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有期雇用労働者との間の雇用契約を終了させる際の注意点

2010-12-03 | 日記
Q8有期雇用労働者との間の雇用契約を終了させる際には,どのようなことに注意する必要がありますか?

 パートやアルバイト等,有期雇用契約が締結されている労働者について,契約期間中に解雇することは,「やむを得ない事由」がある場合でないと認められません(労働契約法17条1項,民法628条)。
 「やむを得ない事由がある」というための要件は,期間の定めのない正社員の解雇の要件よりも厳格なものと考えられていますので,有期労働者については,契約期間中は解雇できない可能性が極めて高いことを前提に,採用活動を行うべきでしょう。
 パート・アルバイトであればいつでも解雇できるものと誤解されていることが多いので,注意が必要です。
 将来の売上げの見通しが立たない場合は,ごく短期間の雇用期間を設定しておくべきと思われます。

 他方,契約期間が満了した場合は,契約終了となるのが原則です。
 ただし,3回以上契約を更新された場合,又は,1年を超えて継続勤務している場合には,期間満了日の30日前までに雇止めの予告をしなければならず,労働者が更新しない理由,又は,更新しなかった理由についての証明書の交付を求めたときは,遅滞なく交付しなければなりません(平成15年10月22日厚生労働省告示357号)。

 また,期間の定めのある雇用契約があたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在している場合(東芝柳町工場事件における最高裁第一小法廷昭和49年7月22日判決,労判206-27),又は,労働者においてその期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合(日立メディコ事件における最高裁第一小法廷昭和61年12月4日判決,労判486-6)には,解雇権濫用法理(労働契約法16条)が類推適用され,当該雇用契約の雇止め(更新拒絶)は,客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないときには許されませんので,注意が必要です。

 解雇権濫用法理が類推適用されるような事案かどうかについては,通常,以下のような要素を考慮して判断することになります。
①  業務内容の恒常性・臨時性,業務内容についての通常の労働者との同一性の有無等労働者の従事する業務の客観的内容
②  地位の基幹性・臨時性等労働者の契約上の地位の性格
③  継続雇用を期待させる事業主の言動等当事者の主観的態様
④  更新の有無・回数,更新の手続の厳格性の程度更新の手続・実態
⑤  同様の地位にある他の労働者の雇止めの有無等他の労働者の更新状況

弁護士 藤田 進太郎

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