。
NHKで夕方からやってる外国のホームドラマに出てくる女の子みたいな感じの二人だが、プレゼンに使用していた“ヨーロピアンな風景”がどれもどんよりとした曇り空の下で撮った写真ばかりだったので「そんな死にたくなるような風景じゃなくて、プレゼンにはもっとヨーロッパの良い写真を使ってよ(笑)」とアシスタントに突っ込まれていた。簡単な模型を持ってきていたけど、手の中でいじくっているだけで、あまりその説明はなかった。

最後にマーティンとノラ(スイスで僕に白ワインをパシらせた女の子)。
すでに三時間近くドイツ語を聞いていたのでさすがに集中力途切れて、よく覚えてない。ギドはすっかり聞くのをあきらめたようで(彼もドイツ語は超初心者なのだ)、ライオンの子供が表紙のかわいらしいエスキス帳になにやらいっぱい線を引いていた。

講評会終了後、今後指導を受けるアシスタントを決める。
グループごとに一人のアシスタントさんの下について今後作業を進めていくようだ。僕らは、僕らのプレゼンに一番興味を持ってくれたburkhard franke(発音わからない)さんにした。実は「アシスタントさんはみんな雰囲気よくてよい人たちだけど、あの人だけはちょっと性格が変」とドイツ人学生から情報を得ていたのだけど、そんな人に指導してもらった方が面白いものができるような気がした。研究室のホームページに載っていた経歴によれば、彼は大学に入学したのが30才になってからで、それまで「大工として修行」していたらしい。ガテン系叩き上げか。英語はあまり得意そうでないのでそれだけはちょっと心配である。

プレゼンをしながら、複雑な会話ができないことをもどかしく感じた。
どうしても「~だ」式の紋切り型な物言いになってしまい、誤解を与えてしまっているように感じる。そんなときは丁寧に説明しようと心がけるのだけど、何度も同じことばかり言っているようで結局事態が好転しないこともあった。日本にいるときは説明するのは得意だったはずなのに、こっちではその部分の力が封じられている。英語(いや、むしろドイツ語?)が上達して説明能力が上がるのが先か、それとも言葉による説明無しでもわからせられるくらいの絵が描けるようになるのが先か。いずれにせよ、生き抜くために何らかの成長はできるのではないかと思う。

マックスと昼飯を食った後、かいくんと大学の近くの本屋に行く。
建築の専門書店。日本の本もいっぱい置いてあった。けして広くない店内に所狭しと新旧の本が置いてある。時を忘れさせてくれるような夢のような場所。「ソーラー建築」のコーナー(サステイナブル関係の本はここに分類されている)で『Low-Tech Light-Tech High-Tech』という大判の本を見つけた。ドイツで1998年に書かれたものを英語に翻訳したもののようだ。教科書のようにわかりやすく図入りで解説されていて、紹介されている実際の事例もかっこいい建築で、なかなかよい本のような気がしたので安くはなかったけど買ってしまった。サステイナブルとハイテックが結びつくようなこんな本をずっと探していたのだ。

本屋の帰りに大学に寄って、メンザのトイレで用を足してから帰る。
トイレの中にあった自販機を使ってみたら壊れていたらしく、2ユーロ入れて商品のボタンを押しても何も出てこない。仕方がないので返却ボタンを押すと、なぜか返却口からジャラジャラとお金がたくさん出てきた。2ユーロしか入れてないのに数えてみたら合計6ユーロ。まるでスロットマシーン。ふと「悪銭身につかず」という格言が思い浮かんだので、帰りに酒屋によっていさぎよく6ユーロすべてアルコールと交換しちゃいました。かいくんは今日から“ケース買い”デヴュー。重かったので二人で寮まで運ぶ。飲みすぎには気をつけよう。
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dontforgetme

