札幌市営地下鉄南北線・北12条駅の出入り口がある交差点の角にちょっとした空間があります(北区北12条西3丁目)。
とある会社の敷地なんでしょうが、碑が建っています。ちょっと寄って見ました。
「有島武郎邸跡の碑」 と書いてあります。
この碑は、有島の没後70年を記念して平成5(1993)年に建てられたそうです。
有島武郎と言えば・・・
「カインの末裔」や「生まれ出ずる悩み」などで知られる小説家です。
札幌農学校(現・北海道大学)を卒業後、渡米し明治41(1908)年に帰国して
再び札幌の地を踏み、母校である札幌農学校の英語講師として教壇に立ちました。
同時に本格的な文筆活動を開始したそうです。
この家は、大正2(1914)年8月に札幌永住を決意して新築したものでした。
しかし、翌年の大正3年11月に妻の安子の病気療養の為に東京へ移住し、この地を離れるまでこの家で過ごしました。
この間に三男の行三が誕生し、家庭的には幸せな時期であったと思います。
独特な形をしているこの家は、有島自身が設計したと言われています。
現在、この家は、市内の「札幌芸術の森」に移築復元されています。
記念碑には
「細君は中々いいものさ。君も早く結婚し給へ」
と仰有るやうに 私はなりたい。
と碑文に刻んであります。
これは、安子夫人が結核で亡くなった後に有島が編集した、有島安子遺稿集
「松むし」から取った日記の一部です。
これは、友人が有島に・・・
「細君というものはこんなにいいものなら、なぜもっと早く貰わなかったと、君は思ったかい?」
と尋ねられた時に、有島が
「それはいいこともあり、悪いこともありさ」 と答えて笑ったそうです。
これを聞いた安子夫人は、恥ずかしさと悲しさで泣きたくなり
「細君とはなかなかいいものさ。君も早く結婚したまえ。」
と、夫に言われるような妻になろうと思ったそうです。
※細君(さいくん) 自分の妻の謙称。 大辞林 第二版 (三省堂) より
実直な安子夫人の人柄が現れている一文ですね・・・。
皆さん、旦那さん・奥さん・彼・彼女自慢してますか?
そんなの関係ない!とお思いの方へ・・・失礼しました。