私の思いと技術的覚え書き

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ホイールアライメントを考える

2018-12-14 | 技術系情報
 ホイールアライメントを検討する場合、つまり測定し問題があれば修正する場合ですね、大半の場合は、左右のホイールベース差がないのを確認して、サイドスリップテスターを通してみて±5mmの基準値内に入るようタイロッドを伸縮してOKとしている場合が多いと思います。

 ここで、もしかしたら知恵ない作業者は、ちょうど作業しやすい片側だけのタイロッドを伸縮する場合があります。このグループを見ている方にはあり得ないと思っていますが、これをやると直進時のステアリングセンターが狂うことになります。合わせて、L&Pステアリングギヤの場合に顕著に出ますが、左右でタイヤ切れ角が異なるという現象になり、場合によっては最大切れ角時にタイヤが車体と接触して異音が出るというクレームになります。

 さて、何時もの講釈好きの長文ですから、嫌になった方は以後は読まないことをお勧めします。以後のテーマは、整備関係ではあまり聞かないサスペンションワードとなる、ジオメトリーのことを記したいと思います。これは直訳すれば、サスペンションの各アーム長だとか配置により、ホイールの伸縮、旋回、後退などしたした場合における幾何学的な動きを表すという語意です。この問題があるからこそ、正式なアライメント測定においては、タイヤの空気圧だとか車高が基準値か確認することが前提となっているのです。

 ちょっと昔のクルマの話しを2つほど記してみます。何れも私がクルマに乗り始める以前のかなり昔のクルマの話しです。1つは、昔の後輪独立サス(IRS)に結構使われていたスイングアーム式後輪サスペンションです。これは、後輪が、車体に平行なトレーリングアームと1本のロワアームだけで懸架され、デフ脇のドライブシャフトのユニバーサルジョイント(多くがクロスジョイント)が1箇所というものです。従って、タイヤの上下動により、タイヤのキャンバー角はロワアーム長の円弧に沿って大きく変位します。つまり、フルリバウンドで強いポジキャンがフルバウンドで強いネガキャンまで変化するということです。このサスペンションの時代、多くがRRと組み合わされたクルマが多かったこともあり、一定を超える急旋回において、後輪のリバースが突然現れやすいという問題があったというウィークポイントを持ったものでした。ついでに記しますが、これを改良したのが、セミトレーリングアーム式リヤサスで、トレーリングアームとロワアームを兼用として、その三角形アームの支点(ピボットと称す)を斜めにしたものが、RR全盛時代からFR全盛時代になって普及しました。日産でも510ブル以降採用。トヨタはもっと後年IRS採用です。だぶんマークⅡなどMX40以降で、それ以前はリーフにしろコイルにしろリジットでしたから、トヨタのIRS化は日産より10年近く遅れたのです。でも、販売はこの時代、トヨタは日産をどんどん引き離して行きました。

 もう一つ、日本の実用FF市販車第1号たるスバルff-1(1966発売)のことです。このクルマで、スバルは新設計の水平対向4気筒エンジン(縦置)を初めて採用し、爾来、現在まで拘泥し続け、一定のファン層を持つに至るルーツとなるクルマです。しかし、この文章を書きながら図鑑を見ていると、1300ccで裸とはいえ車重730kgですから、軽く仕上げたものです。現在の軽より断然軽く、現用EFI制御の吸気系とタイヤさえ替えれば、燃費チャンピオンになるのかもしれぬかもと思えます。話しが逸れましたが、このff-1ですが、フロントはストラット式サスですが、ドラムブレーキはトランスアクスル(TM+デフ一体)脇に付くインボードドラムから、左右に内外の等速ジョントを介して前輪を駆動しています。ブレーキの整備性は最悪ですが、何故にインボードにしたのかというのが本項目の要点です。これは、ロワアームと最外のボールジョントとストラット上部を結ぶ仮想キングピン軸(ISA)をなるべく寝せたかったことにあった様です。それは、ISA延長線が路面に接する点とタイヤ中心点の距離すなわちオフセット(もしくはスクラブ半径)を小さくしたかったということにあるのでしょう。現代車では、変形のナックルや下記写真や参考記事で述べたことあるダブルジョイントにより、実ジョイント位置より正味位置を外に追い出すことで、単にスクラブ半径だけでなく、その他のターニングラジアスに関わるジオメトリーも様々なトライはされ続けています。だたし、その効果の程は、メーカーの自惚れや自動車評論家の評価記事はトンチンかんなこと記している場合が過去にはありました。(今は見ないから知りません。)

※写真はレクサスLC500=LS500のフロントアッパーアーム部。タワー部はアルミキャスト製だが、これはアーム位置の寸法精度と剛性を肉厚を自由に加減できる優位性から、同様素材製法の採用は内外で増加している。


ダブルジョイントのこと

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