2005-11-08 11:12:10 | ミュンヘン・TUM
ブログ更新自主規制中につき、ダイジェストでお送りします。

「パスワードはdontforgetmeにしといたよ」
「10分遅刻したら閉まってた」「彼らは時間に正確なんだよ」
「これヨーロピアンなの?」
「(そこなのか、マックス?塗り絵してる場合か!?)」
「リチャード・ロジャースはスケッチがヘタ」
AAスクール流 自転車の描き方、椅子の描き方 →隠れた三角形
「宿題やってきてなくても今考えてもできるはず」
マックスのドレスデン時代の作品を見せられる
マックス=超生真面目人間疑惑
「晩飯食べた?」「僕は昼から何も食べてない」
「InDesignでやり直して」
「終電を逃しちゃうので先に帰るね」
「ヨースケ、調子はどう?」「ドゥーヨアベスト!」「これ君が描いたの?」
キャンパス内をさまよう。寒い、暗い、誰もいない…
塀を乗り越えようとするが登りきれず断念
「私についてきて」
ナポリタン
現実逃避

眠い、眠い、眠いです。おやすみなさい。
明日はきっとブログを書きます(昨日と今日の分もまとめて…)


(追記 08/11/2005)
朝大学へ行って、まずCAADルームの管理オフィスへ。
ここは午前中しかやってないので注意が必要(しかも先週はなぜかずっと閉まっていた)。ここであらかじめで自分のコンピューターアカウントにユーロをチャージしておかないと、CAADルーム(地下にあるコンピューター室。製図・プレゼン系のソフトが揃った高性能パソコンを24時間利用できる)でプリンターが使えないのである。今日は夜にプレゼンを印刷することになるので、余裕を見て20ユーロチャージしておいた。パソコンにログインするためのパスワードを書いた紙を家に忘れてきてしまったので、再発行してもらう。「絶対忘れないようなパスワードに変更しといたよ(笑)」と言って手渡された紙を見ると、「あなたのパスワードは“dontforgetme”です」。そりゃこれなら忘れないだろうけど、事務の手続きってこんなノリでいいんだろうか…?

昼飯を食ってから、午前中の講義を終えたマックスと合流。
「プレゼン印刷用にユーロをチャージしようと思ってCAADルームに行ったんだけど、閉まってて入れなかった」「おかしいな。僕は12時5分前に行ったけど入れたよ」「そうなのか。なんでだろ?僕はその15分後くらいに行ったのに」「え、それって10分遅れてるじゃん…!」「だって講義が12時までだったんだもの」「彼らはパンクチュアル(時間に正確)なんだよ」

とりあえず今回は僕のアカウントで印刷することにし、二人でCAAD室へ。
「僕らのアイデアが“ヨーロピアン・コンセプト”に基づいていることが十分説明できてないと思う」とマックスが言うので、僕がその橋渡しの部分のプレゼンテーションをつくることにした。マックスはその間に具体的なプロジェクトのプレゼンをつくるらしい。先週出た二つのアイデアについて僕が描いたスケッチを、スキャナでパソコンに取り込む。それをレイアウトするだけなのですぐにできると思ったら、マックスはなにやらしこしこと細かな作業をいつまでも続けている。何をやっているのかと思い彼のパソコンを覗き込むと、僕が描いたスケッチを要素ごとに分割してフォトショップで一生懸命着色している。う~ん、塗り絵じゃないんだから。そこ時間使うところか?と思いつつも、まだ時間はあるのでそこは彼に任せる。それがヨーロッパ流なのかもしれないし。

