跳箱

跳び箱でも飛箱でも飛び箱でもとびばこでもいいけどそこはそれ跳箱なんです。体育日和のお供にどうぞ。

説明になっていないし、問題が多い。

2006-12-04 23:14:39 | 通信
例によってCNETによるとFON Japanは、

同社が提供する無線ルータ「LaFonera」を自分の利用する回線に接続することで、ほかのユーザーが利用できるアクセスポイントを開設できるという無線LANの共有サービス

を開始するとのこと。だれもが疑問に思うであろうポイントについてCNETが突っ込みを入れたところ、

ISPによっては契約ユーザー以外のネットワーク接続を規約で禁止している場合などもあるほか、ISPのインフラをただ乗りしているのではないかという意見については、レベニューシェアによる提携が成功していることを強調。FON WIRELESSの創始者でCEOのMartin Varsavsky氏は「全世界で多くのオペレーターがパートナーになっており、事実彼らの収益は高まっている。つまりただ乗りでない」と説明

したそうですが、ここは日本で、日本のISPと契約している日本のインターネット利用者は日本の法律と契約先ISPの約款に基づいてサービスを利用しているのであって、世界のどこかで、だれかが儲かっているかどうかはまったく関係ありません。

日経マーケットアクセスによると契約者数500万超のISPは@Nifty、OCN、Yahoo BBの3者。で、@Nifty会員規約第17条では営業活動の禁止が謳われています。

OCNの約款では第75条(3)に利用停止条件として、契約者回線、加入者回線又は外部接続回線に自営端末設備、自営電気通信設備、当社以外の電気通信事業者が設置する電気通信回線又は当社の提供する電気通信サービスに係る電気通信回線を当社の承諾を得ずに接続したとき、と謳われています。

Yahoo BB(BBテクノロジーサービス規約)では、第20条2で、会員は、第三者に対し、本サービスを利用させることはできません、と謳っています。

上記の通り、3社の規約、約款で小計1500万契約以上がFONサービスを利用できないことが判ります。さらに、400万契約超のBIGLOBEでも、会員規約第24条(3)で、他の会員のユーザID等(第10条第10項に定める認証機能が付与された会員に係る特定電子媒体の固有情報およびこれが付帯する会員に係る特定電子媒体を含みます。本号において、以下同じ。)を不正に取得もしくは使用し、または他の会員もしくは自己のユーザID等を不正に他の会員もしくは第三者に使用させる行為、を禁じています。

もひとつおまけに、300万契約超を抱えるDIONでもインターネット接続約款第70条(3)で、当社の承諾を得ずに、当社が設置する電気通信設備に、自営端末設備、自営電気通信設備、当社以外の電気通信事業者が設置する電気通信回線又は当社の提供する電気通信サービスに係る電気通信回線を接続したとき。を利用停止条件として謳っています。

念のため、200万契約超を抱えるぷららでも会員規約第15条(3)高速回線を利用されている場合に会員宅内に多数の端末や大量のアクセスのあるサーバを設置するなどして、通常の利用を超えた大量の通信量(トラフィック)が継続的に発生する場合、同(4)では、その他、他の会員の統計的な平均利用方法と比較して大幅に上回る利用が継続して発生する場合、と念の入った書き方でサービス契約の中断、解除条件を謳っています。

さて、ここまで紹介した6社の事例だけでも日本のISP契約のうち2000万契約以上でFONの利用は規約・約款違反になる可能性があると指摘して間違いでは無いでしょう。少なくとも、@Nifty、OCN、Yahoo BB、BIGLOBE、DION、ぷららをISPとして利用している方はFONのサービス利用について、きわめて慎重に判断されるべきでしょう。

この点について、FON社はFON利用規約において、

4. 事前要求
「Linus」の カテゴリを選択したユーザーは、本利用規約を承認し、「FON コミュニティー」に登録する前に:
(i) 「FON ソーシャル・ルーター」または「FON ソフトウェア」と互換性のあるルーターを入手し、
(ii) 「FONero」との帯域のシェアを許可する契約を「ISP」と締結する必要があります。

とFONを通じて他者へのアクセスを許可するためにISPと締結しなければならない契約義務をエンドユーザーに課すことでFON自身がISPと契約締結する義務を負うことを回避しています。

しかも、日本でFONを利用するユーザーにも、

19. 裁判管轄と準拠法
本契約は、英国法に準拠し、解釈されるものとし、当事者は英国の裁判所の非専属的裁判管轄に属することに同意します。

と、英国法を準拠法として適用し、裁判管轄も英国裁判所とすることを求めています。

このWebサイト上には特段の注意書きが無く(2006年12月4日23:00現在)利用規約のなかにひっそりと、エンドユーザーとISPの間でトラブル画発生した場合の解決の責任はエンドユーザーにあり、FONは責任を取らないことを記載するだけ、という処置には納得できません。

しかも明示されていないリスクとしてエンドユーザー個々人が契約しているISPとトラブルに見舞われる可能性も想定しなければなりません。

---2006/12/08追記---
続報というかコメント欄への返信などを新エントリにしてみましたのでよろしかったらこちらもどうぞ

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6 コメント

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Unknown (とおりすがり)
2006-12-07 17:31:31
OCNの約款の利用停止の項目で禁止されているのは、

