和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

千年の時空と浦島太郎。

2023-04-22 | 古典
本は買えど、本を読まず。読まないけれど、
それでも、とりあえず本はとって置きます。

はい。本棚にちょうど読み頃な本がある。
『お伽草子』(ちくま文庫・1991年)。
うん。ここは目次を紹介

  文正草子   福永武彦訳
  鉢かづき   永井龍男訳
  物くさ太郎  円地文子訳
  蛤の草紙   円地文子訳
  梵天国    円地文子訳
  さいき    円地文子訳
  浦島太郎   福永武彦訳
  酒呑童子   永井龍男訳
  福冨長者物語 福永武彦訳
  あきみち   円地文子訳
  熊野の御本地のそうし  永井龍男訳
  三人法師   谷崎潤一郎訳
  秋夜長物語  永井龍男訳


どうやら、今は古本でしか入手できなさそうです。
それはそうと、ここは最後の解説の織田正吉氏の文を紹介。

「・・・浦島説話は長い生命を持つ伝承の一つである。
 文献に現れたものでは『丹後国風土記』『日本書紀』がもっとも古く、
『万葉集』の高橋虫麻呂の長歌などにも見えるから、少なくとも
 千二三百年の生命を持つことになる。・・・   」 (p328)

「・・『お伽草子』はいわゆるお伽話の草子ではない。
 それは室町時代から江戸時代初期にかけて、
 戦乱の時代を背景に生まれた無数の物語群のことである。・・」(p329)

この解説は、いろんなことが詰まっているのですが、
飛び越して、解説の最後の場面を引用しておきます。

「・・短時間に要領よく読者の感情を刺激する仕掛けは、
 現在のテレビ、劇画に代わるものと見てよい。

 表現が紋切型で描写がはなはだ物足りないのは、
 相当部分が絵でおぎなわれているためだと思わなければならない。

 物語のほとんどはご都合主義、出世する者はあれよあれよという
 うちに出世する。主人公の性格、知能の程度など前後矛盾してこだわらず、
 現代の小説感覚からすれば幼稚きわまるものだが、

 そこで語られる話は心理の深層に潜むさまざまな欲望や情念、恐怖、
 復讐、残忍、笑いなども含めてあらゆる感情を刺激することにのみ
 奉仕している。それは近代の小説がリアリズムの陥穽にはまって
 衰弱し、どこかに置き忘れてきた部分である。

 時間の篩(ふるい)にかけられ、
 無数の小説が死屍累々の惨状を呈しても、
 浦島は千年を隔ててしぶとく生き残る。

 この現象を何と見ると問われて、
 お伽話と小説は違いますというのは腰が引けている。
 玉手箱の中に入っているのは、案外、物語のおもしろさとは何か
 という現代人への素朴な質問状なのかも知れない。   」(p333)



ちなみに、
織田正吉著「日本のユーモア2 古典・説話篇」(筑摩書房・1987年)に、
『御伽草子』(p170~187)の箇所がありました。





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4 コメント

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昔ばなし (きさら)
2023-04-23 09:39:37
浦島太郎の話は伝承で
竹取物語は創作なのでしょうか?
私は 竹取物語のストーリーは
なんだか現代的だなあと思っています。
浦島太郎さん由来の海岸は 全国各地にありますが
かぐや姫の発見された竹やぶは ないですね(笑)
「日本古典読本」という 古典作品のダイジェスト版のような本を持っています。
ちょっと調べる時役に立っています。
御伽草子は出てなくて残念です。
返信する
おはようございます。 (和田浦海岸)
2023-04-23 10:48:55
おはようございます。きさらさん。
コメントをありがとうございます。

竹取物語が定番古典ランチならば、
御伽草子、まかない食でしょうか。
最近まかない食は注目されてます。
まかない食ならメニューにはない。

かぐや姫が発見された竹やぶは見当たらなくても、
お爺さん、お婆さんは、どこにでもいらっしゃる。

ネットで読んだのですが、タケノコ採りツアー
というのがあって、参加者は皆さん高齢ツアー。

なんてなことが思い浮かびました。
はい。今日もブログは御伽草子で。
返信する
Unknown (1948219suisen)
2023-04-23 17:27:53
竹取物語のもとになったお話ですけれども、これは一応言い伝えですけれども、大阪府能勢町に名月峠という峠に祀られている名月姫という姫の物語が、かぐや姫のもとになったと言われてます。

http://mdrokkor.sakura.ne.jp/text/ama/meigetu.htm

このサイトにはかぐや姫との関連は書かれていませんが、書かれているサイトも探せばあると思います。真偽の程は定かではありませんが、ご参考までに。
返信する
こんにちは。 (和田浦海岸)
2023-04-24 14:45:46
こんにちは。水仙さん。
コメントありがとうございます。

物語の成り立ちの枝葉が繁るのは、
枝刈り機で一掃したくなります(笑)。

ご連絡いたみいります。
楽しく拝見させて頂きました。
ありがとうございました。
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