さらに、西欧の言語が名詞中心構文であるのに日本語は動詞中心の性格がつよい。「この事実の認識が問題の解決に貢献する」というのが名詞構文なら「これがわかれば問題はずっと解決しやすくなる」とするのが動詞構文である。翻訳においては、語句の翻訳だけでなくこういう名詞構文→動詞構文の転換も必要である。名詞構文の方が硬い論理をあらわすのに適している。動詞構文ではそれが充分に移しきれない。動詞構文の論理はもっと柔かいものだからである。もし、論理は硬いものときめてかかるならば、日本語は論理的ではないということになってしまうが、そういう外国中心の考え方がどこまで正当なものかも改めて検討されなくてはならないであろう。
「日本語の論理」外山磁比古著 中公叢書 昭和48年
富翁
「日本語の論理」外山磁比古著 中公叢書 昭和48年
富翁