ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

成瀬巳喜男・5~『稲妻』

2020年02月16日 | 日本映画
『稲妻』(成瀬巳喜男監督、1952年)を観た。

小森清子は、東京の遊覧バスガイドをしている。
彼女には、長姉の縫子、次姉の光子、兄嘉助がいて母がいる。
だがこの兄弟姉妹は、母おせいが生んだとしても全員父親が異なっている。

清子は、洋品店を経営している光子の家に下宿している。
はきはきしてしっかり者の清子と、控え目で大人しい光子はとっても気が合う。

縫子は夫がいるというのに、両国でパン屋を営む綱吉と付き合っている。
そして、清子に綱吉との縁談を持って来る。
夫を尻に敷きズケズケしている、そんな縫子を清子は嫌い、どう見ても計算高くて胡散臭さうな綱吉をも毛嫌いし、避けようとする。

嘉助は復員してから、パチンコをしたりしてずっとブラブラしている。

ある日、光子の夫呂平が急死してしまう。
葬儀も落ち着いた頃、縫子や嘉助が、もし保険金が下りたら貸してほしいと光子に言い出す。
おまけに母親まで、それを期待する。
そんな中、ある女が子供をおぶって、恐る恐る光子を訪ねてくる。
どうもその人は、呂平の愛人だったらしくて・・・

下町に住む小森家は、長姉の縫子の家でも次姉の光子でも、当然母親おせいの家も含め、何かと生活がままならない。
だから話の中心にお金が絡む。
金儲けがうまそうな綱吉は縫子とどうもいい仲らしく、綱吉が渋谷で始めた温泉旅館に、縫子は女房気取りでいりびたる。
と思えば後半、夫の死にメソメソしていた光子は、綱吉から神田での喫茶店資金を提供してもらう。
片や、亡くなった呂平の愛人は光子に金をせびる。
そのような綱吉と姉妹の縫子、光子のゴタゴタした関係を知る清子はウンザリし、世田谷で一人下宿することにする。

清子は、そこの隣家に住む、今まで目にしたこともなかったような清純な兄妹を知る。
清子は兄の国宗周三と、二人とも言葉には出さないけれど好意を持ち合う。

そんなところへ、勝手に下宿してしまった清子を心配した母おせいが訪ねてくる。

清子は言う。
「お母ちゃんがずるずるべったりだから、みんな周りの者がずるずるべったりにだらしなくなるのよ」
「お母ちゃんは、なぜ四人兄妹を一人のお父ちゃんの子として産んでくれなかったの」
「私一度だって幸福だなんて思ったことないのよ」

泣きながら母は言う。
「母ちゃんだって、子供を不幸にしようと思って産みやしないよ」
外では稲妻が光る。
「お母ちゃん、もうよそぉ。みっともないわよ」

清子は夜道の中、母を送っていく。

誰がどう言おうとこれは、高峰秀子と浦辺粂子の強烈な感動シーン。
ただただ食い入るのみ。

林芙美子の原作を基にしながら、陰気臭くなる内容をどことなく暗くしない成瀬の手腕を見て、敬服するの一言しか表せない。

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