第四部 Generalist in 古都編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、出雲、Harvard、Michiganを経て現在古都で奮闘中

苦行の半分が終わった! MCTM Day 80 +MCTMの統計について(質問返答)

2015-12-18 23:57:08 | Mahidol University編

俗世から遠のき、ここバンコクで秘境に篭っておりました。

日本から臨床熱帯医学短期研修に来られていた日本人の先生方に全くご挨拶もできないまま、懇親会すら出れずに、本当に申し訳ありませんでした。

開始してから朝から深夜まで土日も無くミツバチの様に単純作業を繰り返して32日目

ようやく目標の1000症例を達成!! 

1症例の入院患者の全てのバイタルと検査、診療の流れ、輸液In/Out, 診断、治療等を書き取るのに平均15−40分程度かかるために、32日×朝8:30- 24:00まで休憩を考慮すると12−13時間/dayの時間を極力無駄にすることなく、もの凄い速度で相方と作業をこなしました。 

 

既に来年からMCTMまで進学を含めて考慮している先生方数名からコンタクトと質問を頂いているのですが、後続の先生方の為に記録しておきます。

タイの国民性なのか?それとも外国なのでそもそもが上手くいかなくて当たり前なのか?こういうことが起きます。私の場合はやりたい研究やテーマが一杯あったので、提案を色々としたのですが、自分の計画やスタイルを持ち込む事が日本と違って少し難しいです。そいうものといえば、そういうもので、指導医によると言えば指導医によります(血液内科医で九州大学に留学経験があるSupat先生なので、私は最も指導医に恵まれたと言われております)

なんでこんな予測外の状況に追い込まれたかと言いいますと

私のサンプルサイズの計算では757症例なのに、研究計画書のディフェンスの際に、「サンプルサイズが1400位あるとPublishの際にカッコイイね」と発言したどこかの外部の大学教授の無責任?!というかタイ人らしい鶴の一言のせいで、ありがたい「精神修行の鍛錬」に突入した次第です。

日本だったら、紙カルテでなくて、簡単に情報を手に入れれるのにとか、倫理委員会がMahidol大学は非常に厳しく(Case record formにきちんと写しとってからでないとPC入力させてもらえなかったり)、研究のプランニングの厳しさが半端無いです。

もしかしたら、こういったお作法が厳しすぎるために、無駄な時間を過ごしているでは無いか?との不安との闘いです。

勿論悪いことだけでも無くて、私が武士道精神を持ち込み刺し違える覚悟でGo Go!!するので、指導医3人が次第に熱を持ってきていて、助教授達が全員残って平日は毎日夜23時ころまで一緒にやってくれています。つまり、皆が本気です。Publishできるものをちゃんと目標として持って望めているのは、棚からボタ餅的な結果を狙うよりも健全な学びのスタイルかと私は思っています。

さてMCTMコースの質問にあった自体の全貌はまだ見ていないのでコメントはできませんが、これまでに終了したコース内容から、質問にあった統計授業は理論を学ぶよりも「実践でなれさせて覚えさせる」という内容であると認識して頂ければと思います。普通の臨床疫学・医学統計の講義は間違いなく網羅してます(ついていけるかどうかは自分たち次第ですが・・)。

半分は講義で、半分はPCを用いて実習です。ソフトは9割SPSSを用います(時々STATA)。勿論、大学の版権のものを無料でインストールしくれます。END NOTEの使い方の授業も2コマ程度あり、これも無料でインストールしてくれますし、その料金を考えると「Mahidol、ごめんね、ありがとう」です。

よって、公衆衛生大学院的な統計理論は学びませんが、臨床家としてデーターを集めて、解析して有意差や各種グラフをソフトで作成し、発表するという流れに慣れて独り立ちさせる為のトレーニングであると思いました。(一年上のH先輩も言ってましたので、やはりそうなのだと思います)。

欠点は、間違いなく期間が非常に短い事。

タイのレジデントが勤務しながら2年かけて卒業することを考えて、フルタイムとは言え5ヶ月に凝集されているので中々の噛みごたえのあるカリキュラムです。勿論、臨床から離れることは無く、週3回は今これをしながら午前のコマでベッドサイドティーチングがあります。例年、筆記試験、OSCE、顕微鏡的スポット試験なども、日本人医師には相当のストレスフルらしく、英語力があっても大変だとの事です(私はまだ知りません)

という感じで、あとはPCに打ち込む作業を450例やれば、苦行の生活からは開放されるかと思っています。

この32日間の疲弊していく様子。

100症例目

200症例目

300症例目

400症例目

500症例目

600症例目

冒頭の写真が700−800症例、NSステーションにて美人のNsにとってもらう。

 

