German Vintage Modules

ドイツ等のビンテージ業務用録音機材紹介、ラッキング、モディファイなど。

Neumann W444sta - Version 追記

2016-12-17 18:28:17 | vintage gear

これまでNeumann w444staバージョンはシリアル#1000番台から#5000番台までの4種類に加え、勝手に名付けた#930シリアルの「Devil」シリーズの5種類と分類して来ましたが、正式にはフェーダーとアンプ部にコネクターがない極初期のバージョンも存在します。

 

今年になってこの極初期バージョン(以下:プロトタイプ)の修理依頼が増加傾向にあるのですが、当初の5種類はほぼ100%の修理完了率に対して、プロトタイプの完了率は50%以下と残念な結果になっています。

 

その主たる原因は、プロトタイプにのみ設置されている「ヒューズ」が誤ったタイプや容量に置換されている事で、貴重なOA12が完全に壊れているためです。

 

ヒューズが設置されている理由は短絡などの素子故障により過電流が流れた際に即断で電源をシャットアウトしてトランジスタやオペアンプを保護するためなのですが、何故かslowblowタイプや定格より遥かに大きい容量のヒューズが入れられていたりで保護回路として働かず結果的にオペアンプを壊してしまった訳です。

 

このBLOGで書いてきた内容を繋ぎ合わせると1)OA12 2)930シリアル 3)レジストなしの生基盤などから、最高のW444と定義した内容に、このプロトタイプもあてはまってしまうのですが、定義を再確認するために少し追記します。

 

1)OA12はメタルケースとプラケースの2種類があり若干プラケースに軍配が上がります。

2)930シリアルですが、ペイントのFパネルが現行品の時期に製造された故のカスタムであり、量産される以前、ある時期までのNeumannモジュールはほとんど930シリアルがあります。

3)930シリアル同様ある時期までの基盤は生基盤です。

 

肝心な音色ですが、プロトタイプは’80年代のデジタルリヴァーブのような粒の荒さが顕著で、よく言えばディスクリートらしいサウンド感はありますが歪感が気にならない方には、デラックスなsiemens w291的な感じだと思います。

 

一方、従来の5種はOA12とMO6では高域の出方が多少違いますが滑らかです、粒が見えないほどきめ細やかで中低域の力感も業務機にふさわしい豊かさがあります。

 

音質については「好き嫌い」の範疇、あるいは個体差で玉石混交なので、好きならプロトタイプでもMO6でも構わないと思うのですが「古ければ古いほど」とか「希少種だから」との理由で音が良い訳もなく、長時間の過酷な使用状況下でも壊れにくい業務機としての資質は、明らかに「ヒューズ」が要らない回路構成にアップデートされた5種が勝ります。

 

5種と比べてフェイルセーフが未熟な点と音質がW444らしくないとの理由から、数年前に独業者からの20+台のオファーを格安にもかかわらず見送ったプロトタイプですが、今になって部品が枯渇している状況を抱え、不本意ながら「修理不可」で返送する状況ではプロトタイプでも部品取り用として購入しておけば良かったと後悔している次第です。

 

今までに多数のモジュールをお買い上げ頂きましたが、10年程経過しているものも多数存在するため、私からご購入頂いた個体については極力修理不可にならないよう来年からはパーツ収集に重点を置きたいと考えています。