原野の言霊

風が流れて木の葉が囁く。鳥たちが囀り虫が羽音を揺らす。そのすべてが言葉となって届く。本当の原野はそんなところだ。

鹿、鹿、鹿、しかし・・・!

2010年01月29日 09時52分04秒 | 地域/北海道
雪に覆われた湿原に無数の黒い点。黒点は一定のリズムで動き出す。これらはすべてエゾシカの群れ。春先に良く見られるいつもの光景でもある。ところがこの冬は1月から大量の鹿が現れた。原因は道東に降った十年ぶりの大雪である。雪に埋もれた山奥から餌を求めてやって来たのだ。日当たりのいい斜面には必ず十数頭のエゾシカを見ることができる。一見のどかな風景にみえるが、実はこれが大変やっかいな危険性をはらんでいる。

湿原を走る釧網線の車窓から眺めると、エゾシカがよく見える。釧路川の周辺にはエゾシカの群れが延々と続く。特に塘路周辺に集中している。線路の周辺は日当たりのよい場所が多く、雪の解けるのも早い。枯れ草や木々が顔を出す。エゾシカはこれを狙ってやってくるのだ。観光客にはありがたい風景であるが、列車には大きな迷惑となる。毎日のように列車との接触事故がおきる。そのたびに列車は急停車しなければならない。
鉄道だけではない。湿原を走る国道391をはじめ、多くの道路周辺にもエゾシカは出没する。突然道路に飛び出し車と衝突する事故が後を絶たない。トラックなどの大型ならまだしも、普通乗用車がエゾシカと衝突すると確実に車は大破。人身事故につながる。特に夜の運転は慎重にも慎重にしなければならない。春の風物詩とはいえ、大変迷惑なことなのである。この冬はそれが二カ月ほど早い。


現在道東全域のエゾシカの生息数は推定で20万頭とか。10月から3月まで狩猟期間と定めて、捕獲が許されている。しかし、ここ数年エゾシカの生息数は右肩上がりで増えている。数年来の暖冬で自然死が激減。またハンターの数も減っているために、捕獲数が上がらず、エゾシカは自然にその数を増やしているという。

エゾシカによる森林被害、農業被害は年々急増している。2006年のデータではあるが、十勝の農業被害は5億円に上った。昨年、霧多布湿原の名物エゾカンゾウは三分の一まで減少していた。エゾシカに食べられていたのである。
本格的な管理政策が必要になった中で、冗談話も飛び出している。エゾシカがかつて激減した理由に乱獲があったが、もう一つの大きな理由として天敵ともいうべきニホンオオカミの存在があった。このニホンオオカミの絶滅がエゾシカの急増にもつながっていた。そこでオオカミを野に放ってエゾシカを食べさせようという案である。しかし、オオカミは人間にとっても脅威の野生。そんなものが野に放たれたら、のんびり湿原見学もできない。やはり無理な話だ。

エゾシカの肉料理の研究など消費の増加を目指し、産業化も研究されてはいるが、他に豊富な食料を産出する北海道ではなかなか本格化しない。まだ、エゾシカに対して愛情を持って接している道民は多いが、このままではその存在に憎しみを持つ人が徐々に増えていくことが予想される。
本州では野生のイノシシが街中に出没しているというニュースが流れていた。やはり餌不足が原因らしい(餌づけをしているふとどき者もいるらしいが)。

やはり、自然との共生は、頭の中で考えるより、はるかに難しい。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
どう料理するか? (numapy)
2010-01-29 10:39:15
エゾシカ、ウチの裏もしょっちゅう出没します。
ここでは、銃で撃たれないことをよく知ってる。
したがって、大胆です。でも、庶路の山ん中じゃ、とんでもなく用心深い。ここがひとつ難問ですね。
解決策のひとつは、やはりおっしゃるとおり、食べちゃうことです。肉に人気さえ出れば、北欧のトナカイのように、網で大量に捕獲する業者が出てくる。
銃での駆除なんか比較にならないほど、数を計画的にコントロールできる。この運動をしてるのですが、
なかなか広がらない。ソロソロ行政もビジネスとして考えるべきです。雇用も広がるでしょう。
シカ肉はうまいですか? (原野人)
2010-01-29 11:15:54
時々は口にするのですが、なかなか満足な味に出合えない。ここがポイントですね。

食糧難の時代が来ると予想されて時間が相当経過しています。本格的な研究が必要ですね。
ビジネスになればいろいろな問題解決につながるのですが、北海道の人は(私を含めてですが)意外に腰が重い。分かっているのですがね。
料理次第です! (numapy)
2010-01-29 20:44:51
ウチでは、肉料理のメニューは殆どやってます。
ミートソース、シカシチュー、すき焼き、バター焼き、シカ鍋、ハンバーグ、缶詰(味噌、醤油味)
これが美味い!で、都市圏のヤングレディをターゲットに「ヘルシー高級食材として売る」、を目標に考えてます。ただ、これが安定供給できるかどうか?
今アプローチ中です。
味付けは、レシピが必要だと思います。ただ、ジンギスカンの例もある。最もネーミングも上手かったですよね。
なるほど (原野人)
2010-01-30 09:21:45
たしかに、安定供給ができれば可能性があります。
東京などでもシカ料理はかなり前からあったようで、北海道でもその料理の工夫はいろいろなところでされていることは聞きました。ところが、なかなか具体的なかたちにならない。その理由がよくわからない。たぶん、安定供給の問題もその要因の一つなのでは。
レシピは工夫でよくなることは理解しています。ただ、まだ良い味に私はまだめぐりあっていないということなのでしょう。いつか出会えることを強く望んでいます。

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