三時からはいったん作業を抜けて、ホールデンの講義に出席。
今日は“ヒューマン・スケール(人体寸法)”の話。建築は常にヒューマン・スケールの集合体だとホールデンは言う。スイッチや鍵穴など人間の手に触れるものはもちろんヒューマン・スケールである。コーヒーカップからスタートする建築もありえるだろう。ノーマン・フォスターは、工事現場や新しく立った建物を見に行くと、歩いてその各部の寸法を測るそうだ。「こんな風にね」と言ってその独特の歩き方をマネして見せてくれるホールデン。ルフトハンザ航空の機内食のためにデザインされた食器類もヒューマン・スケールの研究に基づく。i-pod nanoもまたヒューマン・スケール(“手でいじくる”道具の代表格)。アナログからデジタルへ技術は移行し、電気信号を発信さえできればよいのでスイッチやレバー類は縮小化の傾向にある。でもなぜ照明のスイッチは今でも大きいままなのか(ドイツの照明スイッチはやたらとでかい)?答えは言わないが考えておいてほしい。車の寸法もまたヒューマン・スケールに基づく。ところでみんなは自転車の絵を描けるだろうか。私はAAスクールでしばしばそのスケッチを求められた。まずこうやって二つの三角形を書く。すると骨格が定まり、正しいプロポーションをもった自転車が描ける。この“三角形”さえ知っていればよいのだ。すなわち描くことはわかることである。私たちは通常このように地上に立っている。リラックスしている状態ではこのように腕は下に垂れ下がる。ではバイクにまたがっているときはどうだろうか(と言ってホールデンはおもむろに中腰になってハンドルを握るまねをする)。こんな風に腕は緊張し、腰の位置は下がる。すなわちどんなスペースに置かれるかによって人間の体勢は変わるのである。設計の際にこれを忘れてはいけない。飛行機の“平面図”はミニマルハウスに多くの示唆を与える。ところで簡単なスケッチを描ける能力は重要である。私の師フォスターは素描が得意だった。スケッチは短時間で相手に多くの情報を伝えることができる。言葉では順を追って説明しなければならないようなことが、ひと目でわかる。リチャード・ロジャースはスケッチの描けない人である。だから彼は言葉だけで説明しようとする。スケッチをするとき、“空”に注意するべきだ。空はempty(カラッポ)ではなく、space(空間)である。空を白紙のままスケッチを終えるなかれ。鳥が飛んでいたり、飛行機が飛んでいたりするべきだ。

そのままかいくんと一緒に超初級ドイツ語講座へ。
珍しく宿題を当てられる。でもそんな日に限って教科書を忘れてしまったので答えられない。「宿題をやった教科書を忘れてしまったので答えられません」と言うと、「やってきていなくても今教科書を見ながら考えてもすぐできるはずよ」と言うので、かいくんの教科書を見せてもらいながら作文をする。なんとか答えられた。
今日はドイツ語の疑問詞が全部出てきた。英語の「5W1H」と違って全部「W」で始まるのだけど、そのかわり8つもある…「8W」。

作業室に戻りマックスと作業再開。
マックスはまだ色塗りをしていた。さすがにちょっとまずいと思い時間を区切って作業することにする。マックスに何時まで大学で作業できるか聞くと「half past 11」だと言うので11時半までは一緒にできるのだと理解する(これが大きな間違い)。8時半まで各自作業を続けて、それから二人で仕上げることにした。プレゼン上に見慣れないCGが貼り付けてあったので「これなあに?」と聞くと、マックスのドレスデン大学時代の作品だった。薄い線で輪郭だけ書いてあって、あとは周囲の景色がそのまま。ファサードがすべて鏡になっているか、もしくは建物自体が透明なものでできているらしい。彼曰く、自然と建築のインテグレイションだとか。とても楽天的で素直な人間なのか、それとも猛烈に毒の効いたシニカルな人間なのか…?彼はパソコン上で丁寧に色を塗ったスケッチを、あらかじめアシスタントから配布された見本で決められたとおりに正しく配置し、規定サイズのフォントできっちり文字を書いている。それは前回のような“資料”をつくるときに見やすいようにするための書式だと思うのだが、マックスは「決まってることだから」といって今回もそれにのっとってつくるべきだと言う。生真面目なやつだなあと思いつつ、とりあえず彼に従った。マックスに「晩飯食べた?」と聞くと、「僕は昼飯も食べてないよ」と言って一心不乱に作業をしているので、食べに出るほど時間もないし、僕も付き合って我慢することにした。

九時頃、それぞれの作業が終わる。
しかし、僕のプレゼンを見たマックスが一言「マージン(周囲の余白)の寸法が間違ってる」。えぇ~汗。いまさら直せないし。というより、イラストレーターでマージンの寸法なんて気にしてプレゼンつくったことなかったし。「マージンなんてだいたいでいいんじゃないの?」「つまり、君はイラストレーターを使ったことはあるけど十分なスキルは無いってこと?」「そういうわけじゃないけど」「だったらInDesignでやり直して。簡単にレイアウトできるから」「僕このソフト使ったこと無いよ」「僕だって使うの2回目だよ。簡単だから大丈夫!」というわけで、またInDesign上でプレゼンを作り直すことになった。ちなみにイラストレーターもInDesignもコマンドはすべてドイツ語。イラストレーターはそれでもショートカットキーやメニューボタンの配置とかが日本語版と同じなので想像もついたが、InDesignは初めてなのでまったくわからない。マックスに教えてもらいながら、なんとかやり終えた。

