『今日の出来心』

シンガーソングライター&作詞家“久保田洋司”の365日書き下ろし公開日記です
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うらさぶる心さまねし~。今日の出来心2016年3月3日(木)

2016年03月03日 18時06分19秒 | Weblog

うらさぶる 心さまねし ひさかたの 天のしぐれの 流れあふ見れば 【万葉集巻一 82】

訳)うら淋しい思いが 胸にいっぱいだ (ひさかたの)天のしぐれが 流れるように降り乱れているのを見ると

しぐれは、秋から冬にかけて降る通り雨。

「雨」を「降る」ではなく「流る」と言ったのは万葉集中、唯一。

万葉集では、しぐれなど、景物の表現は、視覚にとどまるが、

のちの時代になると、家の中にいて、外でしぐれが降っているのを、聞く、というのも出てくるそう。

僕など、その話を聞くと、つい思い出すのは、

松本隆と阿久悠の、「見る」「聞く」の違い。

これは、僕が勝手に、思ってることで、非常に限定的なことですが、

阿久悠が、「勝手にしやがれ」で、

「壁際に寝返り打って、背中で聞いている」に、対して、

松本隆は、「恋するカレン」で、

「キャンドルを暗くしてスローな曲がかかると、君が彼の背中に手を回し踊るのを、壁で見ていたよ」、と。

もちろん、シチュエーションが違いますから単純に比較などできないわけですが、

僕が、松本さんと、歌詞についての話し合いをしてるとき、松本さんが言ったのは、

「何が見える?」。

松本隆の歌詞は、どうしたって、視覚がメイン。

それに対して、阿久悠は、男のやせがまん的な世界、みたいなことを、ご本人も本に書いている通り、

見たくても、見ない。

阿久悠の、何かの本で、おんぼろアパートに住んでるとき、

雨に濡れて、女の子が部屋に訪ねてきた。

着替えなよ、タオルとシャツを渡す。

後ろを向いてるあいだに、女の子が、後ろで、カサカサと着替える音がする。

そんなことを、書いてました。

これ、松本隆なら、壁で見るのか、と冗談ですが、そんな決定的な違いがあるなぁ、と思ってたもので、

今朝の万葉集の講座での、この、万葉集は視覚にとどまる、というお話、とっても興味深いことでした。

ちなみに、この82番歌、712年に、長田王(ながたのおほきみ)が作ったことになっています。

評価非常に高く、

幽寂の味をたたえた抒情は万葉の行きついた一角を示している、と「全注」に。

無窮の広がりを感じさせる空間に、あちらこちらから流れる雨。

地に落ちるのではなく宙に浮く雨を歌うことにより、心寂しさの表現とした、と。

胸いっぱいの寂しさを、視覚で表現したわけです。

長田王は、そこに気がついた。

すごいですね。

窪田空穂は、

「奈良遷都後の風とはいいながら、語の続きは直線的で思い入って懇ろに云ったもので明らかに古風を伝えたものである」と。

古風を感じるところに、皆、うならされる。

万葉集は、そこが大きな魅力の一つだと、僕など、素人ながら、思うことです。

この歌一つとっても、今日の講座では、先生の丁寧で深いお話。

今日も朝から、しびれました。

さて、久保田洋司、3月6日迫りました、大森ヒデノリさんのライブへの出演のための準備で、また、

あたらしく、大森さんから、トラッドの音源が届き、そわそわしているところ。

しばし、北欧伝統音楽の世界に行ってまいります。

今日もすっかり夜。

素敵な夜を。

美しい明日へ心をこめて歌っています。

洋司

 