そして、先ほどの1000症例目到達・・・。

 

今日は、久々に自宅でビールを飲めました。ゆっくり寝ます。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


精神と時の部屋に篭っています・・MCTM Day 56

2015-11-27 00:00:42 | Mahidol University編

皆様こんにちわ。

 

全くといっていいほど、自分の為の時間が取れず。やりたい勉強や、やらなければ行けない書類や論文、執筆業も、う◯こ詰まりの便秘症状となっております。

来年以降こられる方の為に、現在何をしているかを暴露すると、このような小部屋に籠城しカルテからのデータ採集を行っております。

 

Case record formといってデーターを写しとる用紙の量がただでさえ同期で一番多い上に、さらに拍車をかけて合計1400症例を集めなければなりません。

そう、てんで、全く、終わりません。

早朝から毎日24時まで食事以外は全部この単純作業に当てても、中継地点すらみえません。これが1月までずっと続くかと思うと吐き気がします。

 

こんな状況なんか昔あったなぁと振り返ると、自分が育った研修病院の一年目の時と同じ感じの生活をしております。

さらに一緒に700例を集めてくれているバングラディッシュからの同期が火の玉のように叱咤激励(オラオラ)してくるHard workerで、私は情熱で完全に負けているので、彼女の言いなりになってひたすら単純作業を繰り返しております。

 

ただあの寝れない当直が続く研修の時期と較べて気が楽なのは、誰も生死に関わらず、全部自分でケツを拭けば良いだけなので、ある意味精神的に楽ではあります。だって自分でやりたいと決めた事なので。

幸せの閾値が極めて低くくなるので、若いころにドキヅイ研修受けていて、ホント良かったなぁ~と心から思います。

 

実は悪いことだけでも無くて、これだけの症例を事細かくデーター採取していると、連日のラボの動き(CBCと肝機能のみ)から直感でコレはコノ疾患だろう、などと1秒で分かるように

なりました。System1 Diagnosisが発動しやすい経験値を一つ一つ積んでいる事と、色々なデーターを見ている内に天からアイデアが色々降って来るので、無駄なデーター採取だと当初感じましたが

コレはかなり、いや意外と良い事もありそうです。(早朝から深夜まで休みなく土日もやることでやっと300に到達・・・)

日本に帰ったら、アノ仕事やコノ仕事をしたい。そんな感じで、やりたいことや課題はどんどん増え続ける今日この頃です。

 

ということで、間違いなく、しばらくご無沙汰になると思いますが、変わらず元気にやっていきます。

 

 

 

 

 

 


回診の風景 マラリア MCTM Day45

2015-11-15 00:07:45 | Mahidol University編

皆様こんにちわ。

MCTMはDTMHの時よりもMorning ward roundは多いです。

DTMHコースにて基本的な知識は能動的かつ受動的に習った事になっていますので、一つの症例に対する吸収がやはり良いと思います。

4月当初は全くその余裕が無くて、回りの医師の発言が全く聞き取れなかったり、そもそも内容や単語を全く知らなかったり・・

(ある程度、マラリア、デング熱、リケッチア感染症、寄生虫感染症などに経験がある方は別かもしれませんが)

そんなこんなで、慣れてきて惰性になってきた頃にトラベルメディシンでこの国のエース(だと思われます)のWacharapon先生から実際に先週来ていた患者さん達で

自分たちで考えて、自分たちで診断して、治療も決めて下さいという模擬訓練がありました。

患者はタイ北部のエリートサラリーマン達で6人でナイジェリアに水道開発のビジネスで2ヶ月前から出張、前地で一人発熱性疾患になって診断はわからなかったが死亡したので、緊急帰国して診て欲しいとの内容でした。その内二人は既に赴任地でマラリアを疑われて治療されたけれども、どの薬剤がどの量をどの期間使われたかも不明であるといった設定です。(でも、これ実症例です)

できるかぎりの病歴と身体所見の情報を合わせて、その地域の疫学をCDCのサイトと文献等から高速で調べる必要があります。

最終的にその地域で考えられる鑑別診断を出来るだけ早く想起しなければなりません。

また、唯一の手がかりはデジタルカメラです。これは偶々撮られていた薬の写真です。製薬会社とその薬が実在し、利益目的で作られていないFake drugでは無いことをホームページで確認。

またマラリアであったとしたら、薬剤耐性の問題は、Pf (日本語では熱帯熱マラリアの事です➠つまり重症化して死にます)の割合はどうかをCDCのサイトから調べます。

(CDCによれば、何とPf率 観測上は100%との事:軽症者は受診していない可能性や複数回感染しているので自然治癒もあるか?)



