(写真はイラン・ハマダーン近くの遺跡。
ヘラクレス蔵を右手に二人のパルティア王の磨崖浮き彫りを通り、遥か崖の上のダイオレス大王戦勝碑を抜けただひたすら山道を歩くと、勝手の住居跡広間に辿り着く。
写真の 山中に削られた平地は住宅部屋跡の空間。
この辺りには浮き彫りが施されていない大きな磨崖もいくつかある。
写真からもっと奥へ奥へと山道を進む。
目を凝らすと、崖の中にひっそりとシーリーン(顔だけ)の浮き彫りが寂しそうにこちらを見つめる。
静かな山中。声高に鳥の啼く声。このあたりをひとりで訪れると、崖上からのキーンキーンという岩の叫びが恐ろしく怖い。
岩が落ちてくれば、わたしなどはひとたまりもなく、息が耐えるだろう。
シーリーンがメドゥサに姿を変えぬよう、静かにその場を離れる。
パルティア王の磨崖浮き彫りに行く度にシーリーンに会いにゆく。
一度目は写真のように地元のおじいさんと、その場で知り合ったイラン人大学(院)生二人とわたしの四人で。
道を覚えたので、二度目は わたくしひとり。
そして三度目は、パルティア王の磨崖浮き彫りを写真に収めるために行けば毎回一日中格闘していたという夫を促して 山中に連れ出す。。
夫は初めて見るシーリーンの美しさに、目をしばしばさせていた。
写真は一回目。イラン人は一般的に老けてみえるが、写る右上側の男性はれっきとした学生。)
記録のみ
2010年度 159冊目 『西アジア南北紀』
杉山二郎 著
瑠璃書房
六興出版
昭和53年9月15日
363ページ 2800円
気になっていた『西アジア南北紀』を昨日から読み始め、只今読了。
杉山二郎さんといえば『正倉院』なども有名。
『西アジア南北紀』は冒頭部分とまとめに名詞(地名、その他)が多く、地図で確かめながら丁寧に読んでも難しい。
だが、中程は紀行文形式で、楽しみながら一気に読み進めることができる。
この本に出てくるイランの遺跡部分は、わたくしもほとんど行ったことがある。それだけに、よけい興味深く読むことができた。
中東の方との現地でのおつきあい部分では、いちいち納得。
随分昔に長い期間発掘調査で行かれたようで、気苦労やご苦労話も多い。
テント生活を送られたようで、現場の影の内炎天下での調査は計り知れない物があったのではと感じる。
ただただ楽しく、また時にはハラハラドキドキしながら読ませていただいた。
わたくしは大酒飲みではないが、酒が許される時代であったことは、うらやましい。
本書を書かれた時点で、「今はシルクロードにも行きやすく・・・。それだけにもったいない。」といった言葉が繰りかえされる。
つくづくそうなのだろうなと納得。
今は今で、行く場所によっては旅行者ガイドに運転をお願いしても遺跡にたどり着けないことも少なくはない。
石灰の粉が舞う得体の知れない山中に車ごと迷子になったあげく、一日はしてもらったタクシーは無駄となる場合もある。
名の知られていない遺跡にたどり着くには、並大抵のことではない場合も少なくはない。
観光課されてない場所もわかりにくい山中の遺跡にたどり着くのに手間取ることがある。
イラン観光機関や警察にお願いしたり、懇願すると、上手く場合も。
気に入られると昼食を省いてでも案内して下さるといったラッキーなこともあり。
観光協会や警察関係やタクシードライバーや現地旅行社には、常々感謝の念でいっぱい。
ナクシェ・ロスタムで見られるゾロアスター教の長方形の建物は【復元】と記されていた・・・・・。
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本書の紀行文部分は読み物として楽しむことができる。
昭和53年という年代物の本書だが、西アジアや発掘調査などに関心のある方にはお勧めの一冊。
わたしにとっては、大変ためになったと喜んでいる。
杉山二郎さんも続けて読みたいと思う。読みたい本がいっぱいだ。