ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『悪い女 ~青い門~』を観て

2017年04月06日 | 1990年代映画(外国)
レンタル店にほとんど置いてない『悪い女 ~青い門~』(キム・ギトク監督、1998年)を、やっと探すことができた。

近くに臨海工業地域が見える海辺。
一軒の民宿に、スーツケースを持った若い女性が訪ねてくる。名はジナ。
民宿を経営している夫婦には、ジナと同世代のヘミと高校生のヒョンウがいる。
実は、このひなびた宿は隠れた売春宿として機能している。

その夜から客を取るジナに、翌朝、ヘミはことごとく冷たく当たり嫌がらせをする・・・

民宿を経営する一家は、売春婦のジナに依存しながら生計を成り立たせている。
だから、ジナも生活は一緒で、食事も同じ食卓で食べる。
しかし、大学生のヘミはそのことに我慢ができない。
売春婦がいることによって、恋人に家の実情を隠さなければならないし、ましてや連れてくることもできない。
そのようなことも絡んでか、ヘミは性に対し、すごく潔癖症になっている。

ジナのおかげで、ヘミも大学にも通うことができているのに、偏見に満ちた頑なな考えは変えようとしない。
それに対してジナは言い返しもせず、そう思われるのが当然だと自分自身のことや人生に達観しているようにみえる。
男たちは皆、ジナを欲望の対象としか見ないし、金銭さえ与えれば良いと思っている。
経営している民宿のおやじから、果ては、まだ高校生ヒョンウまでジナと関係を持ってしまう。
そんなでも、彼女の精神はどこか透き通っていて、やさしさに満ちあふれている。

あれ程、嫌悪感でジナを拒否していたヘミだったが、絵が好きなジナの心持ちがわかってくると、やがてわだかまりも徐々に消え、打ち解けてくる。
エンドロール。
海を泳ぐ金魚と一緒に、水中から見るヘミとジナの顔。
水に揺れていびつに崩れながらも、楽しそうな二人。
まるで幻のようなその姿が、微笑ましくて、なんとも愛らしい。

どこにも“悪い女”は出てこないのに、見当違いな邦題のイメージとは違って、とっても忘れがたい女性の物語であった。

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