この後の、久保田洋司の予定です。

よろしくお願いします。

***

■3月6日(日) フィドル奏者、大森ヒデノリさんのライブに出演。

北欧伝統音楽の分野で国内屈指のフィドル奏者大森さん、かっこいいですよ。

会場:エムズカンティーナ

■3月10日(木)夕方 「鼓動は三拍子」公開録音。

FM MOOV「久保田洋司と郷田祐美子の鼓動は三拍子」の公開録音です。

いつもとっても盛り上がります。

ゲストに入船陽介くん。YOYO部ミニライブもあります。

会場:エムズカンティーナ

■3月20日(日)21日(月) モーメント・スプリングセッションに、The東南西北YOYO部として出演。

出演は、

20日、種ともこ、黒沢秀樹、ジ・オネダイ(ジューシィ・フルーツからのスピンオフユニット)、The東南西北YOYO部

21日、松尾清憲、中村繁之、瀬木貴将、西本明、The東南西北YOYO部

予約始まっています。

会場:エムズカンティーナ

■3月27日(日)、「Ascot」ライブ。

会場:エムズカンティーナ

■3月29日(火)、「飯田香☆お花見ライブ」に出演。

会場:エムズカンティーナ

■4月7日(木) DJイベント「回すぜ」。

会場:エムズカンティーナ

■4月14日(木) DJイベント「回すぜ」。

会場:エムズカンティーナ

エムズカンティーナの情報について詳しくは、

エムズカンティーナのfacebookをご覧ください。

こちらから→ https://www.facebook.com/MsCantina/?fref=ts

■4月23日(土)、24日(日)、The東南西北 2016 デビュー30周年記念 LIVE 横浜2DAYS公演

◯The東南西北 2016 デビュー30周年記念 LIVE in YOKOHAMA
~心のコンパスはいつも君の方角を指している~
日時:2016年4月23日(土) 18:00開場/19:00開演
    2016年4月24日(日) 17:00開場/18:00開演

会場:横浜 サムズ アップ THUMBS UP
    神奈川県横浜市西区南幸2丁目1−22
http://stovesyokohama.com/2016/04/?post_type=thumbsup_live
出演:久保田洋司、清水伸吾、大池茂文、入船陽介
料金:前売5,000円/当日5,500円(要オーダー:1 ドリンク+1 フード)

■4月29日(金・祝)、「Ascot」ライブ


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
個性 (いまこ)
2016-03-05 08:18:04
うたをつくるひとの
個性が強いうたは魅力的ですね。

勝手にしやがれ!
好きな歌です(#^.^#)!

3月(#^.^#)
春らしいライブがいっぱいですね!

今年は
3月の終わりごろに
桜も咲くようです(#^.^#)
返信する
流れおちてきた 永遠のいとなみみたいに ♪ (ラピスラズリ)
2018-10-04 09:32:11
聞くが如 まことに貴く 奇しくも
神さび居るか これの水島

葦北の野坂の浦ゆ 船出して
水島に行かむ 浪立つなゆめ 長屋王

雨を流ると表現した、長屋王の感性、素晴らしいですね。
雨のよく降るこの星では ♪
日本語は雨の種類を表す言葉が、時雨、霧雨、五月雨、天気雨など本当に多様ですよね。昨今のゲリラ豪雨だけは、ご勘弁願いたいところですが。

雨、雨、降れ、降れ、もっと降れ
私のいい人連れてこい ♪

阿久さんは古風な遣らずの雨を、昭和を代表する歌謡にしました。

雨は壊れたピアノさ
心は乱れたメロディー ♪

松本さんは大滝さんの「バチェラーガール」で
視覚にも聴覚にも訴えるような、強く乱れるように降る雨をポップに表現されてますね。

最近、「勝手にしやがれ」が船山基紀さんの編曲だと知りました。ずっと大野克夫さんだと思っていました。本当に船山さんは40年以上、第一線で重要なお仕事を数多くされていて、驚くばかりです。
トシちゃんの「抱きしめてTonight」、少年隊「仮面舞踏会」、KinKi Kids「ジェットコースター・ロマンス」、最近ではキンプリの「シンデレラ・ガール」、布施明さんの「優しい歌」もそうですよね。イントロのファースト・インパクトが素晴らしく、リズミックな華やかさと品があるアレンジ、私も大好きです。

夏の喧噪が通りすぎるといつも、いちじくや梨やぶどうが私の主食になる。〜 そういう冷たい食べ物は体の中も秋にしてくれるのだった。
江國香織 「空から降る音楽」より

毎週末の台風で、日々気になる空模様。
札幌は寒いのでしょうね。
暖かくして、お出かけ下さい^_^
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