そんなこんなで十時半過ぎ頃になり、マックスがそわそわしだした。
「ああ、そろそろホントに帰らないと」「え?(十一時半のはずでは?)」「あと20分で中央駅から最終電車が出ちゃうんだ。もう僕の担当分はできてるから後は任せていい?」あと一時間は話せると思っていたのに思わぬ展開。どうやら彼は「11時“30分前”」という意味でhalf past 11と言ってたらしい。ドイツ語だとそういう表現の仕方が普通らしく英語でもそうだと思ったのかも。しょっぱなから意味も無く泊まらせるのもかわいそうだと思ったので、ともかく印刷の仕方だけ教えてもらってから(印刷ボタンがどれかもわからないのだ…)、帰ってもらう。プレゼンの続きをもう少しやって、30分後くらいに無事印刷終了。

帰り際、ダニエルたちがうんうんうなりながら案をひねり出しているのを見る。
声をかけてから帰ろうと思い、様子を見に行く。「やあヨースケ、調子はどう?」「まあまあかな」「まあまあならいいじゃん。俺らはまだ考え中で印刷もできない」「まあ、Do your best!だね。僕にはよいプレゼンができそうに見えるけど」「そんなことないよ。ヨースケの見せて。お、この絵は君が描いたの?うまいじゃん」「そうだよ。でもうまくないよ。君たちの絵のほうがずっとリアリティあるじゃない」

いつものように大学から出ようとするとすでに閉門していた。
以前にトーマスから教えてもらった夜間出口から出ようとしたが、みつからない。「(確かこのあたりだったと思うんだけど…)」とキャンパス内をうろうろ30分近くさまよい続けてしまった。誰もいないし、寒いし、明かりは消えてるし。夜中でも照明がついている東大と違って、こっちは夜間は建物の照明と暖房が落ちてしまうらしい。そういえばCAADルームも妙に寒かった。いつも東大でやっていたように門を乗り越えて出ようかとも思ったが、挑戦してすぐ無理なことに気づいた。足をかけられるような場所が無いし、高すぎる。埒が明かないので明かりを頼りに歩いていると、人影が見えたのでついていく。すると図書館に着いた。そうか、図書館は12時まで開いているんだった。司書さんに出口の場所を聞く。「家に帰りたいのですが、どこへ行けばいいのかわからないのです」「ええと、あなたのお家の場所がわからないってこと?」「いえ、そうじゃなくて、出口がわからないのです…」。するとそばにいたおばさんが「私今帰るとこなので一緒について来たらいいわ」と言って出口まで案内してくれた。夜間出口、今度はしっかり覚えておこう。

家に帰り、ナポリタンをつくって遅めの夕食。
しばらくネットサーフィンで現実逃避してから、明日のプレゼンに向けて心の準備をする。
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月の石と、ウサギのビール

2005-11-07 08:02:25 | ミュンヘン・TUM
Bird's view _Inner City of Noerdlingen

今日はネルトリンゲンとアウグスブルグに行ってきました。
本文は後ほど。
写真をAUSMIPギャラリーに載せました。
おやすみなさい。


(追記 08/11/2005)
かいくんくろさかくんと日帰りで小旅行に出かけた。
朝九時。中央駅の自動券売機で周遊チケット(30ユーロ。一枚で5人まで使える。つまり旅の仲間は多いほどお得)を買って、imbiss(軽食を売ってるキオスク)で朝食を買って、RB(普通電車)に乗って出発。週末の一日のみ・二等席のみ・急行不可という制限があるけど、ドイツ国内は乗り放題なこのチケット。改札の駅員が回ってきても、このチケットを見せて旅の仲間を指差しながら「アレ(みんな)」と一言言えばOKである。

