私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

人物を見ることの重要性

2011-03-02 | コラム
 世の多くの事柄おいて、交渉事は欠かせぬものでしょう。その中で、交渉相手となる人物を見る(見極める)ことは重要なことと意識しています。
 ここでは、私にはあずかり知らぬ保険会社の損害調査担当部署での対応を、架空のドラマとして創作してみます。なお、このドラマは今はまり込んで読みふけっている鬼平犯科帳の鬼平こと火付盗賊改め長官、長谷川平蔵と部下の木村忠吾(あだ名がウサギ)との会話としてみましょう。
 役宅(事務所)内で平蔵は忠吾に言う。「おい、ウサ、あれはどうだった」と。
 あれとは、今朝方、受付担当の事務方女(女性)が約半刻(今の1時間)程も、ああじゃない、こうじゃないと、くどくどしい電話を受けたという被害人(者)の案件のことであった。
 忠吾は、「お頭、被害クルマを見てめえりましたですが、相手人とよく話しができないんですよ・・・」
 平蔵、立て続けに忠吾にまくし立る。「いってえ、相手はなんて言ってるんでえ」、「相手のツラ(顔付き)はどんなでえ」と問い掛けたのであった。しかし、これに応答する忠吾は、しどろもどろで、平蔵の満足する返事ができぬのであった。
 そんな、忠吾のしどろもどろを聞きながら平蔵は、「ウサ、おめえの話しはさっぱり要領を得ねえ。人物が見えてこねえ!」と切り捨てたのであった。
 まだ宵の口でもあったこともあり、「ウサ、場所は近えな」と確かめつつ、「よし、歩きな、ウサ」と声を掛け、役宅内の者に「人物見てくらあ」と声を掛けつつ役宅を出たのであった。
 程なくして、被害人宅前に現れた平蔵と忠吾であった。忠吾が、「ここでござえます、お頭」と言うや、平蔵は「どれ、わしが当たって見ようかのう」と言う。そして、平蔵が相手人宅の戸口に立ち、中へ声を掛けること数度、中から怒鳴る様に「もう話すことはない。けえってくんな!」との声が聞こえるのであった。
 ここで、平蔵はたじろぐことなく、玄関引き戸を僅かに開けると共に、中に呼び掛ける様に「不幸な事故でご迷惑をお掛けもうした。私共目は早急に解決したいと思い参ったのですよ」と呼び掛け、さらに「ご亭主様のお顔も見ずに話すのは誠に持って失礼なこと、是非上がらしておくんなさいましな」と呼び掛けたのであった。
 それに対し、暫しの沈黙の後、「じゃあ、へえってこい」と相手人の返答があったのであった。平蔵は、直ちに「ごめんなせえよ」と声を掛け、被害人宅へ入り対面したのであった。
 室内の状況は、世に言う「男やもめにゃ・・・」のことわざの如く近い荒れたさまで、暗い室内の奥に頑固一徹そうな被害人の目が光っていたのであった。
 そんな室内の状況をチラと見ながら平蔵は、「ご亭主は今回事故の弁償をどの様にすれば納得してくれますので?」とたずねたのであった。
 実は今回の被害クルマは比較的古い輸入車であるが、その損害はドアミラーのみの損害なのであった。
 そして、被害人は言う。「お前らでわしのクルマを持って行って直して戻してくれればいいんだ」と。
 これに対し平蔵は云います。「ご亭主、今回の事故で壊れましたのはミラーだけでごぜえます。ですから、ご亭主のクルマを私目共でレッカーなどの運搬を行うことはできないのが道理なのでごぜえますよ。」
 一呼吸置いて平蔵は続けます。「ご亭主、お手数掛けますがクルマを懇意な工場へお持ち下さいましな。予め、私共目にて、工場にその旨をつなぎ(連絡し)、部品の取り寄せと、お待ち戴いての短時間での修理のことを願っておきますんで」と。
 暫しの沈黙の後、相手人曰く「判った。おめえさん達でミラーの部品だけ、わしの処へ届けてくれ。交換はわしがする。」と。
 直ちに平蔵は云います。「ありがとうごぜえやす。部品は早速取り寄せ、お届けしますんで、よろしくお願えします。」
 はてさて、帰りの車中で平蔵は忠吾に云う。「ウサ、おめえも、まだまだツメがあめえのう」と。受けた木村は「・・・」と言葉も出ないのであった。

 この物語で云いたいのは、交渉事においては、決して相手との対面を怖れてはならぬということです。そして、相手の要求に対し、単に譲歩を思考するのではなく、ものごとの道理を説き、出来うる代替案の提示など、正々堂々の真剣勝負として挑むことだと思っておるのですが・・・。


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