契約者回線、加入者回線又は外部接続回線への接続

であって、回線終端装置から先への機器の接続はここでの禁止事項の範囲外ではないでしょうか。
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同意できません。 (跳箱管理人)
2006-12-07 18:09:30
約款の第3条(用語の定義)32、32の2、45、46と、第65条2に記載のある外部接続回線の定義を読んだ上で、条文を読めば、条文骨子は

(OCNと契約した回線)に、(自営端末・通信設備)もしくは(他社またはOCNの回線)をOCNの承諾を得ずに接続することを禁止していることがわかります。

ここで問題になるのは、FONが提供する無線ルーターを介して接続される通信は空中線を使った無線通信であり、これは自営通信設備または他社回線と見なされえます。この自営通信設備または他社回線との接続をOCNが明示的に許可していない限り、当該接続は禁止されていると解釈するのが自然でしょう。

約款を電気通信事業法等の関連法規と併せて精読されることをお奨めします。
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念のため。 (跳箱管理人)
2006-12-07 21:32:06
跳箱はOCN(というよりNTTCom社)の法務部員ではありませんから、上述した約款解釈は跳箱の個人的解釈であることをお断りしておきます。

もともと契約約款は強行法規に反しない限り、契約当事者間の合意に基づいて適用される約束事ですから、とおりすがり氏がOCNと契約していて、OCNの約款解釈に疑義があるのであれば、契約当事者としてOCNに対して問い合わせるべきでしょう。

なんにせよ、FONの利用規約はFONと契約する利用者に対して、利用者自身がISPからFONの接続許可を得ることを要求しているわけですから、契約ISPが明示的にFONの利用を許可しているのでなければ個別に利用(接続)許可を求めて置くべきなのでは無いでしょうか?
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そうだとすると (とおりすがり)
2006-12-08 10:26:49
>ここで問題になるのは、FONが提供する無線ルーターを介して接続される通信は空中線を使った無線通信であり、これは自営通信設備または他社回線と見なされえます。

それでは、自衛通信設備には、市販の通常のHUB、ルーター、無線LANアクセスポイント・ルーターも含まれますね。

問題は、それがどこに接続されるかでしょう。

回線の定義は、
32:契約者回線:OCNの施設とNTT?局内施設との間の回線
32の2:NTT?局内施設と契約の申し込み者の指定する場所との間の回線
ですよね。

回線終端装置の定義でも、回線の終端に接続すると言っているくらいですから、終端の先は契約者回線や加入者回線には含まれないと考えるのが妥当かと。

もし、終端装置の先も含まれるとすると、市販のルーターや無線LANルーターを接続することも禁止されていることになってしまいます。

>もともと契約約款は強行法規に反しない限り、契約当事者間の合意に基づいて適用される約束事ですから、とおりすがり氏がOCNと契約していて、OCNの約款解釈に疑義があるのであれば、契約当事者としてOCNに対して問い合わせるべきでしょう。

私はOCNユーザーなわけじゃないです。DIONの方は「当社が設置する電気通信設備」という部分で解釈が広く取れると考えたのでOCNについてのみ異議をとなえただけです。
また、書いてあるとおりに読めば「疑義がある」とさえ思いませんので(OCN自身が、FONが規約違反であるとの見解を発表していますか?)問い合わせるつもりはありません。

>FONの利用規約はFONと契約する利用者に対して、利用者自身がISPからFONの接続許可を得ることを要求しているわけですから

これもダウトですね。FONはISPに許可を得ることを要求してはいません。接続が規約に違反しないか確認することを要求しているだけですので、規約を確認すれば済むことです。

明白でもない解釈を明白な解釈のように書かれていることが、不適切ではないかと思ったので指摘しただけです。
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Unknown (Sabotenboy)
2006-12-08 13:47:22
既に他所で大手ISPからの見解を収集している方がいます
http://d.hatena.ne.jp/blackjapan/20061206/FON

各社の利用規約の各自の解釈はさておき(どうせいつでも一方的に変更可能なんですから)、基本的にFONは受け入れられていないようですね

FONの各種文書を読んでると、いまひとつな点が多く、はっきりいって見切り発車のツケをユーザに負わせようとしている意図が透けて見えます
(どうして大手ISPの了解を取り付けてからスタートしなかったのか、それは断られたからでしょう)

どうせISP側からFON利用という規約違反を検知出来ないだろうし、出来たとしても責任はユーザーに負わせておけば...、これはただ乗りに他ならない様な気がしますね

あと蛇足ですが、裁判管轄は非専属なのでなんだったら東京地裁に訴えることも可能ですよ、でも英国法ベースの裁判を日本でやることになるので、英国法の規定が「証拠」として用いられる変則裁判になる上、扱う弁護士の問題もあり現実的でないですけどね
また本邦居住者に対して英国の裁判所で裁判を起こされたら、...個人レベルでは対応できないでしょうね、小さな会社でも難しいと思います

LA FONERAも、キャンペーン期間中ですら送料込みで約千円、キャンペーン後は約三千円とすると、メンバー加入にあたって大したインセンティブにはならないので、欧州に比べ安価な無線ルーターが入手しやすい日本では、ISP側のムードが変わらないとビジネスとしては早晩アウトの様な気がします

勝手な思い込みでコメントしてみました^^;
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本件につき (跳箱管理人)
2006-12-08 23:33:44
返事が長くなりそうだったのでエントリひとつ起こしておきました。

http://blog.goo.ne.jp/vaulting-box/e/5f51e1f751c9158a05d4c10d1f86a6b5

です。
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