楽々雑記

「楽しむ」と書いて「らく」と読むように日々の雑事を記録します。

宮脇俊三と鉄道紀行展

2008-07-20 15:16:40 | 散歩。
マニア、というほどではないけれども、鉄道好きの時期があった。成長するにつれて、他の物に興味が移って、今ではそんな時期があったことを口にするのも恥ずかしいと思うようになってしまったけれど、インターネットで経路検索をする人を横目に、時刻表も読めないようではねえ、と思ったりするのだから、今は微塵も興味がない、と言ったら嘘になる。世田谷文学館で「宮脇俊三と鉄道紀行展」が開かれていると知り、酒井順子氏と原武史氏のトークショウの観覧を申し込み、暑い中を相方とともに芦花公園へと向かった。
少し遅刻してトークショウの会場に入り、周りを見回した。やはりマニアなのだろうか、ある程度の年齢層の男性が多い。たまに見かける女性も、普段はあまり馴染みのないタイプが多い。遅刻したために離れ離れに座った相方はこの空気に耐えられるのかと少々不安になった。
トークショウの後で展示を眺める。展示の中心である膨大な取材メモや自作の地図には沢山の人が集まっている。人が多いのを意外に思いながら、展示の端に取材先から自宅に宛てた絵葉書があることに気付く。少し前に伊丹十三が息子に宛てた絵葉書のことについて触れたけれども、宮脇俊三の絵葉書に書かれていた短い文章もやはり思わず笑みが漏れてしまう。絵葉書の小さな余白に時計の絵を描き「ペリーヌを見ている時間かな」とあるのだから、こちらまで何だか嬉しくなる。
膨大な取材内容を元に、極力筆を抑え、簡潔で明快に文章を記していたことなど、かつて鉄道好きで読んだ小学生の頃には、全く理解できていなかった。会場を出て駅に向かう途中、実家の書棚を久しぶりに探してみようと思い付いたが、やはり鉄道マニアなのだと思われたくないという気持ちもやはりどこかにある。鉄道紀行文というのは、案外自分にとっては厄介な存在かもしれない。

※9月15日まで、世田谷文学館でやっているようです。鉄道好きでなくても是非。

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