思考の7割と収入の3割を旅に注ぐ旅人の日々

一般的には遊び(趣味)と見下されがちな「旅」も、人生のなかでやるべき「仕事」である、という気概で旅する旅人の主張と報告。

単なる“撮り鉄”ではない、真島満秀氏の鉄道風景写真

2009-08-28 06:00:30 | その他趣味
今週、遅まきながら東京都・品川のキヤノンSタワー1階キヤノンギャラリーSで先月30日(木)から来月14日(月)まで開催中の写真展『「鉄道回廊」一期一会を求めて』を観てきた。

この写真展の作者である真島満秀(ましま・みつひで)氏というと、鉄道写真、というか単に鉄道の車両や駅舎のみならずその周辺の風景や鉄道にかかわる人々も絡めながら撮る「鉄道風景写真」の第一人者とも呼べる方で、わかりやすいところでは本ブログを覗いている方にも愛用者は多いはずのJRの青春18きっぷのポスター写真を1993年から担当していることか(引きの鉄道走行風景や駅舎の写真が多いね)。だから、鉄道筋に特に詳しい“鉄ちゃん”とそれを細分化すると写真撮影専門にあたる“撮り鉄”対象者以外にも、一般的にJRを日々利用している人は氏の写真に何気に触れている機会は多いはず。

僕は真島氏の写真集は所有していないが、書店や図書館でそれらをたまに手に取ってページをめくってよく眺めたりはする。また、せめてもの救いとして、18きっぷの案内のために毎春・夏・冬にJR各駅で配布しているA4判のリーフレットを数年前から毎回もらってきて、それを部屋に随時貼って毎日眺められるようにしていたりもする。

今回、真島氏単独の写真展は初めて観に行ったのだが(グループ展のようなカタチはある)、そこで真島氏が今年3月に病に倒れて亡くなった、ということを会場の冒頭の挨拶書きで初めて知った。うーむ、残念。合掌。
そういえば18きっぷの今春のリーフレットから、昨年以前よりもその質が落ちた(写真よりも案内の部分の面積が広がったりしている)ように思って薄々は気になっていたのだが、その影響なんだろうか。
これまでのリーフレットはA4判の表面が丸々写真だったのだが、今夏のものなんかは写真は表面の半分(つまりA5判の大きさ)しか使用されていないし。まああくまで広告媒体だということはわかるけれども、なんだかなあ。

で、今回、真島氏の写真事務所が選定した写真を大伸ばしで改めて観ると、新幹線をはじめとする車両はもちろんのこと、各地の沿線の駅舎や利用者(主に高校生以下の子どもたちの通学風景)や働く人々など鉄道にまつわる風景が目白押しで、土地土地に鉄道と自然と人の密接なかかわりがある様子がわかる。
旅人の目線からすると「非日常」の風景ばかりなのだが、そこにはたしかに沿線住民が暮らしているという「日常」があり、前者のように旅情をかき立てられるというよりも後者をひしひしと感じられる生活感のある写真が並んでいた。今回の写真展が真島氏がこれまでにやってきた仕事の回顧という意味合いも考えると、観ていて不覚にもちょっと泣けた。

「動力」と「人力」の兼ね合いもあって完全に合致しているわけではないが、真島氏の写真は僕が全国各地を旅しながら撮りたい写真の理想形に限りなく近いもので、今後も写真集などで観ていって勉強しなければ、というかまずは何か1冊買わなければ、それとともに相変わらず貧相な撮影機材ももっと充実させなければ、と意を新たにした。

最近、真島氏が30代で設立した写真事務所で一時期働いて実力をつけ(写真家としての礼儀も叩き込まれつつ)、現在は独立して鉄道写真の分野の最前線で活躍しているお弟子さんの写真展を観に行く機会もあるのだが、やはり師匠の作品に比べるといかにも“撮り鉄”という感じの、師匠のように鉄道が周辺の風景と調和している様子をしぜんに切り取る、というよりは撮影者の主に車両写真を通じての自己主張のほうが強く感じられる。それはそれで「表現」をする者によるひとつの作品としては悪くはないのだが、どうしても師匠の「日常」を切り取る、言い換えると「記録」と「記憶」する眼差しの的確さが改めて際立ったりもする。
ちなみに会場には、そのお弟子さんたちからの師匠へのお礼も込めたメッセージも展示してあり、それらを読んでもまた泣ける。

今後も機会があればこのような写真展を催してほしい。今回のも品川のみならず他地域のギャラリーにも巡回するのだろうか。してほしい。

この写真展に限っては、「動力」か「人力」かの区別はひとまず置いておいて、というか双方の調和が取れている写真の数々を、(主に国内を多く旅していて)旅人を自認している方は観に行くべきである。会場の開館は平日のみだがあと2週間ちょい開催しているので、特に東京近郊の方はぜひ。


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