確かに末梢血スメアでは見事なdouble infection, ring from, normal size RBCからまぁ何となくPfである事は間違いなさそうではありますが、迅速抗原テストなどを使って確認も出来ます。

結果Pfと診断したのであれば、薬剤耐性がどうかを判断して治療を考慮する、もしくは治療が必要でないかを判断するなどなどです。

まぁこんな感じで色々と考えます。やはり、自分は臨床が好きなので、それ以外の鑑別や検査もあぁだこうだと幅広く考えてしまいますが、それはもう育った環境がそうなので変えようがありません。

結論からいって疫学が変わると自国での自分の経験が役に立たなくなります

だから可能なかぎりの有用な情報・リソースをできるかぎり早く手に入れる訓練が必要になると思われます。

統計学的にいって、どんな検査の陽性的中率と陰性的中率は有病率に大きく依存して変動するように、自分の診断学的なそれらも大きく変動してしまう為かと思いました。

マラリアを有するタイ国からのアフリカへの旅行者も黄熱病の予防注射は打つがマラリア予防までは意識しない人が多いとの事でした。

しいては熱帯病に縁が薄い日本、さらにグッと意識は低くなるかと思いますが、実際にはいかがなものなのでしょうか?一度調べて見たいです。

 


 

さて、この日はハウスメイトのドイツ人医師が誕生日でしたので皆でお祝いをしました。私の指導医のDr Supat先生も一緒に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


結核性胸膜炎に対するADA MCTM Day 39

2015-11-09 17:35:23 | Mahidol University編

 

皆様こんにちわ。
 
なんだかんだで慌ただしく、毎日が過ぎていっております。
ちょっとホームステイに古い友人が2週間程タイにきておりますので、自分の勉強と仕事と課題のペースが乱れております。
週末はホアヒンビーチへ友人と家族でレンタカーを借りて遠出しておりました。
その前は、チェンマイに、その前はパタヤにと色々とタイの文化や地理の事も勉強しております
(折角、タイにいるのにタイの勉強をしないのは勿体ないと、最近考え方が変わりました、良い意味で。)
 
さて、MCTMは月・水・金の朝から回診という名の口頭試問があります。(DTMHでは単なる参加でしたが、MCTMでは発言や質問が点数になるようです➠最近は全く気にしておりません:日本人は無視して楽しんで良いと思います)
 
今回の患者さんは40代男性(公務員)で5日前から続く高熱と、倦怠感、筋肉痛と関節痛、Retro orbital painで受診。
身体所見ではややるい痩と男性にしては線が細い気がする程度。右肺野の呼吸音の減弱と打診で濁音がありました。
 
精査の結果、NS1抗原陽性とHIVスクリーニング陽性との事。CD4はまだ不明(ダブルかよ・・)
さらに右大量胸水に対して調べている段階。穿刺したら、LDH1800のLight criteriaでは滲出性の胸水。
しかもデング感染による血小板の2万台までの低下があり。
 
Discussionのポイントは、どのように胸水を調べるか?という基本的な事でしたが。。
結核性胸膜炎のスクリーニングで、他国はADAをあまり使い慣れていないらしく、ここは日本人医師の出番。
カットオフ値の見方とどの様な場合に偽陽性になるかについて話すと喜んでいました。
ともあれHIVの罹患率を考慮すると、この街では幅広い鑑別が必要です。HIV患者の胸水精査になると何でもありですから。
 
ADAはまぁまぁ役に立つ
 Measurement of adenosine deaminase (ADA) may be helpful with a differential diagnosis of malignant versus tuberculous pleurisy when an exudative effusion is lymphocytic, but initial cytology and smear and culture for tuberculosis are negative.
 
Cut off値は覚えやすい所で50としております。特にリンパ球が多いとさらに、っぽくなります。
 The level of ADA is typically greater than 35 to50 U/L in tuberculous pleural effusions. Specificity is increased when the lymphocyte to neutrophil ratio is greater than 0.75 and the ADA is greater than 50 U/L. False negatives and positive ADA results do occur, so ADA results need to be considered in the context of other features of the patient’s clinical presentation. ADA testing may be more valuable for ruling in the diagnosis of tuberculous pleurisy in geographic locations with high prevalence of tuberculosis, although the negative predictive value of ADA testing remains high in lower tuberculosis prevalence regions. Some studies suggest greater diagnostic value of pleural fluid interferon gamma in differentiating malignant from tuberculous lymphocytic exudates, but the lower cost and ready availability has promoted the use of ADA testing in this setting.
 
Combined use of pleural adenosine deaminase with lymphocyte/neutrophil ratio. Increased specificity for the diagnosis of tuberculous pleuritis. Burgess LJ, Maritz FJ, Le Roux I, Taljaard JJ. Chest. 1996;109(2):414.
 
