楽々雑記

「楽しむ」と書いて「らく」と読むように日々の雑事を記録します。

佐野繁次郎の本。

2008-06-05 23:59:59 | 散歩。
毎朝、二本の柳の木が植えてある鮨屋の脇を通りながら会社に向う。全く唐突といって良いくらいに生えている柳は青々と茂り、建物も周囲からは少々浮いた印象だ。店の看板の文字に見覚えがあると思いながら、気にすることもなく毎日通り過ぎていた。その「しまだ鮨」と書かれた看板だけでなく、建物や内装、箸袋に至るまで佐野繁次郎によるものだということを知ったのは、ユトレヒトが出していた小冊子を少し前に偶然手に入れてからである。
会社で夕刊を見ていると一つの記事に目が留まった。仕事に関係ない記事ばかりに目が行ってしまうと思いながら手早く切り抜いた。御茶ノ水の古書会館で行われる佐野繁次郎の装丁展に先立って千代田区立図書館でその一部が展示されるという記事。その写真には古い銀座百点が並んでいる。どうしても行かなければと思い込んで、その週末、図書館へ出かけた。きれいな庁舎の9階にある皇居を臨む図書館は静かでとても良い。雨の週末を図書館で過ごすというのも悪くない。貸し出しカウンターで展示の場所を尋ねると「誰ですか」といった表情で総合受付に行くように言われる。その総合受付の前に小さな展示を見つけた。決して大きな展示ではないけれども、図書館の雰囲気に合っていたからか、満足しながら会場をあとにした。
翌日は自転車で古書会館に向った。トークショウがあるというので間に合うように向ったが、ギリギリで滑り込んだからか、晴れた昼下がりだったからかわからないけれど、ウトウトと眠気に襲われる。佐野繁次郎の書体に浄瑠璃本の影響が見られるという話を面白いと思いながら気付けば眠っていた。目が覚めると図録を販売中しているという声が聞こえた。それも売り切れ御免ということらしい。周りを見回せば、皆オレンジ色の冊子を手にしている。どうしても欲しくなった。中身を見ずに購入すると財布が淋しくなっていることに気付いた。展示にはたくさんの佐野の装丁本が並んでいる。図書館で見たときの方が数は少なかったものの良かった気がしたのは展示方法なのか、それとも会場のせいか。とにかくゆっくりと眺めてから地下の古書販売会場に行く。安岡章太郎の「ああいえばこういう」に目が行く、これは全く佐野繁次郎とは関係ない。小銭で買える値段だけれど、財布の中身が淋しいので棚に一旦戻した隙に他の人に奪われた。こうなると図録を買ったことを後悔してしまう。家に帰ってから図録を見るが、買えなかった本のことばかり考えてしまう。焦って買えば高い物を掴み、安値を狙えば買い損ねる。買い物上手になるにはまだまだ先だ。

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