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ルポルタージュ・損害調査員その20 損保調査員は危機意識を持たねばならぬ

2022-07-09 | コラム
ルポルタージュ・損害調査員その20 損保調査員は危機意識を持たねばならぬ
 現在の日本は基幹産業として自動車への依存が高いことは知られているが、年々国内新車販売台数は減りつつあり、2年前から最強のトヨタ自動車でさえ、国内ディーラーチャネルの取り扱いを全ディーラー併売にして、取り扱いディーラー別の専売は事実上なくなっている。このことは、あくまで現行の類似車種を統合し車種を減少させることで、国内生産プラントの高率を上げようというところにあるのだろう。それと共に、サブスクとかシェアリングの将来的な拡大を見込んで、既に一部車種ではディーラーを通さないキントといういわゆる金融会社経由でネット販売までを始めている。これについては、既に元々東京のディーラーはメーカー系列だったこともあり、トヨタモビリティ東京の1局体制が早々に完了したが、各地方では地場資本の有力ディーラーが相当数あり、これから血みどろの潰し合いとも云える戦いに入ることになるのではないだろうか。そして、昨年から今年に入ってもトヨタだけでなく各メーカーデーィラーで続く不正車検の摘発も、ディーラー生き残りを掛け、新車販売の落ち込みをサービス売上で補填しようという背景もあるのでもないかとも想像するところだ。

 この様な自動車ディーラーの動きとか、将来的な自動車保有台数の急減に危機感を強めているのは、ディーラーだけでなく自動車保険を最有力保険商品として扱って来た保険会社も同様だろうと思えている。それが、過日記した大手損保の新たな戦略(下記リンク)に記した、新たな中核代理店制度への流れを生み出しているのでなかろうか。

 つまり、保険会社は今まで熱を入れてきたディーラーに一定の見切りを付け、新たな中核代理店に従来社員がやって来た業務を移管し、社員を減らそうという戦略だとも考えられる。保険会社にとって、通常の企業の粗利に相当する収入保険料に対する保険金支払はロスレシオと呼んでいるが、これは純率と呼び自動車保険料率算定機構の統計で表されるものだ。そして、付加率となる経費に相当する事業費を何処まで圧縮して利益を残すかが個別損保社の生存を左右することになる。こういう中で、金融ビックバン以後、損保の合併が行われ、個別支社や損害部門の統合も進め、代理店も小規模代理店の統合なども進めて来たが、それもいよいよ限界に近づき、将来的に従来のボリュームあったディーラーの落ち込みにも備えるというところだろう。そもそもディーラーは、代理店としては自動車保険については、それなりにボリュームある収保が見込めたが、それでもギブアンドテイクで新車や車検の紹介販売を求められたり、ワガママやタカリ染みた要求も受けるなど、そもそもプロ代理店と比べると保険の知識不足で何かと手間の掛かる要素が高かった。それが、ボリュームが下がれば、手間だけが残ることになり、ディーラーと付き合う旨味は薄くなる。ここまでは、主に保険会社の営業部門の話しだが、査定部門も同様のことがある。契約者への説明・説得も含め代理店としての能力が低く、そのくせ修理費の高額要求だとか無理難題を受ける場合もある。

 査定部門では、近年AI見積なるものが試験運用されだしているが、現状外部から聞こえる範囲では、まだまだまともな見積ができないということの様だが、これも自動運転の発展と同じく、アルゴリズムの改善などでそれなりに精度は向上して来ることだろう。そもそも技術アジャスターによる調査効果というのを、損保各社では昔から疑問視していた気配が感じられたものだ。特に見積屋としての技術アジャスターだとすると、端から見ていると修理工場の云い分を巧く翻訳して保険会社に伝えているに過ぎず、見積総額を増加させている面もあるのではないだろうか。無論、アジャスター側の視点に立てば、立会することにより、無言のそれなりの効果を発揮して、工場などがムチャをできない様にしているという意見もあるだろう。しかし、そのことをアジャスター存在で経費と支払っている対価に比べ何処まで効果があるのかと思案しているのが、保険会社経営人だろうと思う。