 
という事で、当たり前の検査を当たり前に好きにできる日本の良さも認識した今日この頃でした。

DTMH疾患 その3)Yaw(いちご腫)

2015-11-03 00:34:43 | Mahidol University編
本日は、スーパーイケメン Germany GuyのハウスメイトによるRCT論文の発表だったので、これを記載しておきます。
 

Yaw ⇛いちご腫:Treponema pallidum subsp pertenueによる非性病性のトレポネーマによる皮膚潰瘍

Bejel⇛ベェジェル:Treponoema. pallidum subsp endemicum主にアフリカ南部、中東、東南アジアで見られる非性病性のの事。
Pinta⇛ピンタ(熱帯白斑性皮膚病) Treaponema carateum
 
これらは形態学的にも病態的にも性感染症である梅毒(Treponema pallidum subsp pallidum)とは鑑別不可能であるけれども、地理的な分布や、年齢、ヒストリーで鑑別する。遺伝子レベルではごく少量の違いがあるらしい。
 
WHOとUNICEFのキャンペーンによって、1952年には全世界で5000万人が感染していたけれども、その12年後には250万にまで撲滅。ただ、1970年代になってから再振興の兆しがみられて、各地でくすぶっている状態。
 
特にYawは現在でも、問題であり、熱帯地域で、不衛生でごちゃごちゃした人が多いエリアに多く、ミクロネシアなどにも見られる。
 
Yaw とBejelは子供の病気で70%は15未満である一方でPintaは大人の病気。皮膚ー皮膚で感染や、特に引っかき傷などあると感染しやすい。
これらの中で、日本で今後輸入感染症として見る可能性がある(多分少ない)Yawでしょうか。ざっくり言うと皆似ていて?です。進行すると皮膚だけでなく、骨髄炎や軟骨炎、腱などに感染が波及する。
 
これらのトレポネーマの潜伏期間は平均21日(Range 9−90日だそうです)
 
皮膚の所見からの鑑別は下記の様です。

the primary lesion of yaws may be mistaken for cutaneous leishmaniasis, tropical ulcer,pyoderma, Haemophilus ducreyi 

 papulosquamous secondary lesions of yaws must be distinguished from common disorders such as psoriasis, dermatophytosis, scabies, syphilis.  

血清学的診断は梅毒に準じます
 
The serological tests are the same as those used to diagnose syphilis. Existing tests cannot differentiate between endemic treponematoses and syphilis. 
勿論、梅毒と見分けは尽きません。(ここばポイントでしょうね)
 
治療は、長時間作用型ペニシリンG(Penicillin G benzathine)筋注 大人は120万U、子供60万Uらしいですが、日本では梅毒に準じてだと思います。
 
さて、このLancetからの論文では、アジスロマイシン30mg/kg(最大2g po) 一発内服が、筋注毎日と変わらず効果あり非劣性を示しております。これにより、子供が注射を嫌がって、ドロップアウトしたり、しなくなるのではないかとの事です。たしかに毎日注射されるより、非常に便利ですね。
 
Single-dose azithromycin versus benzathine benzylpenicillin for treatment of yaws in children in Papua New Guinea: an open-label, non-inferiority, randomised trial. MitjàO, et al. Lancet. 2012 Jan;379(9813):342-7. Epub 2012 Jan 11.
 
 
 
 
 
 
  

DTMH疾患 その2)Immune reconstitution inflammatory syndrome (免疫再構築症候群)

2015-11-02 13:25:16 | Mahidol University編
Immune reconstitution inflammatory syndrome (免疫再構築症候群)
 
本日の回診のディスカッションのポイントでした。
20代男性、1ヶ月以上続く1日4回程度の軟便から水様便、20日程度続くSpike feverで入院。体重減少は3kg/月。診断は、HIVが陽性だけどCD4値はまだ出ていない。症状の原因の鑑別は何で、君なら何の検査を行い、治療はどうする?というものでした。ここはDTMHのHIV試験のヤマです。
 
CD4低かったら、間髪入れずにHAARTをぶっ放すと答えでもしたら「バカモンっ」と怒られます。
多分、日和見感染の診断と治療が優先でHIVに関してはWait and seeですね。というのが模範解答です。
 
今日はコレを記載しておきます。免疫再構築症候群(IRIS)とは何ですか?
 
