私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

鉄道は公共の利益だという話

2018-12-30 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 近代、様々な国家運営機関が民営化されてきました。国鉄、電話、郵便、他などです。これら国民の多くが関わり、都会から田舎まで全国各地津々浦々までを、ある意味で公平、公共の利を求めるべき機関を民営化して来た訳です。この理由は、様々な効率低下だとか競争原理と働かせるという名目だった訳ですが、真に国民の利益を果たしたかと見つめた時、甚だ疑問の改革内容だったと思えてしまいます。そんな中、地元沼津の鉄道高架の問題点を感じつつ、鉄道が人々に与えてきた様々な効果を知りたくて、次の2冊をざっとも読み終えた感想を記してみます。
・鉄道は誰のものか(2016年)・JRに未来はあるか(2017年)/共に上岡直見著。

 この本では、1987年に国鉄からJR7社(本州3社、島3社、貨物)に分割民営化されたが、これが本当に国民のためになったのかと疑問を記されていますが、正にと思うところです。我が住まい地の沼津はJR東海で運営されている訳ですが、JR各社でもトップクラスの高収益企業です。その理由は、全売上の7割とか8割と云われるものを、高乗車率で10分間隔ほどで運行している東海道新幹線を保有しているがためです。それに比べると、在来線たる東海道本線は、無人駅も増え、駅設備の老朽化だとかトイレが汚いとか、南北自由通路がなく、構内を貫通したいなら入場券を買えとうそぶくがごとくで、何ら自前で整備しようとしないなどが上げられるでしょう。また、沼津は国鉄時代は、機関区があったり、東海道本線の基幹駅として東京直行の普通電車が多くあったのですが、大幅に減らされました。また、東京方面から沼津へ戻る場合も、ほとんどが熱海止まりで乗り換えを強いられます。これは、JR東の区分が熱海までによるところで、明かな分割の弊害で、JR各社の境界となる全国各地で類似の問題が生じているのでしょう。

 それと、全国一括で運営されているJR貨物のことです。長距離輸送の大量一括輸送において、およそ道路を走る貨物輸送に比べ、その効率だとか周辺環境に与える悪影響に占める負の側面は圧倒的に低いポテンシャルを持っていることは誰が考えても判りますが、あまりにもおざなりにされて来たことは否めないと思います。だいたい、高度経済成長時代から、ガソリン税、自動車税、重量税などの目的税を作り、膨大な費用を国は道路関係建設というクルマのための施設に注ぎ込んで来ました。それに比べれば、鉄道への投資はJR民営化以後、顕著に低下してきたと思えます。だいたい、年々長寿命高齢化している社会は、医療技術など科学文明のたまものでが、そんな中、クルマの事故で亡くなるもしくは障害を負うという事故は、だいぶ減ったとはいえ、鉄道に比べれば圧倒的に多いのですが、何故か許容され続けてきた訳です。

 この年末も、帰省ラッシュの中、大きな人の移動が行われるのですが、それに絡んでクルマの死傷事故は幾つも生じるのでしょう。しかし、鉄道でその様な事故は起こらないでしょう。鉄道でも福知山線みたいな大きな事故が起こることがありますが、極めて希なことであり、偶に案内されている人身事故というのは、大方が自死を目的とした事故と呼ぶに当たらないものでしょう。著者は記していますが、もし現在のクルマに偏向した人や物流を、大きく鉄道に移したとすれば、その社会経済的な損失補填効果は計り知れぬほどに大きいということが判ります。

 何れにせよ、人口減少と高齢化社会に向け、クルマを持たない、もしくは持てない交通弱者は増える訳で、総てを見掛けの経済効率、つまり採算だけで、鉄道の維持を判断することは、間違った方向であろうという思いに至ります。


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