いーちんたん

北京ときどき歴史随筆

清の西陵8、「西陵人」としての誇り

2016年01月17日 17時56分44秒 | 北京郊外・清の西陵
興味深いことに西陵に駐屯していた満州族は、
清朝が滅んだ後も他地にてんでばらばらになることなく、そのまま西陵鎮に多く残っている。
そして比較的古い時代の習慣や住まいを維持したまま、現代に至っているのだという。

現在の村は、以前の西陵の役所の関係者が暮らし、そのまま残ったものである。


各陵墓ごとに役所があったのは、東陵で見てきたのと同様である。

東陵の旗人は、実は皆、包衣 (清の東陵7・あんてぃーく倶楽部)

たとえば、
泰陵の礼部は、現在の後部村。
泰陵の内務府は、現在の五道河村。
泰陵の八旗営は、現在の太和庄と東半村。

・・・と言った具合になっている。

清朝が滅亡するまでは、村名ではなく、衙門(がもん、役所)名で呼び合っていた。
現在の村名がつけられたのは、民国時代になってからだという。

西陵出身の満州族は、自らを「西陵人」と誇らし気に名乗る。
彼らは清朝が滅びるまで畑を耕したことがなく、年に数回行われる祭事などの行事のほかは、
皇帝様からの俸禄を食み、無為徒食の優雅な暮らしを185年も続けたことも東陵と同様である。

・・・・ということは、西陵に関する資料からは見つからなかったが、
西陵の満州族も、元々は「包衣」であり、正規の満州族ではなかった、と考えるのが自然である。

「包衣」に関しては、


清の西陵2、西陵と雍正帝の兄弟争い、康熙帝の皇子らのそれぞれの末路

の中の「十五子)胤[ネ寓]の場合」と「十七子・胤礼の場合」を参照にされたし。
(めっさ長い記事です。康熙帝の20人以上いる皇子らの軌跡を延々と書き連ねているので、
 途中はとばして、後ろの方にある記述にたどりついてください。)



その「包衣」の人たちの東陵での様相は、以下のとおり。

清の東陵3、東陵の旗人は、実は皆、包衣 

しかしどうやら東陵とのちがいは、
西陵の旗人らは、清代も後半になると、俸禄を半額ほどに削られてしまっていることである。

東陵に関する記述には、減俸の話は載っていなかった。

・・・おそらくは東陵は、後期になってもどんどんと皇帝が埋葬され、
現役で機能していた陵墓だったからと思われる。


・・・そんな意味でも西陵は「地味」(涙)。
スター皇帝もおらず、経費も削られ、東陵のきらびやかさんに比べ、地味地味な印象だ(笑)。


ともあれ、周辺の水飲み百姓の漢族の農民と比べると、無為徒食にはちがいはなく、
生きて行くこと以外にもたくさん考える時間はあった。

その間に礼儀作法は、限界まで美しく高められ、居住まい、立ち振る舞いに至るまで、外界の人間とは一線を画す。
――「西陵人」は、そういう自負を持つ。


また陵墓の宮殿の修繕などを担当する部署(工部)もあったため、
中国伝統建築独自の彩画の技術が継承された。

現在でも故宮や北海公園などの伝統建築の修繕の多くに西陵出身者が携わってきたという。
その活躍の範囲は全国に及び、呼ばれれば中国全土どこにでも飛ぶ。


・・・・という部分も東陵との違いが浮き彫りになる。
東陵にも工部はあったが、その後裔らは、宮大工にはあまりなっていない(笑)。

東陵には観光資源がたっぷりあり、家の軒先でもなにがしかの商売をして、
現金収入を得られるため、きつい肉体労働のガテン系のお仕事を集団でやる必要はなかったのか・・・。

そういう意味でも、西陵人の方が地に足がついているのかもしれない・・・(独断と偏見)。


 

 泰陵。

 陵墓の上から見渡す周囲の山々。
 さすが風水理論を尽くして選び抜かれた土地だけあって、
 周囲の地形を見ているだけで、プラスオーラがどんどん体の中に入ってくるようなすがすがしさを感じる。
 

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・・・・以上、清の西陵にからめた話をとろとろと続けてきましたが、
一旦ここで終了としたいと思いますー。

西陵に行くことは、今後もあると思われ、
その時に続きをまたぼちぼち書いて行きたいと思いますー。




 

 西陵の中の市街地

 

 木の切り株のようなものを売っているお店があったので、気になって入ってみる。


 


 

 中国では最近、家や会社の接待室などに、客を中国茶道でもてなすセットを備えることが多くなっている。
 大きな木の台にお湯をそのまま注ぎこぼしてもよいようなシステムにし、排水パイプでお湯が排水できるようにする。

 そんな茶道テーブルの足にしたり、お茶セットと並べたりするのに、ちょうどいい感じなのだと思う。


 


 

 お店の横の作業場で地元の若夫婦が、そのまま作業していた。
 ご主人の女物の帽子がお茶目(笑)。

 






 
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