整備工場に伝えたい・原価意識の軽視
筆者は10年前まで損保の損害調査員(アジャスターと呼ばれるが私はのその名を嫌う)として、またディーラーのサービス所属員および、損保退職後の現在まで一事業者として車両関連の技術論などに関わり続けて来た。そんな約40年に渡り自動車整備およびBP工場と触れ合って来たり、見識の高い方々とも話すこともあり思うことだが、非常に僭越ではあり何を小癪なという意見も生じるかもしれないが、あえて意見を記す次第だ。
この原価ということについて、色々云いたいことがあるが、今回は塗装に関係する材料代について幾つか感じることを記したい。
塗装に使用するのは塗料だけではない。また、その塗料も、最近は2Kだとか水性と云われる塗料では、カラーベースまでは1液であり硬化剤を混合する必用はないが、調色の基材となる原職は、色味により単価が大きく異なる。また、トップコートを覆うクリアーは2液ウレタンとなるが、これは硬化剤を混合するがこの硬化剤の単価は塗料より高価なものだ。
また、塗装の材料代を考える時、副資材というべき、シリコンオフ、マスキングテープ、マスキングペーパー、サンドペーパーもしくはツール用サンディングパットなどが必要になる。
ここで、まず塗装を担当する技能者の技能水準だとか原価に対する意識が高い場合と低い場合を比べてみると、雲泥の差の原価となるべき物品および時間の差が生じるが、このことを追求する工場経営者は少ない様に見えるが如何だろうか。塗装に当たっては、目的の対象範囲に応じて、やや過剰な分量の調色調合済み塗料を作らねばならないが、これをやや多めにみて30%程度残る程度までは許せるが、2倍も3倍も残量塗料が残る管理しかしていないという場合は多いのではないだろうか。
それと、まともな商店では、棚卸しとして年に最低1回は在庫の管理をすると共に、ある程度経年し劣化が認められるものは廃棄する。これは塗装の施行工場でも必用なことで、原色塗料を観察しつつ、場合によっては廃棄する管理をしつつ、年間なりある期間の塗料や副資材の仕入れ価格を管理して当然だろうが、そういう管理をしている工場は日本では希ではないだろうか。また、マスキングテープやサンドペーパーやパットなどは、共用棚から自由に取り出すのは結構だが、どの作業者がどれだけ何時取り出したかの管理までをしている工場は希だが、ある海外工場を度々視察している識者は、米国や欧州の工場は違うという。それら副資材を出庫する際は、バーコードリーダーで、自分のコードと出庫単位など(日時は自動で記録)していると云う。つまり、ネットワーク化された中で、常に最近のイージス戦闘艦で云えばCIC(戦闘指揮所)に相当する工場指揮者には、これら在庫残量が把握できるし、それにより補充するし、定期的もしくは工場の運営システムが構築できていれば随時、工員毎の塗装材料費の把握(つまり個別の原価の要素)が把握できるという。
それと、棚卸しである程度経年した塗料を観察し廃棄と記したが、基本的に塗料もそうだし接着剤など化学物質は有効期限があることを意識しなければならない。特に現在は水性塗料の使用工場が増えつつあり、そんな工場から聞き及ぶところもあるのだが、水性塗料は寒冷時に氷結させてしまうと温めてもゲル化して使用不能になることは聞いていたが、必ずしも氷結させなくても、経過期間が長くなると塗料がダマになり攪拌しても分散溶解せず使用不能になる場合が色味による違いもあるが生じると云う。つまり、塗料には使用しなくても、経過期間で廃棄せざるを得なくなり、また棚卸しとか状態の確認とか、保管管理の時間を要し、これも原価に一つとなると云うことだ。また、保管管理の人手を要する以上、仕入れ値で売ると原価割れになる訳であって、最低限そこには要した人的コストを加味した売値であらねばならないだろう。
塗装に関して損保が塗装指数を使う妥当性について云えば、私は強い疑問を抱かざるを得ない。今回記した塗装の要素を幾らかでも思考したというのなら理解するところもあるが、よもや今回記した様なことを損保が配慮して指数なり作っているかと考えてみれば、その道のプロなら間違っていることに気付くだろうし、損保の損害調査員の諸君にも考えて欲しいと思うところだ。なに、上が決めたことだから従うしかないという声が聞こえるが、保険とは公平・公正にということが常に求められるものであって、私が保険調査員の時代には未だ「査定正義」という言葉が無効化していなかった。安いことが妥当ではないし、値切ることが妥当とも私は思わない。そんなことより、私は俗に見積屋と見られがちな現在の損害調査員という職業の行く末を案じている一人として、組織の構成員として業務に励むのは当然だが、そこには正義が必要であり、いささかでも正義に不審が生じれば意見を表明して、必ずしも一気に解消はされなくても、正義と信じる方向に導く努力を欠かしてはならないと思えている。
そして、修理工場もしくはBP工場は、塗装指数もしくは材料費相当としての算出塗装指数値の一定の定数(%値)を乗算した値が、ただ直感的に安いと主張してもそこには客観性がなく、第三者の裁定を仰いだ局面を思考すると負けるだろう。
