ドラクエ9☆天使ツアーズ

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理想は美しく1

2015年07月02日 | ツアーズ SS

故郷の村に戻って、仲間たちと一泊。

父に親しい仲間を紹介して、姉に冒険者としての自覚ができたことを報告する。

ただそれだけの簡単な帰省のはずだったが、現実はそうそううまくいかないものだ。

いつも、だいたいそう。

ミオが自分の中で思い描いている通りに事が進んだことなんてない。

あまりの不甲斐なさに、ひたすら落ち込むしかない。…今までなら。

そう、今までなら無力を嘆いて、背を向けて、家の中に閉じこもっていれば良かったけれど。

今の自分には、守りたい人たちがいて、その人たちの役に立ちたいという願望があって、落ち込んでいる暇なんてないのだ。

と、ミオが一人で自身を奮い立たせていると、「まあまあ、力を抜いて」と、ヒロにやんわり両肩を揉まれた。

そんな肩ひじ張ってると疲れちゃうよ、と笑われて赤面する。

 

姉たちとその取り巻きの女性陣を相手に、対戦を挑んで惨敗した。

ミカは村の外に出され、ウイとは、はぐれてしまった。

ミカの方には「絶対戻らねえ!」と拒否されてしまったので、致し方なく、はぐれてしまったウイの方を探して村を訪ね歩く。

その最中に、ミオはすれ違う女性たちに声をかけられては立ち止まり、また声をかけられては立ち止まり…

という状況になってしまっていて、一向にウイと合流できそうにない。

どこかにいるのだろうけれど、お互いすれ違ってやしないだろうか?そう思っていた矢先、また一人の女性に声をかけられる。

「あ、あんたさ、さっきボロックソに負けてたでしょ」

と、からかうように声をかけてきた女性は、姉たちの派閥ではない。

だから対戦には加わっていなかったけれど、村の闘技場での対戦は日常でそれを観戦するのもまた当たり前のことだったから。

ミオとヒロは、さっきからそうしているように、彼女に応えるため足を止める。

「混戦になる前も思ってたけどさ、おっ上品すぎて見ていらんなかったわ、ひどすぎ!」

と、あからさまに攻撃的なその口調に、昔の自分なら泣き出すか、逃げ出すかしていただろうな、と思う。

だが今は。

不思議なことに、村の女性たちの厳しい物言いや上から目線の態度にも、ひるむことなく向き合える。

ヒロがそばにいてくれる、という安心感もあるが、ミオにはそれ以上に、自分の変化がわかっていた。

「は、はい、私たち対人での戦闘が初めてだったので、守りに入ってしまって気が付いたら身動き取れなくて…」

私の判断ミスです、と返事を返すと、あーなるほどねー、とその女性はうなずいた。

ただそれだけの事。ちゃんと人に向き合えば、相手は話をしたがっているのだ、ということが解る。

言葉は荒くても、口調はきつくても、ミオが返事をすれば女性たちはちゃんと話を聞いてくれた。

「やっぱり対人は一歩でも引いたらダメよ、礼儀正しく、相手を尊重して、とかやってたら馬鹿みるわよ?」

攻めて攻めて攻めて、卑劣だって言われるくらい攻めるのよ、とこぶしを振り上げられて、思わず身を引くと。

「ほら、それが駄目だっつってんの!」

と、即座に説教されてヒロと二人で、はあスミマセン、と身を寄せ合う。

そんな様子を呆れたように見て、まあでもさ、と彼女はミオを見て笑った。

「ああいう戦い方、村じゃちょっと見ないじゃない?面白そうだな、と思ってさ」

そう言われ、思いがけない言葉に戸惑っていると、いつまでいるの?と、聞かれる。

「あ、明日には、発とうかと思ってるんですけど…」

「ええー?つまんないわね、ちょっとやりあってみたかったのに」

もう少しいなさいよ、と言って、ね?今度はあたしとやろうよ!と、ミオとヒロの肩を叩く。

「味方でも敵でもいいけどさ、ま、考えといて!」

