ギリ、四十女。イランで痴漢、詐欺にあい、求愛を受ける
イランでは素敵な人との出会いも多くあったが、突拍子もない経験も多かった。
タクシー 一つをとっても、日本では考えられないことが起こる。
ぎりぎり四十代女が、夫と共に同乗していたにもかかわらず、痴漢にあう。
料金を渡す際に、タクシーの運ちゃんが我手を引っ張って離そうとしない。
逃げられない状態で、尻を執拗に触ってくる。
先に降りた夫が、痴漢行為に気付き、大声で怒鳴る。
「やめろ!この、豚やろう。」
と言ったかどうかは知らない。
私にはペルシャ語が分からないので、本当のところが分からないのだ。
おそらく夫の温厚な性格からして、
「止めなさい。そういった行為は・・・。」
位だったのではないかと思われるが、口調は普段の夫から考えると、驚くほどに鋭くさした。
『カッコいい~。』
と、夫を見直す。
イランではやたら体を触ってくる香具師が多い。
道を聞いても 手をつないで横断歩道を渡たり、目的地に連れて行ってくれる。
終始にこやかで、目鼻だちのはっきりとしたイラン人男性に親切にされると、結構なお年となっている私にとっては、少しは舞い上がる部分もあるかもしれない。
私ははじめ、イラン人男性は親切で友好的なのだと思っていたが、夫に言わせると、イスラム教徒は妻以外の女を触ってはいけないのだそうだ。
また、外国人女性は、イスラム教でがんじがらめにされてない分、標的にされやすいのだと教えてくれた。
イランではタクシーは近距離と長距離運転の資格が違うらしい。
そんな理由で、ハマダーンの近くでは、三日間同じタクシーに乗ることになった。
このタクシーの運ちゃんが、私を見初めてしまったからさあ大変。
一日目と二日目になんだかんだと親切。
両手の人差し指を鍵状に組んで、
「Yon,me.・・・・・・・・・・?????。」
Youとmeは分かるが、後はペルシャ語で何を言っているのか検討が付かない。
へジャブをとって風をあおいでくれたり、崖を担いでくれたり・・・。
タクシーの運ちゃんは、両手の人差し指を鍵状に組んで、うっとりとした目つきで、
「Yon,me.・・・・・・・・・・。(?????。)」
を何度も何度も繰り返すこと、仕切りなし。
そのうちに私もタクシーの方もなんだか様子が変だと思い始めるまでに、丸二日も要してしまった。
後で夫が、
「運転手に、夫婦か?結婚しているのか?」
と聞かれたと言う。
運ちゃんは夫のことばに、シュンとしてしまったそうな。
ビックリ!
え?それは乱鳥が鈍感でしょうって・・・?
まさか、皆さんは 運ちゃんが本気だと思いますか?
だって私はさっきも言ったように、ぎりぎり四十の女。対して、運ちゃんは三十代前半の男ですよ・・・。
まさか求愛してるとは、思いもよりませんよね・・・。
タクシーでは色々なできごとに巻き込まれたが、中でも印象深いのが軽い詐欺にあったこと。
夫はかって知ったるなんとやらで、ホテルは仕事の関係で毎回泊まっているテヘランだけを予約。(実際には 夫の仕事関係の、とても親切な方に予約をとっていただいていた。)
後は全て現地予約。エスファハーンも、夫がいつも利用しているアッバッシーホテルに五日間泊まる予定・・・だった。
九月下旬。エスファハーンに付いたのは夜の九時頃。
タクシーに乗り、二人はなにやら話し込んでいる。
なぜか緊張感が漂う。時間が長い。。
夫「・・・・・・。(アッバッシーホテルに行ってくれる?)」
運「・・・・・・。・・・・・・。
(アッバッシーホテルは今閉鎖されていますよ。工事中です。)」
夫「・・・・・・。(どこか適当なホテルはあるかね。)」
運「・・・・・・。(ちょっと待ってください。)」
タクシーの運ちゃんは、携帯電話でどこかと話し始めた。
運「・・・・・・。」
運「・・・・・・。(適当なところがあります。)」
夫「モッチャケラム。(ありがとう。)」
付いたホテルはアッバッシーホテルの真前のこじんまりしたホテル。
タクシーの運ちゃんとホテル従業員はなにやら話しこんでいる。
一泊8000ドルのところを、四連泊で15パーセント負けてくれると向こうから行ってくれる。
ありがたい・・・。
翌日になって知ったのだが、真向かいのアッバッシーホテルは営業していた。
イラン人の知人に話すと、笑って答えてくれた。
「騙されたのですよ。イランではよくあることです・・・。ホテル側と協定を結んでますね・・・。」
アッバッシーホテルが工事中で泊まれず、私は宿泊費が半額以下になり、三、四万円も得をしたのかなと思い上がっていたが、一夜にして奈落のそこへ一直線。
日本から用意していた水着は使うこともなく鞄の隅にしまいこむ羽目となった。
悔しいので、夕食はアッバッシーホテルに 四日間連続食べに行った。
これ、せめてもの慰み也・・・。
そりゃあないだろ!タクシー。
イランでは、
「♪~タクシー楽ありゃ 苦もあるさ~♪」
ってなところかも知れない。
『気をつけよう タクシー男の 口車・・・・・・』
って、ダジャレで〆かい・・・?