日和見感染で来院した新規HIV(+)低CD4の患者に対してHAART療法を優先してしまう事で、免疫機能が復活して激しい全身性の炎症症状を引き起こす事と言えば分かりやすいかもしれません。
例えば、ヘロヘロになっていた兵士達が敵軍の侵入に気づいていなくて寝ていました。兵士達が元気になって気づいてみたらいつのまにか敵軍に占拠されていた為に、慌ててて総攻撃が開始、逆に天守閣が炎上、城は壊滅。そんな感じでしょう。
どんな疾患がなりやすいかはこのような疾患です。
 
Mycobacterium tuberculosis 
Mycobacterium avium complex
Cytomegalovirus 
Cryptococcus
Pneumocystis
Herpes simplex
Hepatitis B
Human herpes virus 8 (associated with Kaposi sarcoma)
 
IRISの国際的な定義は2015年現在ありませんが、一般的には
 
・CD4低値のAIDSの発症がある事(多くは<100cells/micro lであるが、TB感染の時は例外で>200で起こしうる)
・ARTが効果ある。
・勿論、薬剤耐性菌で無いこと、細菌感染を合併していない事、薬剤アレルギー(これが問題になります)が無いこと、内服をちゃんとしている事、吸収不良の問題とか無いことちゃんと評価して確認する。
・炎症状態の存在
・HAARTを開始してからの症状の出現との関連性。
 
臨床的に上記の感染症が多彩な症状を起こしうる事は想像に難しくないはずで、現場では丁寧なPhysical+Taking historyだけでは対応できない事が多い為、どうしても検査に検査を重ねたSystem2的(詰将棋的な)思考法が必要です。
 
まずは日和見感染に対してどの部位にどの病原・原因があるかを探しだし、そちらを治療する事を最優先にした後で、HIV治療を開始します。とある研究では薬剤開始からの中央値は48日(29-99日)との事です。
 
 
Immune reconstitution inflammatory syndrome: more answers, more questions.
J Antimicrob Chemother. 2006;57(2):167.
 
Incidence and risk factors for the immune reconstitution inflammatory syndrome in HIV patients in South Africa: a prospective study. Murdoch DM, et al. AIDS. 2008;22(5):601.
 
 
話は変わりますが、先月日本に帰った時に羽田で見つけたのですが、ここ最近は日本でもSIMフリーに対する認識が一般的になってきているようですね。以前は、かなり外国人旅行者にとって不便であったWifi環境、外国人向けの携帯電話も、今や海外旅行者用のSIMを自販機で売っている時代になってきました。
2年前にタイに来た時に殆どのコンビニでSIMの番号を自由に手に入れられ、簡単に携帯を持てる事に驚いたのですが、日本もようやく独占的なマーケティングから変わってきた兆しが見えます。
 
 

MCTMの授業内容と取得単位について MCTM Day 25-30

2015-10-31 09:57:16 | Mahidol University編

皆様こんにちわ。

来年から来られる方の為に、MCTMの経験しつつある全容を少しずつ記載していこうと思っております。今年から、色々と大きく変わり変更点が多数あるために来年以降はあまり変化がないのではとウワされております。

Proposalの事は既に記載した通りの、自己闘争の期間があるのですがこの過程で今までの授業を中心とした教育とは全く異なるものであると気付きます(焦ります)。範囲があるテストの為に勉強するのでは無く、自分が立てた仮説の為に現段階までの最新の研究とクリニカルクェスチョンとのギャップを探してどのようにすれば探れるかを調べる勉強へ、いつの間にか移行しました。

残念ながら私は大学病院で勤務した経験が無いために、日本との比較はできませんが、少なくとも私の臨床家としの道を開いてくれた教育病院では接することの無かった領域ですのでやはり学ぶチャンスを得れて良かったと思っています。

大学院の授業の形式は非常に良く考えられているようで、今年からGoogle Classというアプリで全ての情報と日程連絡、課題と応答を瞬時にPCやスマホでやりとりしあうという便利なものを採用したようです。またコースディレクターと総務職員とLINEで24時間いつでもつながってます。

 DTMHからの直接進学組では、DTMHの選択期間に重要な医療統計やTravel medicine等の選択単位を既に取得しているので、授業は選択授業で3単位、必修でThematic paper 6単位となります。

TMCD 504 Clinical Apprenticeship 6U➠欠席不可、病欠すら診断書が必要という厳しい参加義務があり、月・水・金の朝8時からディスカッション形式で回診をします。評価がなんと、その時の質疑応答と的確さと発言の多さで点数が毎回貼りだされます・・・(苦笑)。

TMCD 527 Clinical Case teaching 3U➠これは週1回、毎回各専門家がレクチャーをしにきます。最近は、症例形式や一発診断クイズ50問試験などが多く楽しいです。

