写真は国文社 現代歌人文庫 福島泰樹歌集 980円。いくつか歌をひろってみよう。
冬の荒野に放ちてやれば論潔し 我の内なるバリケードより
級友よ寒くはないか火を消せば満身創痍の伽藍のごとし
機動隊去たるのちになお握るこの石凍てし路面をたたく
ここよりは先にゆけないぼくのため左折してゆけ省線電車
喉かれてそれでも叫んでいなくてはならぬむなしさ 風に散る声
傘なくばレインコートの襟立ててさよならだけの人生を行く
もう君に逢うこともなき冬もなき足曳の山と言いて絶句す
わが視野をつね脱落してゆくものを追い求めんとせば昼の月
なすこともなさずに飲んでおりたれば六月の庭あじさい咲かず
一生を飲んで終われとさすらいのさんざめく川さて渡ろうか
福島泰樹は自死することもなく、歌よみを辞めることもなく活動を続けている。
御年、72歳「短歌絶唱コンサート」と称して今でも吉祥寺 曼荼羅 でライブを開いている。因みに福島泰樹は私と同じ3月25日生まれだ。