楽々雑記

「楽しむ」と書いて「らく」と読むように日々の雑事を記録します。

茨城の鮟鱇鍋。

2008-02-25 00:17:59 | 散歩。
立原正秋の食べものエッセイに「鮟鱇にはモーツァルトが似合う」というようなことが書いてある。実家の本棚の一角を占めていた立原正秋の作品群に手を伸ばすことは殆ど無かったが、朝鮮白磁を眺めたりする内に少しずつ手に取るようになった。読むのは専らエッセイだからその魅力を本当に理解しているとは思えないけれど、またもや実家の本棚の世話になっているのは全く不思議だ。
少し前に神楽坂の蕎麦屋で大学時代の友人たちと飲んだ。鹿島鉄道に昨年一緒に乗りに行ったAIKと茨城交通の沿線で鮟鱇鍋が食べられるようだから出かけようという話をしていると同席していた友人たちも参加することになり、二月にしては暖かい土曜日の朝に上野駅に集合して勝田に向かうスーパーひたちに乗って出発した。北千住を過ぎる頃にはビールのプルトップを開け、下車駅の勝田に到着するまでの1時間弱の間にはカップ酒も空になった。茨城交通湊線に乗り換えて、終点の阿字ヶ浦から少し歩いた海岸は、冬とは思えない青い海が広がっていた。近くに原発があることなど全く気にならないほど海の青さが気持ちよい。余りに気持ち良過ぎて波に足を洗われた。サンダル履きだったのがせめてもの救いだが、濡れた靴下を持ちながら素足で歩いても楽しかったのは酒のせいか、それとも早春の陽気のせいだったのか。
再び列車で那珂湊駅まで戻る。関東の駅百選に選ばれたという駅は地方鉄道らしい雰囲気が漂っている。低めのホームに車庫、そして平屋の駅舎。近くを歩き回って数枚の写真を撮り、那珂湊の街をしばらく歩いて「住吉」という店で鮟鱇料理を食べた。家族連れが数組同じように鍋を囲んでいる。熱燗を追加するうちに鮟鱇鍋は空になった。雑炊まで平らげてすっかり満足して店を出ると春の陽気が一転して急に冷たい強風が吹き始めた。冷やされた頭に果たしてモーツァルトが似合うのかという言葉が浮かんできた。すっかり確かめるのを忘れていた。もう一度食べてみないとわからない、というようなことを立原正秋は間違いなく言うはずはない。

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