福岡県宮若市は、筑豊地方北部に位置し、筑豊本線からは少し外れた所に位置する。
平成の大合併により、鞍手郡宮田町と若宮町が合併し誕生した。人口はおよそ3万人であるが、炭鉱全盛期の昭和30年には、旧宮田町だけで5万人を超えていた。1976年まで操業していた筑豊炭田最後の炭鉱である「貝島炭鉱」によって町は繁栄、閉山により衰退の一途を辿ってきたがトヨタ自動車の工場誘致により、再び軸となる産業を得たことから、財政力指数は筑豊地域で最も高い自治体となっている。
現在の宮若市域には山陽新幹線と路線バスが運行されているが、新幹線は通過するのみで駅は無い。
本稿では、宮若市の公共交通事情について叙述する。
宮若市域には1989年まで、旧宮田(みやた)町の中心部に存在した筑前宮田(みやだ)駅より磯光駅を経て筑豊本線勝野駅まで5.3キロのJR宮田(みやだ)線が運行されていたが、第3次特定地方交通線に指定され廃止、バス転換となった。
廃止直前には10.5往復が運行されていた。代替として西鉄バス80系統とJR九州バスの路線が設定されたが、どちらの路線も廃止され現存しない。1993年頃の運行本数は西鉄が14往復、JRが6往復であった。
筑前宮田駅跡。後方にはJRと西鉄が同居していた立派な上屋付きのバス待合所跡が残る。現在はここで発着するバス路線は無い
草に埋もれつつあるがホームがしっかりと残っている。
昭和12年までは「桐野駅」であった。未だに「駅前通り」の名が残る
1枚目の画像を撮影した付近には西鉄バス筑豊の「筑前宮田」バス停がある。
現在は10番宮田線・直方バスセンター~磯光~筑前宮田~宮若市役所間の系統があり、代替バスを思わせるが、経路JR宮田線とは全く異なり、勝野も経由しない。
その為、勝野から磯光と筑前宮田の両駅跡を直結する公共交通は消滅している。
※プライバシーに配慮し、画像の人物部分を一部加工
西鉄バス筑豊10系統。平日は10往復、土日・祝日は9往復が運行される。この地区の中心である直方と宮田を直結するが後述のJR九州バスと比較してかなりの迂回ルートを取る為、都市間の主力交通機関ではない。
※プライバシーに配慮し、画像を一部加工
今回の参考文献
『BUS MEDIA』No.64「福岡地区の電車代替えバスを見る(原文のママ)」 1997年、バス研究社
『鉄路』Vol.15「旧特定地交線の行方」1993年、九州大学鉄道研究同好会
本文の画像は2011年6月5日撮影。