そういって、今から酒盛りだけど一緒に行く?と誘われたのを、仲間を探しているので、と断る。

それにも気分を害することなく、あ!そう、じゃあね!と笑って彼女は村の西側へと消えていった。

「いい酒のつまみにされてるんだろうなー、あれ」

という声に、え?と顔をあげると、ヒロが笑う。

「俺たちのさ、対戦。それをみんなであーだこーだ言って、酒飲んで盛り上がる」

そういわれれば、確かに村のあちこちで盛り上がっているのは想像にたやすい。

今の女性以外にも、賢者が珍しいから仲間になれ、とか、話を聞かせろ、とか、次は私の指示で闘ってみてよ、とか。

すれ違う女性たちにはとても好意的に、…いや好戦的に、声をかけられてきたのだ。

「お上品、って言われちゃいましたね」

その感想も、ほぼ全員の思うところだったようなので、今更意外には思わないが。

話をきちんと聞かなければ、好意的解釈だ、とは思えなかっただろうな、とミオは考える。

「まあ、ミカのやり方を実践してるんだから…、宮廷式だと姉さんたちにはそう見えるんだろうなぁ」

「そうですね」

否定されて傷つく。そこで心を閉ざして、人から逃げてばかりいた昔の自分。

今ならわかる、言葉はただの形で、その形におおわれている中身の方が大事だということ。

思えば出会ったばかりのミカの言葉が恐ろしくて、ミカという存在そのものを怖がっていたけれど、

ウイとヒロが傍で、「そういう意味で言ってるんじゃないんだよ」と、一つ一つ、拙いミオの受け取り方を補佐してくれた。

そんなやりとりがあって、ミカという人柄を理解して、今では彼と他愛ない会話をすることもできるようになった。

大事に積み重ねてきた日々が、今、村の中にあっても、自分をしっかりと支えている。

村の女性たちの気性や言葉は荒いけれど、恐れ逃げ出すような悪意を持ってはいないのだ。

(どうして、あんなに皆が怖かったんだろう)

ミオがそう考えてしまうくらい、女性陣は気のいい人たちに見える。

決して過去がなかったことにはならないけれど、それでも今この村は、目を背け逃げ出すような場所ではない。

そう思ったとき、ヒロが勿体ないな、というのが聞こえ、ミオは一人の思考に閉じこもっていたことを知る。

慌てて、ごめんなさい何ですか?とヒロを見上げれば、ミオではなく、村を見まわしていたヒロが、うん、と振り返った。

「明日、帰っちゃうんだ?」

「あ、はい、そう思ってたんですけど」

ミカにはもちろん、下僕扱いのヒロにも、遊ばれているらしいウイにも、なんだか申し訳ないな、と思う。

ヒロの村に遊びに行ったときには、総出であんなにも手厚く歓待してもらったというのに。

やっぱり、今の自分ではまだこの村での地位は低すぎて、皆をもてなすことができない。

それを素直に告げると、ヒロは、そんなことか、と笑った。

「俺はねー、村中総出で、めちゃくちゃ手厚く歓待されてると思ってるけど」

と言われ、ありえないヒロの言葉に、ええー?!と、大声をあげて立ち止まる。

「え、そんな驚く?」

「だって、だって…、ど、どこが?どうして?」

「だってミオちゃんの村って、武の村でしょ?武をもって全を制す…?」

「あ、えーと、はい」

「その村で、姉さんたちがめっちゃ戦え戦え、言ってくるのって、この村流の歓待でしょ」

「…え?そ、そうですか?」

うん、この村らしい流儀だと思う、と村外のヒロが難なくそう理解を示す。そのことも驚きだったが。

「ミオちゃんも一人前って認めてもらえたみたいだし」

そういわれて、さらに固まる。

「え?」

「さっきから、いろんな姉さんたちが声かけてくれるじゃん」

良かったね、と言われ、どう返したらいいのか解らないでいると、ヒロが先に立って振り返り、歩くように促す。

それに、黙ってついていく。

「だからさ、明日帰るの勿体ないな、って思って。こんな機会、そうないでしょ」

ヒロは、この事態を楽しんでいる?

じゃあウイは?ミカは?