Critical Appraisal ➠これも発表です。一週間前までに指導医と決めた論文を(RCTやら、ケースコントロールやら、何でも可)を全員に配布して、クラスメートの半分がその論文に対して批判点を持ちより、議論するというものです。当日は45分以内に発表と議論、15分で自分の見解をまとめるという内容です。ディスカッションのポイントは、サンプルサイズの計算が違う、Inclusion criteria がイケてない、Out comeの設定が悪いなど、一つの発言や発言回数が1つずつ8−13人のスタッフ陣にアンケート集計用紙が配られており、この学生は的を得ていた、もしくは発言が少ない、もしくは論点が違うなどで加点減点されるという厳しい授業で皆のストレスの原因の様です。私は一番最初にこれを当てられたので、嫌だったのですが嫌なことは最初に終わった方が良いかとも思います。

TMID 510 Statistics for clical research 3U ➠必修 DTMH選択期間に同時に単位を取らなければなりません。

TMCD 503 Introduction to clinical research 1U➠必修 DTMH選択期間に同時に単位を取らなければなりません。

TMCD 521 Literature Review 2U 選択 ➠自分の好きな論文を一つ選びそれを40分で発表して、質疑応答する。

TMCD 522Clinical practice in Tropical medicine 3U ➠必修 DTMH選択期間に同時に単位を取ります。

TMCD 524 Intersting case report 1U ➠選択 自分の好きなケースレポートを一つ選び、それを40分で発表する。

TMCD 529 Travel MedicineⅡ 2U ➠選択    DTMH選択期間に同時に単位を取ります。

TMCD 531 Troical clinical pathology 1U ➠選択 私の指導医が行いますが、病理出身の血液内科医が色々とオモローレクチャーで人気です。

TMCD 533 Specail clinics in Tropical medicine 1U ➠選択 不明

TMCD 534Practical Statistics for Clinical Research 1U ➠選択 追加のSPSS実技です。

といった感じになります。メインは回診と論文批評会ですね。11月半ばからはデーター集めに奔走することになり。各地方病院出向組とはしばしお別れです。私は絶対にHospital for Tropical diseaseでバンコクにいたい条件があった為に、我儘をいって残らしてもらいます。

最近はリズムも掴めてきて、頻繁にお洒落な喫茶店に友達といったり一人でいくことが多くなりました。

ここで良くミャンマー、カンボジア、バングラディッシュの医師と話していて、日本という国が如何に先の大戦時に脅威の国であったか、かといって現在では如何に好意的に見られているか(どうもNGOで日本から支援でくる方々に非常に好意を持っている様です)。各国の政治の透明性の違い、テロや宗教の違いから起こる紛争、日本の以上に高い妊娠中絶率と各国の違法の中絶による敗血症での死亡の多さ。色々な事を彼らと話す事で、全くしらない世界が本当にある(自分が知らないだけ)という事がわかり、日々是学びの毎日です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


DTMH疾患 その1)ヒストプラズマ症(Histoplasmosis)

2015-10-29 13:58:16 | Mahidol University編

ヒストプラズマ症(Histoplasmosis)

真菌感染症の一種で、鳥類やコウモリ等の糞に汚染された土壌の中に潜んでいる。世界の大陸の多くで見られており、アジアでは文献1)より 
Certain areas of the Asia-Pacific region are endemic for histoplasmosis; how- ever, the ecologic niche for this infection remains unclear. Penicilliosis is restricted to Southeast and Eastern Asia, whereas sporotrichosis is encountered in tropical areas of the Asia-Pacific region linked to environmental reservoirs distinct from those seen in the Western world.
他にPenicilliosis、sporotrichosis等の鑑別があがったりがあるので、今後日本での疫学をしらべてみたい。
 
病原性は乏しく、ほとんどの患者は気道内に芽胞を吸い込んだとして発症せず、したとしても1W-1M程度で自然軽快する。潜伏期間は3日から17日程度らしい。AIDSや免疫抑制剤使用者にかぎって言えば肺から他臓器へと浸潤して重症化することも。
 
症状は
  • Fever
  • Cough
  • Fatigue (extreme tiredness)
  • Chills
  • Headache
  • Chest pain
  • Body achec
Acute febrile illness 様のとりとめのない症状。
 
診断は文献2)より
ヒストプラズマ抗原を尿中・血清が感度高く有用とされるが、
抗体価測定や培養、鏡検もされる(Mahidolでは可能であれば顕微鏡で見て診断していた)
 
抗原検査: Enzyme immunoassay (EIA) is typically performed on urine and/or serum, but can also be used on cerebrospinal fluid or bronchoalveolar lavage fluid. Sensitivity is generally higher in urine than in serum, particularly for HIV-infected persons with disseminated histoplasmosis.
 