「世界の車窓から」+「ぶらり途中下車の旅」な感じの小旅行をするのが目標。
最初の目的地はバイエルン州西北の小都市ネルトリンゲンであるが、乗換駅であるドナウヴォルグンでさっそく“途中下車”をしてみた。ここはドナウ川が流れる街。乗り換え時間が30分くらいだったのであまりのんびりもできなかったが、駅前から旧市街の入り口くらいまではぶらぶらと歩けた。川が流れていたのでドナウ川かと思いパシパシ写真を撮る。「これドナウ川だよね?」「流れが細くない?」「ここたしかドナウ川の上流ですから」「あ、そうか」「ちょっとあの男の人に聞いてみない?すみません、これドナウ川ですか?」「(笑)これはドナウ川じゃないよ。ただの水路だよ」「(が~ん…)」

ドナウヴォルグからさらにRBで西北に進み、ネルトリンゲンに着いた。
中世の円形城壁がそのまま残っている小都市。駅を出てしばらく歩くとすぐにそれらしきものが見えてきた。視線を横切る長い壁。門らしき部分に階段がついていて城壁の上の回廊に登れるようになっている。レンガ積みの壁の上に木で骨組みが組んであって屋根が架けられている。回廊は内側に向かっては開いているので円形城壁に囲まれた赤茶色の屋根の住宅群が目の前に広がり、町の中央にはひときわ高い塔(教会)が見える。城壁は外側に向かっては閉じていて、時々銃眼のようなスリットが開けてあった。十字形をしているので十字架をモチーフにしているのかと思ったら、弓道部員のくろさかくんが「縦に構える弓も横に構える弓(小さなボーガンのようなもの)も使えるようにじゃないですか?」と的確な指摘。そのまま城壁に沿って街の外周の四分の一くらい歩き、そこにあった門から地上に降りて街の中心部に向かった。

つづく
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F10

2005-11-06 10:01:03 | ミュンヘン・TUM
サターンでデジカメを買う。
スイス旅行中にデジカメの液晶が何の前触れもなく突如割れてしまい(スイスの気候に耐えられなかったのかな。寒くて湿ってたし)、デジカメを買い換えることになった。せっかくだからドイツ製のデジカメにしようと思ったら、そんなものはないらしい。ほとんどみんな日本製で、見慣れたものばかり。しかも、ネットでリサーチするとどれも日本で買うより一万円くらい高い。それでも仕方がないのでFinePixのF10を買った(メディアの関係で、オリンパスかフジフィルムしか僕には選択肢がないのである)。日本ではすでに型落ちになっている機種だけど、こっちの家電量販店ではまだ現役だ。よく見るとパッケージに「ドイツオリジナル仕様」とステッカーが貼ってあったので、もしやと思い開けてみると、メニューの表示言語がドイツ語だった(他にも英語、フランス語、スペイン語、イタリア語、中国語、朝鮮語が選べるらしい。日本語は選べず)。フジフィルムが展開している海外向けの商品のようだ。これなら日本で買えないなと思い、割高な値段にも納得することにした。ただし問題は、充電器がドイツ仕様なので日本では使えないこと…。

夜はりょうこさんかいくんと一緒にアウグスティナービアホールに行った。
店内はアリアンツアレナでの試合観戦から帰ってきた男たちでいっぱいだった。僕らはソーセージの盛り合わせ・ロースト肉の盛り合わせ・ラム肉のステーキを注文。後はビール、ビール。最後にデザート(でかすぎて食べきれず)。担当の給仕さんが外国人の僕らにいろいろと気を利かせてくれたので、楽しくスムーズに食事できた。留学話、ドイツ人話で盛り上がる。会計しようとしていたら、花束抱えた別の給仕さんがやってきて僕の背中を「よ!」みたいな感じで叩いていったのが謎だったけど。

明日はかいくんくろさかくんと早起きして電車でネルトリンゲンに行く予定。
ミュンヘンからはローカル線で2時間半くらい。1500万年前に落下した隕石によってできたクレーターに沿って、タマゴ形に発生した城塞都市。今でも円形の城壁がそのまま残っていたり(しかも登れるらしい)、NASAの宇宙飛行士訓練施設があったり(隕石だから?)、「月の石」を展示してる博物館があったり、なんだか面白そうな街。同じバイエルン州内で使える週末乗り放題チケットがあるらしいので、途中下車したりしながらのんびり小旅行することになりそう。
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