跳箱

跳び箱でも飛箱でも飛び箱でもとびばこでもいいけどそこはそれ跳箱なんです。体育日和のお供にどうぞ。

針小棒大(もう携帯のこと書くのやめたら?)

2006-11-12 11:27:12 | メディア
よみ:しんしょうぼうだい
意味:〔針ほどのものも棒ほどに大きく言う意から〕物事を大げさに誇張して言うこと。
出典:goo辞書(三省堂「大辞林第二版」)

前回エントリの今回のエントリの内容を考え合わせると森氏にこれほどふさわしい四字熟語はないんじゃないかと思う日曜日の朝であります。

11/08付けGfK発表のデータをCNETが報じていますが、これ、母集団が家電量販店のPOSデータだけなんで、市場全体を代表しているとは到底云いがたいものです。で、CNETの記事ですら、当該週の家電量販店における端末販売シェアの話として取り扱っているのですが、森氏のエントリでは、読み方によっては携帯電話契約数シェア全体が大激動したかのような取り扱いとなっています。これは非常にアンフェアな書き方でしょう。

そもそも、携帯電話契約数の全数データはTCA(社団法人電気通信事業者協会)が毎月発表しています。10月末の事業者別契約数はドコモ52,143,700、KDDI26,603,100(沖縄セルラー、ツーカー含む)、ソフトバンク15,330,800で合計すると94,077,600件でシェアはドコモ55.4%、KDDI28.3%、ソフトバンク16.3%。ちなみに9月のシェアはドコモ55.5%、KDDI28.1%、ボーダフォン16.3%でほとんど変化はありません。

もっと云うと、前年同月の携帯電話契約数は89,365,200で、この一年間で純増数は4,712,400。森氏が崇めるGfKによると2006年の携帯電話販売台数は4655万台(出典:日経マーケットアクセス)になる見込み。つまり、乱暴に言ってしまえば携帯電話販売台数に占める純新規の利用者数は販売台数の10%程度に過ぎなく、前年度比新規加入構成比が10%を切った2003年以降の携帯電話端末販売とはそもそも買い替え需要を主戦場とした市場なわけです。

したがって、買い替え需要を取り込むためには利用者が従前保有していた端末と比較して購入意欲を喚起する施策(ハードウェア、ソフトウェア、それらをひっくるめたサービス)を組み立てて提案する必要があるのは当然といえます。

で、森氏が主張するように、

端末というハード自体の魅力が依然として大きなケータイキャリアの選択に寄与している

というのであれば、キャリアの乗り換えは頻繁に起こっていないといけないはずですが、ドコモのIR資料に掲載されている解約率は2002年03月以降年間1.17~0.77%でしかありません。前述したように2003年以降の携帯電話端末市場は買い替え需要が中心なわけですから、森氏の主張を正しいとするためには、1%未満の解約(おそらくはキャリアスイッチ)率は市場全体から見て大きな要素である、とかなり無理のある主張を展開する必要がありそうです。

そもそも端末の魅力が高ければ網サービスなどどうでもいい、という主張が正しいのなら、携帯電話を解約してmyloに乗り換えるといった行動が統計的に有意な規模で発生していないといけないよね?跳箱にはそんなデータ見つけられなかったけど。(注:myloは国内未発売、発売済みの米国統計にそんな数字が出てないの意。というかなぜSonyはmyloにWillcom SIMスロット搭載するのを見送ったんかね?)

充実した網サービスがあって、そこでの優劣はつ付け難いとなって、はじめて端末の優劣を議論する意味が出てくるわけです。

次、

にこれまで通り「最新機種には新しい機能がたくさん付いてくる」ことが、どうやら必ずしも売りにはならなくなっている

この方がこの市場について語る能力をまったく持ち合わせていないことが判る一言ですね。たとえばドコモのprosolidは2004年発表で販売成績も良かった好端末。

携帯電話の人口普及率はすでに70%を超えているのでロジャーズを引用するまでも無く、最先端でなんでも付いているのがうれしい層からしぶしぶ携帯電話を持っている層まであらゆるタイプの人が携帯電話を利用しているくらいのことは、だれでもすぐに理解できそうなものです。

で、プロとしてこの市場に関心を持っているのであれば前述のprosolidや市場に先鞭をつけたツーカーSの初登場などが2004年に集中していたことを覚えているのは常識の範疇に入ると考えます。さらには、それが契約数の急成長期を脱し、安定成長(飽和とも)期に入ったタイミングを捉えていた点を理解しているのも当然と考えます。森氏はあたかも新しい現象であるかのように言い立てていますが、こういったセグメント毎の商品ラインナップ戦略は今に始まったことではありません。

続いて二項目では移動体通信における音声呼のIP化に言及しながら話はなぜかOSTIに飛んでいますが、音声呼伝送のIP化とOSTIは根本的に関係ありません。

どこかの会社に出かけて音声呼のIP化について携帯電話に詳しそうな振りをしつつ一席ぶちたいならOSTIなんか持ち出さないでIMSの話をしておいた方が無難でしょう。最新版は、3GPP TS 23.228のv7.5.0(Stage2Release7です)

以前他のエントリにも書きましたがOSTIはvProの移動体版的位置づけではありますが、

通信サービスのコモディティ化を防ぐ有力な手段

などではなく、むしろ安全に端末機能開放するための手段と考えるべきです。現在のように、キャリアが端末を完全に掌握している状態のほうがよほど完璧に、

通信機能周辺をハードウェアレベルでキャリアのコントロール下に置く

ことが可能なわけです。なにをどう思い違えばこういう解釈にたどり着くのか理解に苦しみます。

で、三項目でようやくIMSが登場するんですが、ここでも森氏は、

OSTIとIMSでは重複感や齟齬も大きく、OSTIを導入すれば、再びドコモに代表される日本独自仕様を採用することによる長期的デメリットを国内ユーザーにもたらす可能性もある

などと意味不明の知ったかぶりをはじめています。

このエントリで跳箱が紹介したページを見れば、OSTIとIMS双方の仕様が読めますのでどこが重複してどこで齟齬をきたしているのかきちんと説明していただきたいものです。

端末のアプリケーション制御を担当する領域を開放するための仕様(OSTI)とネットワーク側のIPベースのマルチメディアデータ通信制御の仕様(IMS)がどう重複するのかまったく理解できません。

この項については、最初のOSTIとIMSはバッティングするという奇妙な主張が前提になっているので以降の2段落はまったく意味を成しません。

知ったかぶりするのはいい加減にやめてもらいたいものです。

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