目が覚めたら、とはじまるのは、ブルースの常套手段といってもいい。朝起きたところから、物語は始まるのである。僕が高校生の頃に作った、「目が覚めたら」という変な歌は、ブルースでもなんでもないが、スリーコードのブルース進行で、目が覚めたら、というところからはじまる。その頃、友人から借りたブルースのレコードをよく聞いていたけれど、そこからは、あまり学ばなかったようである。スリーコードでなにか物語りをはじめようとすると、朝起きるところから、はじめたくなるのは、脳のわりと古い部分からの欲求なのだろう。ユングの集団意識とかいうところのものかもしれない。目が覚めたら、それは夢なのでした、と、目が覚めたら終わる物語もあるが、ブルースに悲しみがあるとすれば、この終わる物語も、なかなかに。
洋司
洋司