原野の言霊

風が流れて木の葉が囁く。鳥たちが囀り虫が羽音を揺らす。そのすべてが言葉となって届く。本当の原野はそんなところだ。

過去からのリクエスト。

2013年11月12日 09時49分24秒 | Weblog

 

フェイスブックというSNSをはじめたのは今年の初めから。もともと興味はあまりなかった。すでにブログやツイッターもやっていたので、仕事仲間や知り合いの少人数に限定、近況を知る程度の軽い気持ちではじめてみた。当然、飛び込んでくる名も知らぬ人たちからの友達リクエストはすべて却下していた。そんな時、懐かしい名前の人からリクエストが舞い込んできた。以前、付き合いのあった女性で、交際期間はざっと6年ほどだった。しかしこの10年間、一切の連絡はなそれが突然のリクエストなのである。同姓同名ということもあるフェイスブックを確認した。写真つきで、確かに本人に間違いがな。多少複雑な思いを感じながら、承認ボタンを押し、コメントまで書き添えた。ところが、これが意外な結末というか、意味不明の状況となってしまった。



フェイスブックをやっている人なら知っていることだが、友達要請を承認するとすぐに管理会社のほうから誰々さんと誰々さんが友達となりました。とガイドが入り、フェイスブックの友達欄に相手のアイコンが追加される。

ところが、一向にその案内がない。友人欄にも追加がない。そのまま二三日が経過してしまった。おかしいと思い、改めて彼女のフェイスブックを追いかけてみると、なぜか存在していない。つまり、私にリクエストをだした直後、フェイスブックをやめたようなのである。過去という幽霊のような存在からリクエストがあったということなのか。いったい、これはどのように解釈すればいいのだろう。ちょっと悩んだ。



冷静に、考えられる限り推測してみた。

まず一つは、偶然私のフェイスブックの存在を知り、懐かしのあまり、深く考えずについ友達要請をしてしまった。そのあとすぐ後悔して、あわててフェイスブックを離脱した。これがまず順当の推理であろう。

次に考えられることは、私はこうして元気ですよという、メッセージを伝えるためだけに、フェイスブックを利用した。それ以上の意味はないということか。しかし10年も経過してから、そんな必要があるだろうか。あまり意味を感じない。

堂々巡りの思考の中で、ある事実に気づいた。彼女のプロフィール写真の中に本人とともに小学生(8歳か9歳か、もっと小さいかも)くらいの男の子が一緒に写っている。親子ツーショットの楽しそうな写真だ。これが私の子供よ、と言わんばかりの絵でもある。

ふと思った。この子を見せるために友達要請をしたのだろうか。では、なんのために?疑問が浮かぶと同時に、背筋になにか冷たいものを感じた。

詳しくはいえないが、私たちが別れることになった理由はいろいろある。子供については二人の間には多少のすれ違いがあった。彼女はまだ若かったが、出産適齢期の限界に近づいていた。それだけに子供を生むということに強くこだわっていた。私は反対であった。それがすべての原因というわけではないが、二人が別離する理由の一つになっていたことは確かである。

そうか、彼女はとうとう子供を生んだのか、と安堵した。その時、別の想いがふとよぎる。この子供はひょっとして・・!こんな覚えのある人は結構いるはず。私も同様であった。子供の年齢は、と思いながら、懸命に計算をする。もちろん、彼女からそれに類する話は聞いていない。ただ思い返せば、ささやかな口げんかのときに、私を脅すように、それらしいことを言ったことがあるが、まさか、である。



友達リクエストがあった日から、すでに半年は過ぎた。依然として彼女からの何の音沙汰もない。芽生えたささやかな恐れは、日々薄まってきた。やはり、新たな家族を得て、現在の幸せな姿を私に知らせるためだけのアプローチだったのだろう。そう、今は信じている。私の人生に多少なりとも関係があった人たちが、その後、幸せになっていることはやはり嬉しいことだし、そうであることを望んでいる。当たり前の話だ。心は徐々に平静を取り戻していた。



あれは、過去から届いた「便り」だったのだ、と思っている。その当時のことをいろいろ思い出した。SNSというのは、タイムトンネルの役目もするかのようだ。人生に悔いのない人などいない。また責任に時効もない。いつでもすべてを受け止める覚悟だけは、持っていたい。


最新の画像もっと見る

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ウチでも似たようなことが・・・ (numapy)
2013-11-13 15:26:46
スゴイことが起こりましたね。
これをどうとらえるか、ですが、ウチデもごく最近ひたようなことが・・・。
怪談めくのですが、電話を入れ替えてすぐに、あの亡くなった順ちゃんから
電話がかかってきたのです。(どう考えてもオカシイけど
それしか考えられないということで、同居人と決着)
詳細は、また後ほど。
返信する
不思議ですね。 (原野人)
2013-11-13 16:48:09
numapyさん、
順ちゃんのは、きっと天国に無事着いたよ、という連絡だったのでは。世の中には理論だけでは解決できないことがたくさんあります。だから、こんな世の中が面白い。
ただ、当方の話は事実。スピリチュアルな要素は皆無。それだけに、です。幸せを心から祈ってます。
返信する
ミステリアスな (BEM)
2013-11-14 22:44:20
まずはご復帰おめでとうございます(^^)/

いやぁ、そんな事があるんですか。
なんだか映画のような2時間サスペンスドラマのような。
申請直後にやめてしまうなんて本当に色々想像してしまいますよね。
自分が元気なのを伝えたかったのか、原野人さんが元気なのを確認したかったのか、それとも???

まさに現実は小説より奇なりですねえ。
でも現実は結末が分らないことも多くて悩ましいです。

前の記事ですが、「昔の映画に〜」というのですが、
私、記事を読むまでオマー・シャリフをオマー・シャフリと思っていました(^^;
テリー・サバラスをテリー・サラバスと思っていたのは子どもの頃です(笑)

それから「悪太郎」のほくろの件ですが、フィルムの裏焼きというのは考えられないんでしょうかね。
鈴木清順ともあろう方がそんな間違いを…って映画には時折びっくりするような間違いもありますからねえ。
私も古い映画(新しいのも)を観てダメ出ししていますよ(^^
返信する
Unknown (BEM)
2013-11-14 22:48:40
「昔の映画に〜」

って、すみません、たまに「から」が文字化けしてしまいおかしな数字などに置き換わってしまいます。
特に暗号とかではないです(笑)
記事が記事だけに気になってしまいました(^^;
返信する
だから人生面白い! (原野人)
2013-11-15 09:32:05
BEMさん、
このブログを出したおかげで、実はあまり詳しくは言えないのですが。ちょっぴり問題も生まれてます。いやはや人生は難しいですな。ま、だからこそ、面白いと言い直すべきなのかな。女性の気持ちは残念ながら、私にとってはやはり不可解そのものです。だから惹かれると言うことなのでしょうね。男は愚かですな。
鈴木監督の悪太郎はぜひ機会があれば見てください。一瞬の映像ですが、こんなことに気づくと、天下を取ったような気分になります。ただこれは鈴木清順という監督がしかけたトラップだと思ってます。絶対に意識的だと。あの監督ならやりますね、たぶん。
返信する

コメントを投稿