#原価意識の欠落
筆者は10年前まで損保の損害調査員(アジャスターと呼ばれるが私はのその名を嫌う)として、またディーラーのサービス所属員および、損保退職後の現在まで一事業者として車両関連の技術論などに関わり続けて来た。そんな約40年に渡り自動車整備およびBP工場と触れ合って来たり、見識の高い方々とも話すこともあり思うことだが、非常に僭越ではあり何を小癪なという意見も生じるかもしれないが、あえて意見を記す次第だ。
この原価ということについて、色々云いたいことがあるが、今回は塗装に関係する材料代について幾つか感じることを記したい。
塗装に使用するのは塗料だけではない。また、その塗料も、最近は2Kだとか水性と云われる塗料では、カラーベースまでは1液であり硬化剤を混合する必用はないが、調色の基材となる原職は、色味により単価が大きく異なる。また、トップコートを覆うクリアーは2液ウレタンとなるが、これは硬化剤を混合するがこの硬化剤の単価は塗料より高価なものだ。
また、塗装の材料代を考える時、副資材というべき、シリコンオフ、マスキングテープ、マスキングペーパー、サンドペーパーもしくはツール用サンディングパットなどが必要になる。
ここで、まず塗装を担当する技能者の技能水準だとか原価に対する意識が高い場合と低い場合を比べてみると、雲泥の差の原価となるべき物品および時間の差が生じるが、このことを追求する工場経営者は少ない様に見えるが如何だろうか。塗装に当たっては、目的の対象範囲に応じて、やや過剰な分量の調色調合済み塗料を作らねばならないが、これをやや多めにみて30%程度残る程度までは許せるが、2倍も3倍も残量塗料が残る管理しかしていないという場合は多いのではないだろうか。
それと、まともな商店では、棚卸しとして年に最低1回は在庫の管理をすると共に、ある程度経年し劣化が認められるものは廃棄する。これは塗装の施行工場でも必用なことで、原色塗料を観察しつつ、場合によっては廃棄する管理をしつつ、年間なりある期間の塗料や副資材の仕入れ価格を管理して当然だろうが、そういう管理をしている工場は日本では希ではないだろうか。また、マスキングテープやサンドペーパーやパットなどは、共用棚から自由に取り出すのは結構だが、どの作業者がどれだけ何時取り出したかの管理までをしている工場は希だが、ある海外工場を度々視察している識者は、米国や欧州の工場は違うという。それら副資材を出庫する際は、バーコードリーダーで、自分のコードと出庫単位など(日時は自動で記録)していると云う。つまり、ネットワーク化された中で、常に最近のイージス戦闘艦で云えばCIC(戦闘指揮所)に相当する工場指揮者には、これら在庫残量が把握できるし、それにより補充するし、定期的もしくは工場の運営システムが構築できていれば随時、工員毎の塗装材料費の把握(つまり個別の原価の要素)が把握できるという。
それと、棚卸しである程度経年した塗料を観察し廃棄と記したが、基本的に塗料もそうだし接着剤など化学物質は有効期限があることを意識しなければならない。特に現在は水性塗料の使用工場が増えつつあり、そんな工場から聞き及ぶところもあるのだが、水性塗料は寒冷時に氷結させてしまうと温めてもゲル化して使用不能になることは聞いていたが、必ずしも氷結させなくても、経過期間が長くなると塗料がダマになり攪拌しても分散溶解せず使用不能になる場合が色味による違いもあるが生じると云う。つまり、塗料には使用しなくても、経過期間で廃棄せざるを得なくなり、また棚卸しとか状態の確認とか、保管管理の時間を要し、これも原価に一つとなると云うことだ。また、保管管理の人手を要する以上、仕入れ値で売ると原価割れになる訳であって、最低限そこには要した人的コストを加味した売値であらねばならないだろう。
塗装に関して損保が塗装指数を使う妥当性について云えば、私は強い疑問を抱かざるを得ない。今回記した塗装の要素を幾らかでも思考したというのなら理解するところもあるが、よもや今回記した様なことを損保が配慮して指数なり作っているかと考えてみれば、その道のプロなら間違っていることに気付くだろうし、損保の損害調査員の諸君にも考えて欲しいと思うところだ。なに、上が決めたことだから従うしかないという声が聞こえるが、保険とは公平・公正にということが常に求められるものであって、私が保険調査員の時代には未だ「査定正義」という言葉が無効化していなかった。安いことが妥当ではないし、値切ることが妥当とも私は思わない。そんなことより、私は俗に見積屋と見られがちな現在の損害調査員という職業の行く末を案じている一人として、組織の構成員として業務に励むのは当然だが、そこには正義が必要であり、いささかでも正義に不審が生じれば意見を表明して、必ずしも一気に解消はされなくても、正義と信じる方向に導く努力を欠かしてはならないと思えている。
そして、修理工場もしくはBP工場は、塗装指数もしくは材料費相当としての算出塗装指数値の一定の定数(%値)を乗算した値が、ただ直感的に安いと主張してもそこには客観性がなく、第三者の裁定を仰いだ局面を思考すると負けるだろう。
#原価意識の欠落