抗体検査: だいたい免疫不全者がかかる病気だし、そのような患者においては2−6週間程度も抗体価が上がってくるのにかかるので急性ヒストプラズマ症の診断には全く有用でない。
 
Immunodiffusion (ID): Tests for the presence of H (indicates chronic or severe acute infection) and M (develops within weeks of acute infection and can persist for months to years after the infection has resolved) precipitin bands; ~80% sensitivity.
 
Complement Fixation (CF): Complement-fixing antibodies may take up to 6 weeks to appear after infection. CF is more sensitive but less specific than immunodiffusion.
 
Culture: 6 weeks を要し、急性診断には有用でない。超重症時には有用となることも。
 
直接鏡検: for detection of budding yeast in tissue or respiratory secretions; low sensitivity.
 
 
PCR : PCR for detection of Histoplasma directly from clinical specimens is still experimental, but promising.
 
【治療】基本不要。ただ、免疫不全で重症化している場合
 
severe acute pulmonary histoplasmosis
chronic pulmonary histoplasmosis
disseminated histoplasmosis
central nervous system (CNS) histoplasmosis
等には
 
amphotericin B や itraconazole を使用する。
 

1) Chakrabarti A, Slavin MA. Endemic fungal infections in the Asia-Pacific region. Med Mycol. 2011 May;49(4):337-44.

2) Kauffman CA. Histoplasmosis: a clinical and laboratory update. Clin Microbiol Rev. 2007 Jan;20(1):115-32.


組織が巨大すぎて複雑です MCTM Day 27

2015-10-29 02:28:30 | Mahidol University編

 

皆様こんにちわ。

もっぱら、最近は自分の中の課題をこなす為に夜な夜な働いております。といってもMCTM自体の課題はProposalを提出した後の二週間はさほどたいした事がないので、土日を利用して2週連続でチェンマイに旅行したり、パタヤに旅行したりと家族サービスに勤しんでおります。そもそも自分が勉強できるのも家族の支えあってですから。感謝です。

 

さて、最近になってようやくこのMahidolの組織構図がわかってきました。何故かというと、我々のいるキャンパスを取り囲むかの様に、あまりにも巨大な病院が乱立しているのでわからなかったのです。名前もわかりにくく固有名詞や地名がタイ語でついているために、一体何の病院なのか通りながら不思議におもっていました。日本で言う◯◯大学付属病院って言うわけでも無いし、あまりに周囲に病院が一極集中しすぎていて。

 

遠くはなれたシリラート病院(2000床)がおそらく日本で言うマヒドン大学付属の一般総合病院であって、我々の病院Hospital for Tropical diseaseは熱帯病だけを扱う超狭い領域の300床の専門病院で、その周囲には700床小児科専門病院や皮膚科専門病院、Critical care 専門病院等が隣の敷地にずらっと並んでいます。自分が把握できるのは臨床熱帯医学大学院に関係する極わずかな一部の先生達やスタッフだけであって、その背後には計り知れない巨大な組織が存在しております。

 

良く、バンコクの医療はどうですか?と質問されて返答に困るのですが。

どうですかと言われても・・あまり日本の熱心な病院と変わりませんとしか言いようが無いのですが、CTやMRI、PETなどの高額医療機器のアクセスが悪い事を除けば(どちらかというと日本だけが世界で群を抜いております)、医師達の診療レベルはかなりの高水準では無いかと感じています。というかUp to dateやDynamed等の二次資料的に明らかに外れた診療をしている人を私は見た事がありません。

で調べてたみたら納得しました。

私が以前働いていた病院もJCI(国際標準医療のレベルを持っている標章みたいなものです)に認可を受ける為に病院の総力を挙げて必死で取り組んだ記憶があるのですが、タイは既に40病院以上も認可されているようです。どうりで納得です。

日本の様に、小中規模の病院が多数乱立している訳ではないので、地域の中核病院や裕福な私立病院はおおむね認定されているのではないかと思います。勿論、英語を中心した最新の医療情報についてのアクセスが良いので、その点は完全に負けて悔しい感がありますが。。

 

日本語のサイトで歴史が乗っていたので、下記抜粋して乗せておきます。

写真は関係無いですが、昨日見たアメーバー膿瘍の穿刺液!まさにアンチョビソース様とはこの事ですね!!