二人にもこれは受け入れられることだろうか。

「あー、ミオちゃんは俺の村が気に入ってくれたみたいだけど」

「はい、すごく!」

「うん、それは嬉しいけど、ミカにとってはここの村より俺の村の方がストレスだったと思うよ?」

「えっ」

「ミカにとって耐えがたいのって、環境が粗悪なのと他人に構われることだから」

俺の村は風呂トイレ共同だし寝床はほぼ雑魚寝だし、チビたちまとわりついて離れないし大人も寄ってくるし。

それに比べると、下の村に小奇麗な宿があって個室で泊まれて、姉さんたちには追い払われて一人ぼっち、って

超快適!な状況じゃねえ?と、二つの村を比較されて、なるほどあのミカにとっては尤もだ…と思ったが、

それを口に出すのもヒロに失礼な気がする、と悩んでいると。

「まあ、ミオちゃんが気になるならウイ見つけた後で、俺はミカと一緒のとこで野宿しても良いし」

二人くっついてたらミオちゃんもそんなに不安じゃないでしょ、と確認されて、じゃあ私も、…と

ミオも、その野宿に加わろうかと口を開きかけた時。

「その必要はないわよ」

と、背後からいきなり声をかけられ、驚いてよろめいたところヒロとぶつかる。

ひゃーごめんなさい、いやいや大丈夫?とやりあっている自分たちを、呆れたように姉が見ていた。

「あ、お姉さん」

「今、二人を下の村まで送ってきたわ」

そう言われて、ミオとヒロは顔を見合わせる。

「え?今?ウイとミカを?あの道を?」

と、ヒロが確認しているのに、ええそうだけど?と事もなげに、長姉、…シオが答える。

この姉ならば月の光も乏しい下の村への道も、明かり一つで往復するくらい、たやすいことなのだろう。

本当なら、それをミオがやらなくてはならなかった。

「あ、あの、お姉さん、ありがとうございました」

慌ててミオがそれを言えば、あんたも早く戻りなさい、とだけ言って家の方へ戻っていく。

「姉さん、優しいな」

とヒロが感心したようにつぶやくのにも、ただ黙ってうなずく。

村で一人前と認められたようにヒロは言ってくれたが、それでもまだ力が及ばない。

まだまだ、姉のようにはいかない。

どれだけの努力を積み重ねれば、姉のようになれるだろう。

姉はどれだけの努力を積み重ねてきたのだろう。

力のみが義とされるこの村で。

そんなことを考えながら、姉の家にもどる。

元々は、母の家だ。その前は祖母の、そのまた祖母の。そうして代々、女で家を守ってきた。

今、この家を守るのは長姉。

そこに小さいミオの部屋がある。

あるけれど、いつも下の村にある父の家に逃げて暮らしていたので、自分の部屋に戻ったという感じはあまりしない。

そのどこか他人行儀な部屋をヒロにお披露目すると、入り口から中を覗いてヒロが言ったことは。

「でもちゃんと掃除してあるんだね」

いつ戻ってもいいように、とヒロに言われて、改めてそのことにも気づく。

シオも村では名立たる冒険者だ。家を空けることも多い。それでも、こうして整っている。

村を出なければわからなかったことが、そこここにあって、ただただ姉の偉大さに圧倒される。

「えっと、じゃあヒロくんが泊まってもらう部屋を…」

用意してもらってるか確認しよう、とミオがヒロを促して部屋を出る。

それを待ち構えていたのは、双子の姉。トールと、トーリ。

「よう下僕!」「やあ下僕!」

と、見事なハモリでヒロをからかう。

「あんたの泊まるとこは納戸よ、な・ん・ど!」

「下僕なんだから、私たちと同格に泊まれると思ったらダメよねー」

そう言った二人がヒロを連れて行ったのは、普段使わない家具や衣類を整頓してある部屋だ。

かろうじてソファーはあるがヒロには小さいだろう。

「ええ?そんなあんまりです!」

いわば物置部屋だ、お客様を泊める部屋では断じてない。というミオの抗議を、二人はせせら笑う。

「あれだけ大口叩いて負けといて、不満とか?」

「感謝して欲しいわ、本当は外の納屋だったのを格上げしてあげたのよ?」

下僕には納屋で十分だが、料理が意外に美味しかった功績を考慮して納戸に待遇改善してやったのだ、という。

それを聞いて、ははあ、なるほど、なんてヒロは感心しているけれど。

あんまりだ。…あんまりだが、今の自分にはそれを覆せるほどの権力はない。

まさかこんなことにも「力が欲しい」、と切実に思うようなことがあるなんて、昔の自分には想像することさえもなかっただろう。

「ごめんなさい、ヒロくん」

姉たちが寝静まったら、ミオと部屋を交換すればいい。…というか、それくらいしかできないことが申し訳ない。

わざわざ家に招いておいてこれだ。もう謝るしかない状況だが、ヒロはあっけらかんと部屋を見渡す。

「いやいや、料理つくっただけで待遇改善してくれるんだから良心的だよ」

「だって、それは…」

それはただの詭弁だ。双子の姉たちは単純にいやがらせで、ヒロをここに押し込めたのだと思う。

それは、ヒロにだってわかっているはずなのに。

「双子の姉さんは、可愛いよね」

どっちがどっちか見分けつかないけど、と言われて、もう何度目かわからないけれど絶句する。

可愛い?可愛いって、なに?

「いやさ、嫌がらせなのか、からかわれてるのか、…どっちでも良いんだけど」

俺こういう状況、別に苦じゃないんだよね、とヒロはミオが持ってきた毛布を受けとっていう。

「金ないとき、宿屋のかび臭い地下室とかで寝かせてもらったりしてたし」

冷えるしじめじめしてるし床は水とか染み出して来てるし、それに比べたら天国、と笑う。

しかし、それと今の状況と、比べられることだろうか?

