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中性子脆化・原発60年稼働は超ムリ筋論

2023-02-28 | コラム
中性子脆化・原発60年稼働は超ムリ筋論
 世にある金属や樹脂には脆化という、その素材が本来持っていた展延性(伸び)とか靱性(靱性破壊に至る程度)など機械的もしくは化学的要因による性能劣化が起こることが知られている。判り易い身近な例で云えば、パリバケツを使用し経年すると、その概観は白味を帯びて本来の色味が薄れると共に、その強度が失われ割れ易くなる。クルマの表面を覆う塗料も、特に水平面を中心に、表面が白濁化しつつボロボロと粉状の表面となる。これをチョーキングなどと呼ぶが、クリアーなヘッドライト表面が透明度が低下しつつザラザラな状態になるのも同様の理由による。ヘッドライトの場合は、元の樹脂そのものだと、その硬度が低くキズ付き易いとか、表面脆化が進行し易いことからクリヤー塗装を施してそれを幾らか抑制しているのだが、所詮塗料も樹脂なので、脆化は起こるのだ。この樹脂の脆化は、太陽光線に含まれる紫外線だとか、温度の寒暖の繰り返しの要素で進行すると云われる。

金属材料の場合は、樹脂に比べれば、脆化が少ない様に見えるが、様々脆化が起きることが知られている。一番大きいのが、いわゆる錆びや化学薬品による実質的な薄肉化と云える現象だろう。また、この腐食は、応力腐食割れと云われる強い応力が働く部位ほど、進行が速いことが知られている。

 また、疲労破壊と呼ばれる破壊現象があるが、その素材の本来強度を相当下回る応力であっても、何万、何億と応力が繰り返し働くことで、基準応力より遙かに低い応力で破壊されてしまうという現象があり、この場合に元来の素材に何らか応力の弱点となる弱い部分があったりすると、そこを基点として破壊が進行し、最終的に破断し、大きな事故に結び付くという現象が疲労破壊と呼ばれる。

 また、厚物金属ほど起きやすい問題として、残留応力の問題がある。この残留応力とは、外部から何ら応力をうけていない場合でも、材料そのものの中で応力が働いていて、その素材を変形させたり、酷い場合は破壊をさせたり、先の疲労破壊を進行させたりという問題がある。これら、金属もしくは樹脂などの物質を疲労させる原因としては、応力の繰り返し負荷とか、残留応力の問題、基点となる欠陥の存在などが上げられる。

 ところで、原子力における中心部となる原子炉圧力容器は、円柱形の板厚10cmを越える高強度の良質鋼製で、その自重300トンとも云う高強度のもので、溶接で厚板を接合して組み立てられるが、溶接組み立て完成後は、焼鈍というある温度まで上げてゆっくり冷却することで、その筐体内部の残留応力を抜き取る作業が行われ設置される。原子炉稼働中は、この圧力容器内で、核燃料が核分裂反応を起こし、その熱を利用して発電を行うのだが、炉内には中性子が飛び交い、この中性子に原子炉圧力容器の内面が晒されることで、中性子脆化を起こすことが知られている。


 ものの本によると、何年か毎の燃料入れ替えの際に、原子路圧力容器内には、容器と同材質の鋼のサンプルピースが設置されており、燃料交換と共に、このサンプルピースを引っ張り試験機で計測し、基準の引っ張り応力に比べて著しい中性子劣化が起きていないことを確かめているという。また、原子炉の緊急冷却などとして、高温の原子炉圧力容器に一気に冷水を注入すると、容器の内側と外側の熱収縮度の違いから、大きな応力が働き、中性子脆化の生じている箇所をウィークポイントとして圧力容器の破壊が生じる可能性がある。

 なお、福島原発の1から3号機の原子炉圧力容器では、地震で原子炉の制御棒は全数差し込まれて、核分裂反応は自動停止したが、全電源喪失により原子炉圧力容器内の冷却水が循環しなくなり、燃料棒の自己崩壊熱により燃料ペレットを積層しているジルコニウム製製のサヤ管を溶損(融点1855℃以上)しつつ、水素ガスを発生させ、燃料のウランそのものものも溶損(融点1132℃)しつつ、原子炉圧力容器底面も溶損(鋼の融点約1500℃)して、もしかするとその下部のコンクリート(融点は明確でないが800℃程度か)すら溶かし、大地に染みこんで、その冷却と拮抗した部位で固まっていると想定できる。
 
 つまり、ここで云いたいのは、原発を作ると云うことは、原子炉圧力容器とは、交換不能な一体物機関部位であり、一生モノなのだが、そもそも中性子脆化という宿命もあり40年という炉の寿命が決められた要点はここにあり、それをおいそれと60年とかそれ以上に伸ばすという現政府(主に経産省のアホ)が宣うご選択は超ムリ筋な話しなのだということだ。


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