 前にも何処かで記したが、私が将来技術アジャスターはなくなる運命だと意見したら、そりゃ困ったことになると云う工場の意見があった。つまり、工場側の視点に立つと、必ずしも100%満足とは思っちゃいないが、アジャスターがいるからこそ、エンドユーザーよりよほど修理の内容を理解してくれ、それなりに素人と話すより楽に要求を飲んでくれる余地があると云うのが本音として透けて見えるところがあるのだ。これがアジャスターはいなくなり、AI見積が普及した時代に、保険会社の女性担当者とか、中には車両損害のことに無知な男性職員に、ここがおかしいんだと個別要求して場合、以下の様なやりとりが予想されるのではないだろうか。いやいや当社では、このAI見積を標準的な値として大多数の工場に理解戴いていますので、個別にその様な専門的なご要求されるのでしたら、債権者側の立証責任あるのが現行法ですから、どうぞ立証書類を添えて訴訟なりの場で主張して下さいという世界になったら、そこまで手間暇および表現能力のある工場がいるのかどうか未知ながら、それもあり得ることだと想像するのだ。

 ここで云いたいのは、損保の損害調査に関わる職員も女性もアジャスターもだが、危機意識を持たねばならないということだろう。特に技術アジャスターと呼ばれる者は、立会なり画像査定なりをやって、適当に金額決めて来るだけが仕事で、工場にムリ筋なことをいわれても、ロクに調べもしないで、そういうものかなと適当に値切って良しの見積屋の世界では、まあ存在価値はないと10年以上前の現職当時から感じていたことだ。だいたい、アジャスターのマネージャーとか本社の連中も、指数が絶体値と云ったらある意味独禁法違反なのだが、そうまでは云わなくも、目を付け指摘するのはそういう部分ばかりが多く、端的に記せば付加指数の0.2とか0.3のことを指摘するレベルの低さだ。そのくせ、経験に頼る板金とかフレーム修正費の何万もの項目には付言して来ない。これは指導者だけでなく、末端のアジャスター自信がそうではないだろうか。そういう決まったものがない項目こそ、互いに自由に主張できる項目だとかねがね思っているところなのだが・・・。

 以上は見積屋としての話しだが、事務所にいるとき、自分の周りの他業務の主に女性や人身損害をやっている者の声に耳を傾けてみろと云いたい。長々電話で示談の話しをしている女性担当の話しに耳を傾け、どうしたんだと声掛けてやれよと云いたい。分業化するのは時代の流れかもしれないが、クルマを立ち会った者が一番良く判るし、必用なら出掛けて云って説得する手伝いが何故できないのだろうと思う。

 ある損保の話しだが、事故受付や示談担当の女性に云わせると、アジャスターってイヤな奴、何聞いてもそれは俺の仕事じゃないとつっけんどんで、なにも伝えようとも動こうともしてくれないというのがある。それと、アジャスター規則に判り難い表現で記してあるが、整合性のことは業務となっていることがあるが、アジャスターの提出レポートには現在でも整合性ありなしのチェックがあると思う。しかし、100件の車両調査なりを行って、1件も整合性に首を捻る案件がないとしたら、むしろそれは異常な世界だと思わねばならないんじゃないだろうか。それを忘れ、そういう時にどうやって伝えるかの能力に欠けている者が昔から多かった。そこには、明確な証拠はその時点ではないにしても、そこにはそれなりの論理があってこういう思考から疑わしいという論拠を持って伝えれば、まとも上司にしても査定職員にしても、それならこういう補足調査をして見ようとかいう話しになるはずだ。

 こういう云い方は高慢に聞こえることを承知で記させてもらうが、自整BP業も伝える能力は十分ではないが、技術アジャスターと呼ばれる者もそれと同じ程度の思考で良しと思っている気配があることを前々から感じ続けて来た。このことは、自研センター始め親会社の指導とか要求が甘かったという要因がありすべてをアジャスターの自己責任にだとまでは思わないが、それに気付かないアジャスター自身にも大きな落ち度があると云うのが私見だ。

大手損保は新たな戦略・そこに見える背景を読む
2022-06-17 | コラム
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/d59836c96ad02935097a74449856c0bc

#ルポルタージュ・損害調査員 #技術アジャスターという技術って何だ


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