いつでも優しいヒロの心遣いは、今、素直に受け入れられそうにない、と落ち込んでいるミオにヒロが続ける。

「それに宿がない村で泊まり交渉するとさ、納戸とかもう高待遇、納屋でも有難いくらいだし」

名もない旅人をそんなに信用する方が珍しい。

家畜小屋でも雨風がしのげるだけで十分、場合によれば軒下を借りられるだけでも御の字、そういうものだ。

「俺はそういう旅をずっと経験してきたから」

この程度じゃ嫌がらせの域には入らない。

だから、これを本気で嫌がらせのつもりでとった行動なら世間知らずで可愛いな、と思うし、

ただからかっているだけなら、洒落が効いていて可愛いと思う。

 「シャレ?」

「だって普通に部屋に泊るよりさ、会話は広がるわけじゃん?」

夕べの寝心地はいかがでしたか?はいおかげさまで、なんて味もそっけもないやり取りなんかより。

「姉さんひでえよ!とか言えるし、それを言うことでまた何らかの交渉とかもできるわけだし」

他人行儀な関係を覆すことができるし、連泊することに対する引け目も面白おかしく駆け引きできる。

少なくとも、何らかの行動が起こしやすく、受け入れられているのを感じられる。

そうヒロはいうけれど、それはヒロがそうできる人だからだ。

自分にはとてもそんな発想はない。

「じゃ、じゃあただの意地悪だったら?」

「ただの意地悪だったら、あれだよね、子供みたいだなって思えるよね」

自分たちがどう思われようとも嫌いな人は嫌い、好きな人には好き、まっすぐな感情は子供の素直さ。

「俺の村のチビたちみたいだな、って思って」

チビたち相手なら慣れてるし、本気でムカついたりしないし、と笑われて、本当にヒロはこの状況を苦にしていないのだと分かった。

なぜだろう。

負けたからアンタは下僕ね、と上段に構えているはずの姉たちを見るヒロの方が、優位に立っているようなこの感じ。

目に見えない力関係では、実は、ヒロの方が姉たちを軽くあしらっているようにも思えるから不思議だ。

「あ、もちろん、一番上の姉さんはすげえな、って思うよ?」

「お姉さん?」

「上に立つ人なんだな、ってのが解る。あの姉さんにはちょっと頭上がらないな」

ということは、やはりヒロも双子の姉は取るに足りない相手だ、と思っているのだ。

まーそれはそれとして、とヒロがそれまでの軽い口調から、真剣な面持ちに切り替わったのを見て、ミオも思わず居住まいを正す。

「俺の村に先に遊びにきちゃったから、ミオちゃんはあれが理想だって思ってしまってるんだよ」

「理想…」

そうだ。精一杯の心づくし。笑顔で接してくれて、細やかに世話を焼いてくれて、不便がないようにいつも気にかけてくれて。

そういうのが、ミオの理想とする「おもてなし」だ。ヒロたちにもそうしなければ、と思っていたのだが。

「それはミオちゃんの理想であって、この村の現実とは違うんだよ」

理想と、…現実。

「ミオちゃんがそういうおもてなしをしたいって思ったら、それはミオちゃんが自分の家を持った時にそうしたらいいだけで」

