私の思いと技術的覚え書き

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ロールオーバー事故を思う

2011-08-19 | 事故と事件
 過日、浜松の天竜川下り船の転覆事故が報じられています。この様な転覆(ロールオーバー)事故は、クルマの世界でも時々あることです。

 日本の場合、道路運送車両法の保安基準により、全ての登録車について最大安定傾斜角35度以上が求められており、新規検査もしくは型式登録審査試験において、台上での試験が行われています。具体的には、車両をロール方向に傾斜させていき、35度で外側輪が浮き上がらないことを検査するというものです。

 しかし、この最大安定傾斜角というのは、あくまでもスタティック(静的な)試験です。実際のクルマの運航中には、様々な外力が働きますし、サスペンションという懸架装置が装備されていますから、最大安定傾斜角を満たしていればロールオーバー事故は起こらないと云うことにはなりません。

 例えば、パイロンを等間隔で1列に並べた間を、なるべく高速でスラローム走行する場合、左右にハンドルを切り返し、それぞれロール方向は反転する訳ですが、車両の重心位置だとかサスペンションのバネレートやダンパーのバウンドおよびリバウンドそれぞれの減衰力の設定によっては、定常円旋回における限界を超えるロール角を生じ、ロールオーバーに至る場合があり得ます。

 思いだすのは、ベンツ社初のFF車である初代Aクラスのことです。鳴り物入りで投入されたAクラスでしたが、Jターンという高速直進からの急旋回においてロールオーバーが生じることが判明したのでした。これによりベンツ社では、販売を一時中断し、販売済み車も含め改修を行ったのでした。細部は判りませんが、次の2点のことが行われたことは確かだと思います。①は、4輪のサスペンションバネレートを上げた(強く)したこと。②は、スタビリティコントロールを全車に標準装備としたこと。この処置によって、転覆事故は抑止されたのだと思いますが、バネレート強化により当初の乗り心地は相当に犠牲に成らざるを得なかったものと想像されます。

 リアルワールドにおいて起こるクルマの事故を眺めていますと、ロールオーバーを起こすのは、背髙の車高が高いクルマが多いことが実感されます。例えば、交差点での出合い頭事故でも、優線路側が軽のワンボックス車などですと、背の低いクルマに比べると数多くロールオーバーしていることでしょう。

 また、高速道路等の事故において転覆しているのは、バン型荷台の貨物車、バスなどが多く、次いでSUVとかクロカンタイプと呼ばれる車種が多いことが判ります。これらのクルマに乗っている方は、トラックやバス等のプロドライバーはともかく、SUVとかクロカンタイプ車の方は、その様なウィークポイントがあることを知らない方も多い様に想像されます。何れにせよ、これらのクルマにおけるロールオーバー時の救命には、同乗者全てのシートベルト横着が命運を握るのでしょう。



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1 コメント

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関越自動車道事故で防音壁に突き刺さったバスの事... (望月紀宏)
2012-05-01 08:54:48
関越自動車道事故で防音壁に突き刺さったバスの事故は実に痛ましいです。
しかし、この道路設計は実にずさんだと言わざるを得ません。
何故なら、ガードレールと防音壁の隙間はどのくらいあったのでしょうか?
この隙間の設計要件は、仮定として車両がガードレールに接触して尚もこれを乗り越えるような車両ベクトルが働く動きがある場合は、車両が転覆する限界角度(最大安定傾斜角35 度以上)の位置に防音壁があるべきでしょう。 もちろんガードレールは変形させられますから、このゆがみ代を加味した寸法設定の必要もあるでしょう。(5/1 産経新聞は20~30センチの隙間と報道)
再発防止を図るため、道路会社、国土交通省、トラック、バス製造の事業者などは適切な防音壁の建て位置を決める協議をして設計標準化につなげて欲しいです。
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