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塗料の寿命(鮮度が命)のこと(2007.08.30記述を加筆訂正)

2022-07-30 | 技術系情報
塗料の寿命(鮮度が命)のこと(2007.08.30記述を加筆訂正)
 今回は塗料についての情報として記してみたい。
 本日(2007年当時)、ある塗料メーカー(国産塗料メーカー)の方からのお話を聞いて、私が新たに知ったことを記してみたい。なお、ここで記す「塗料」とは、あくまでも塗装作業を施工後の「塗膜」のことではなく、塗装作業を行う前の液体である材料たる「塗料」のことだ。

 現在の自動車補修塗装用の塗料は、ウレタン塗料(通称名は2液型等と呼ばれる)と云う塗料と硬化剤を一定量混合(その混合比は10:1~2:1程度までと異なる)し、化学反応により硬化(ウレタン重合反応)させるものが一般的となっている。

 なお、若干補足したいが、近年水性塗料という従来の揮発油系溶剤(油性系塗料)ではなく、水系溶剤に顔料とか樹脂を分散させた水性塗料の普及が進められている。これは、ある意味ラッカーなどと同じく、溶剤蒸発乾燥型塗料で、その乾燥は塗装施工後に溶剤が放散することで、分散されていた顔料と樹脂が乾燥固化して定着するものだ。従って、この乾燥塗膜は、耐光性とか硬度が低く、それだけで使用中の十分な性能を発揮できない。その性能を補うため、水性塗料では必ず、トップコートクリアで前面を覆う(コートする)ことで、使用中の性能を維持しているのだ。これは、車両メーカーの塗装ラインでも同じだと想像され、カラーベースまでは、水性系塗料で塗り重ね施工するが、トップコートクリアは、熱重合型塗料で包むことで、塗膜外観の耐候性とか耐スリ傷、耐キズ付き性を保持している。

 さて、このウレタン塗料による塗膜は、新車ラインにおいて使用される熱硬化型塗料(通常130℃程度まで加温し熱重合硬化させる塗料)の塗膜性能(表面硬度や耐候性)を持っている。特に、ウレタン塗料でも硬化剤の混合比が2:1のもの等は、たぶん新車ラインの熱硬化型塗料を上回る性能を持っていると思える。

 ところで、ウレタン塗料では、塗料に硬化剤を混合すると直ちにウレタン重合反応が開始され、液体の塗料として塗装作業に使用できる時間の制限が生じる。このことをポットライフ(可使時間)と云うのだが、20℃で10時間、30℃で6時間程度とのことだ。ここまでの話は、私も知っていたし、塗装作業の実務者であれば既知の話であろうと思う。なお、素人の方向きに若干補足しておきたいが、実際の塗装作業の現場では、塗装作業後の加熱(60~80℃程度)により、30~40分程度で塗膜を硬化させる。

 さて、今回の本論だが、塗料にも寿命があって、ある意味鮮度が命と云う話のことを記したい。
 今回お話しを聞いたメーカー技術者の方によれば、塗料メーカーとして性能保証できるのは20℃を前提として、塗料の製造後約半年であるということだ。従って、製造から1年も経過した塗料では、その塗膜性能はメーカーでの設計値を大幅に下回ったものとなるとのことなのだ。また、今夏の様な暑い期間のおいては、特に塗料の劣化は急速に進むということだ。なお、塗料の顔料として、淡色系のものほど劣化が早く、濃色のものの方が劣化は遅い傾向があるとのこともお聞きした。

 以上の内容なのだが、塗装工場の方は塗料の原色セットを揃えている訳だが、色によっては使用頻度が少なく、かなり長期間保存してしまう場合もあるのかもしれない。注意すべき事項であると思える。比較的近年聞いた話しだが、水性塗料は、冬期などで氷点下以下にさせると、常温に戻しても塗料がゲル化して使用不可になるが、必ずしも氷結させないでも、長期保管でゲル化まではしないが、顔料の分散ができなくなり顔料が玉になり攪拌しても分散せず使用できなくなっていることを経験すると云う。

追記
 今回(2007年当時)塗料メーカーの方とお話しをする端緒となったのは、当方からの質問として「ミキシングマシーン(自動攪拌機)は、どの程度の頻度で動かせば良いのか?」と云う質問をメーカーのWebサイトの「お問い合わせ」に記入送信したのが端緒であった。これについては、程なくして同メーカーの方からお電話を頂戴し、ミキシングマシーンは調色作業の前に5~10分程度動かせば十分というものであった。また、ミキシングマシーンを多頻度かつ長時間動かすのは、塗料中の溶剤を飛ばす結果となり、塗料の寿命を縮めることとなるとの丁寧なご説明を受けると同時に、上記の内容も合わせて伺うことが出来たのだった。


#塗料の鮮度 #塗料の話


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