「心のバリアフリー化」を図るための研究報告書が発行された。
次のタイトル書である。
心のバリアフリー化に関する促進・啓発事業企画実行委員会 委員長 坂巻 熙(さかまき ひろむ)編「平成22年度心のバリアフリー化に関する促進・啓発事業」平成24(2012)年2月29日刊(社会福祉法人 日本身体障害者団体連合会)
本誌の「第2章 座談会 心のバリアフリーに関するアンケート調査をめぐって」(p.63~p.107)から興味深い発言を引用する。
その第15回目。
坂巻 熙氏(淑徳大学名誉教授、元毎日新聞社論説委員)は、マスコミの俗説が障がい者に対する見方をゆがめていると、以下のように指摘する。(p.106)
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【引用始め】(p.106)
坂巻:
マスメディアは、障害者、特に精神の場合に通院歴があると、もうそこでストップしちゃって、突っこまない。
これは、突っ込めない、書くほうにすれば。
障害を持った人たちとマスコミがとことん本音を出して語り合わなかった。
謝ったらそれでいいやということです。
抗議されると、「間違えました、すみません、今度から気を付けます」で済んでしまう。
そういうところで片付けるんじゃなくて、徹底的に議論することが必要です。
それから、障害者を美談化しすぎる。
「知的障害者は純真無垢で悪いことはしない。純粋な天使みたいな人だ。」という人が殆どなんです。
私は42人の障害者と付き合っていて、いい加減なやつはいっぱいいます。
嘘をつくわ、借金はするわで、そこは、天使じゃなく、普通の人と同じです。
ところが、一般の人は、特に知的障害を持っている人は、「子どものまま大人になると、悪いことはしない、純真無垢」というイメージを持っちゃう。
それを増幅させちゃうのもおかしい。
僕は、普通の人と同じ人たちなんだと言う。
そういう意味では、僕らにも責任があるかもしれない。
そういった意識を、障害者自身も親も持たなければいけない。
【引用終わり】
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知的障がい者が純真無垢という美談は、マスコミという世間にとっても、障がい者本人にとっても居心地のいいものだった。
障がい者は人一倍頑張り屋で努力家だとも言う。
ごく一部にそういう人もいるが、全ての障がい者が努力家だなんてあり得ない。
それも神話である。
そうした物語がいつの間にか広まった。
互いの逃げに過ぎない。
お互いに都合が良かったからそうした風潮をつくりあげた。
純真無垢でもないし、努力家でもない。
障がい者も普通の人だという認識から出発しないと、バリアフリー化なんてどこか嘘くさいものになる。
特に、心のバリアフリー化を推進するには本音で語ることが重要である。
そうでなければ、表面上のおつき合いでごまかしている状況が続くだけだ。
本当のことをわかり合うことを追求しなければならない。
(ケー)