掲載写真は、相当昔のレーシングカー(ブカッティ)の フロントサスペンションです。サスペンンション型式としては、リーフリジット云うクルマ用としては一番古くからあるものです。構造がシンプルで堅牢であること等から、現在でも中、大型トラックには使用され続けています。
しかし、このブガッティのサスペンションを眺めると、現在のサスペンンションにある筒型のダンパー(ショックアブソーバー)が見当たりません。その代わり、リーフスプリング中央部付近からの円盤状の機構にリンクされているメカニズムが観察されます。おそらく、円盤状の機構は、内部の摩擦板の擦れ合いを利用したダンパーなのだろうと想像されます。現在の様にオイル流動式のダンパーが当たり前の時代しか知らない者から見れば隔世の感を持つものです。
ところで、リーフスプリングで複数枚以上を重ねたスプリングは、リーフ同士の擦れ合い摩擦によりダンピング作用をある程度持ちますか。ですから、発祥のころのクルマやそれ以前の馬車等は専用のダンパーがなかった様です。それでも最高速度等のクルマの性能向上に伴い、サスペンション特性の向上のため、スプリングとは別のダンパー(制振機構)が求められる様になったのでしょう。
話は変わりますが、30数年程以前、私がクルマの整備を始めた頃の思い出として記してみます。当時の乗用車のフロントサスペンションは、高級車はダブルウィッシュボーン型もありましたが、それ以下の多くはマクファーソンストラット型(通常名:ストラット式)が一般的でした。このストラット式は現在のクルマでも多く利用されている型式ですが、当時のものは耐久性の問題が少なからずありました。現在では走行10万キロを超えてもダンパーにオイル漏れを起こすことは少なく、ダンパーが抜ける(効かなくなる)等という現象を体験することは希なことなのでしょう。
しかし、当時は何度か左右前輪のダンパーが完全に抜けたクルマを運転したことがあったものでした。乗り心地はフワフワと何時までも上下左右の揺動が続き、誠に気分の悪くなる酔う様な乗り心地だったものです。当然、コーナーでのロールも早く深く、ステアリングの反応も鈍くなっていました。とても不安で、こんなクルマでロングドライブしたら、気が滅入って来るはずのものでしょう。
このストラット式のオイル漏れによるダンパー抜けですが、ストラットロッド自体の摩耗もありましたが、大方はロッド擦動部のブッシュの摩耗によるものでした。このブッシュのすぐ上部にオイルシールが装着されています。しかし、ブッシュの摩耗が1mmを超える程度以上にも至れば、当然オイルシールの追従限度を超えてしまいますから、オイルは漏れてしまう訳です。
当時は、ストラット内部のロッドやブッシュ、シール等、細かいパーツは総て細分化して供給されていましたか。ですから、分解してブッシュやシールを交換し、オイル(当時はATFオイルが指定)を規定量入れて修理したものでした。現在では、こんな細分化パーツの供給の設定もないでしょうし、そもそもストラット式でもオイル漏れするトラブル自体も少ないことでしょう。以上、昔話を記しました。