そして偶々、本日の回診カンファの患者は肝膿瘍でした。

 

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タイ・マヒドン大学附属シリラート病院は、1888年創立された、120年以上の伝統を持つタイで最初にできた医学校である。チュラロンコン王(ラーマ5世)により、タイの国民のために「(タイ)王国の病院」をモットーとして設立され、2000床以上あるシリラート病院は毎年250人以上の医学部卒業生を送り出しています。マヒドン大学とは1889年チュラロンコーン大王 (ラマ5世)によって創立されたマヒドン大学はタイ国で最も古い教育機関の一つであり、1万9千人以上の学生が在籍し400以上の大学のプログラム をサポートしている。また2,600名以上の教授陣を擁し、学生と教授の比率は1対8である。その比率はタイの高等教育研究機関の中では、最高の数値である。

120年以上にわたってマヒドン大学は、多くの変化と進歩をとげてきた。現在は16の学部、8つの研究所、3つの病院、そして6つの単科大学を持っており、その卒業生を優秀な人材としてタイ各界に送り出している。マヒドン大学医学部出身の優秀な医師は枚挙にいとまがないが、現在のタイ保健省の大臣、ピヤサゴン サゴンサッタヤートーン氏、前大臣のラシャタ ラシャタナーウィン氏共にマヒドン大学医学部の出身である。

また日本人に関係の深い部分では現在の「国境なき医師団日本」の新会長、加藤寛幸氏がマヒドン大学熱帯医学校において熱帯医学ディプロマを取得されているというニュースは記憶に新しいところである。

タイの医療水準は、世界的に見ても非常に高いレベルにあります。日本と比較しても同等かそれ以上の設備、技術を誇る医療機関が多数存在します。

タイの医療はアメリカの医療にならう世界的な医療レベルの高さを保証するJCI (Joint Commission International) の認定を受けた医療機関の数は44にのぼり、日本の13と比較しても、その医療水準の高さがうかがえます。

医師の多くは英語を話し、親しみやすい国民性と、宗教的にも大きな問題を抱えていないことから、世界各国から医療ツーリズムに訪れる患者が後を絶ちません。


研究計画書〆切ギリギリで間に合いました・・MCTM Day16

2015-10-17 01:13:39 | Mahidol University編
無事にResearch proposalを〆切ギリギリ30分前に提出しました。私の場合は、昨年の先輩が極めて優秀であった為に、また今年も日本人に当てておけ的な極めて軽いノリでCritical apprasal(選ばれた論文を皆で1時間半で批評する実技テスト)の授業の一発目も平行して同時に課せられたりとこの1ヶ月まさに寝食忘れて非常にストレスフルでした。深夜から早朝にかけて行われる課題の山に対して、妻に毎日励まされ心から助けられました。
 
 MCTMコースは大変だ大変だ~という前情報を聞いておりましたので、覚悟して望みはましたが、確かに経験したことの無い負荷がかかる1ヶ月でした。DTMHの時の辛さと比較すると先輩が言っていたように確かに、子猫とライオン程違うような気もします。。。(これは自らに課した目的で違うのかと思います)
 
しかしまぁ、ただ辛いだけでも無くて、自分が学びたかった内容の授業だったり、回診の質疑応答で日々成長している自分を客観的に認識すると、それなりに学びの喜びがあってこの時点では個人的には満足しております。
 
さて、今後の方の為にMCTMの情報も記載しておこうかと思います。
MCTM生は8月初旬から10月までに自分のテーマ決定と、現段階でのClinical questionとのGap探し、文献集め論文の読破を行ったうえで、下記のような40ページを超えるResearch proposalとEthical committeeに提出する山程の書類を作成しなければなりません。
 
その決められた内容に対する(フォントや、サイズ、用紙の幅や、各指導医や教授陣からのサイン)細かい規定が大変でした。
また、同時にDefenseという、指導医達の前で研究計画に対する発表を30分で行い、質疑応答でpassしないと研究させてもらえません。
 
私のテーマはココでは内緒ですが、その広さから読む文献の量も、Gap探しも周囲の医師と較べて大変苦労しましたが、今となってはその努力のおかげで作業の高速化が可能になった気がします(丁度バットの素振りで、体幹が鍛えられる感じでしょうか)笑
 
その内容の広さからも、血液内科/臨床熱帯医学の先生が私のmain-adviserで、Co-adviserには腎臓内科/臨床熱帯医学、統計専門家がチームで指導して頂いていました。
 
口述試験では本番で自分の統計の指導医から受けた質問の意味が全くわからず(多分、彼女の英語がわからず・・トホホ)、まさかの身内からアッタクをレシーブできないという恥ずかしい思いをしました。
 
まぁ、色々といい経験をさせてもらっていると思い何事にも感謝です。
 
さて、そろそろ調子もつかめて来たようなので、早速提出後に依頼された翻訳の仕事もしたり、雑誌の文章も書いたりしております。
バンコクでのこの貴重な生活は後半年しかない・いや半年もあると考えて感謝の心で楽しんで行こうかと思います。