和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

海溝と海図。

2023-12-04 | 京都
テレビ天気予報で、日本全図が画面に表示されます。たしか、
東日本大震災の後、その画面に海溝が示されるようになった。
以来、日本の沿岸の海中に、黒い深淵があると毎日実感する。

吉田光邦著「京のちゃあと」(朝日新聞社・昭和51年)の
あとがきは、こうはじまっておりました。

「 チャートとは海図である。海図をご存知だろうか。
  それは陸地については、海上の船から目標になるような
  山、岬、立木などが描かれるにすぎぬ。
  そして等高線は海についてはくわしく描かれ、
  海中の岩、岩礁のたぐいも細密である。

  陸地を精細に描いたマップと海にくわしいチャート、
  その対比はいえばネガとポジの関係にある。

  わたしが描こうとしたのはマップではなかった。

  マップは京都を客観視しうる立場の人びとによって、
  すでにいくらも書かれている。しかし京に住むものならば、
  そのマップと対照的に視えるものがいくつもある。
  そこから描きだしてみたチャート・・・      」(p283)


このあとがきに写真家・遠藤正さんのことが書かれておりました。

「 半年をこえた連載は忙しかったけれども、
  わたしの30年をこえる京での生活をふりかえってみるいい機会であった。
 
  写真の遠藤正さんもずいぶん熱心に、はじめての京都を
  縦横にとらえられた。テーマをめぐってたえず議論を
  遠藤さんとくりかえした。いい思い出である。・・   」(p284)

うん。この『京のちゃあと』はのちに、
朝日選書215の吉田光邦著『京都往来』(1982年)と題名をかえて出版。
朝日選書には、残念ながら遠藤正さんの写真は載っておりませんでした。

はい。私はどちらの本文も読んでおりません。おりませんが、
単行本に載る45枚の遠藤正さんの写真はめくっておりました。
その印象は鮮やかでした。

ここでは一点の写真を紹介。『節分の日の京大前のにぎわい』とあります。
奥に大学の時計台がみえます。時計下に「竹本処分」と少し文字がみえる。
前景は道路に面してテキヤの屋台。たこやき・とうもろこしと横幕がみえ、
瀬戸物屋も出ているようです。学内からは高々と大学のサークルの立看板
「OPEN SKI 場所信州戸狩・・・」「京大スキーフレンズ」などがある。

さて道路の人ごみをけちらすように、学生運動でしょうか、
赤に白い色がまじった旗を掲げ、赤ヘルメット・黒ヘルメットに
タオルで鼻口を隠した学生の一団が通り過ぎてゆく。

まるで、京のにぎわいの中に、僧侶の一団が恣意運動をくりひろげている。
はたまた、武士団が威圧ぎみに通り過ぎてゆく、一瞬覚えるそんな味わい。

はい。吉田光邦の本文は気が向いたらひらくことに。
  


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