この村や、姉さんたちがそうしてくれないからと言って、ミオが落ち込むことはないのだ。

「だって、ようやく冒険者として村に戻ってきたばかりじゃん?ミオちゃんはさ」

そして俺たちは新顔だ、とヒロが自分を指す。

「さっきの対戦は負けちゃったけど、ほら、初陣としてはかなりの印象を残せたと思うんだよね」

そう言われて、ミオは自分の身の回りの変化を思わずにはいられない。

道行く人に声をかけられ、戦ってみない?と興味を持たれていた。

村に戻ってきて、今やっとミオは、村の女性たちとの抗争に名乗りをあげた。

「あとはここからのし上がっていけばいいだけでしょ」

それがミオの現実だ、と言われて、あ、だから…、とミオはつぶやく。それにヒロが頷いた。

だからヒロは、「勿体ない」と、言っていたのか。

負けたからと言って、敗者は去れ!と言われて、素直に去る愚があるだろうか。

ここは、武の村なのだ。

何度でも挑戦することを、この村の女性たちは拒まない。

「ミカは乗り気じゃないみたいだけど、それは俺たちが勝手にやってればいいことで」

あの負けず嫌いなら、俺たち対人戦得意になった、って言ったら俺にもやらせろって参戦してくるよ、

と、さも当たり前のように言われて、ミオも笑った。

「そうですね」

「そうそう」

だから今はこれでいい。初めの一歩としては、申し分ない。

そんな話をされて、ミオは、納戸と自分の部屋を交換しようとしていた自分の過ちを知る。

ヒロは自力で姉たちに認められ、その部屋を確保した。この村では、それは当然の報奨だ。

そしてこの村で、パーティのリーダーはミオだと認識されているのだから、ミオは堂々と自室のベッドで眠らなければ、

そういう構図を作ってくれたヒロたちの心遣いを無下にすることになる。

ここから這い上がっていく。ミオがその力でもって、皆の待遇を改善していくことの、はじまり。

「それが今の私の、おもてなしなんですね」

「うん、そういうの、俺も、ミカもウイも、嫌いじゃないと思うよ」

だってそうやって少しづつ力を付けて、高みを目指して、世界中を旅してきたんだから。

だから大丈夫、とヒロが背中を押してくれる。

ミオがしっかりと頷くと、それを見たヒロが。

「それに俺、ちょっと面白いこと思いついたんだよね」

と言って、笑った。

「面白い、こと?」

「うまくいけば、姉さんたちを引っ掻き回せる」

「え、ええ?!」

それにはミオの賢者の力が必要だ、という。

「だから、すぐ帰るとか言わないで」

もう少し楽しんでいこうよ、と言われて、それまでの自分たちの置かれている状況が全て、

楽しむべきものだったのか、とミオが驚けばヒロが苦笑する。

「ミカはさ、いつも負けたくせにへらへらして、って俺に怒るんだけど」

もちろんそれは、真剣に戦った相手に対して無礼だ、というミカの主張もわかるのだけど。

「俺そういうの苦手なんで」

負けて畜生くやしいぜ、って思うのはミカに任せて、俺は俺にできることをするよ、というヒロ。

敗者であることを優位に変えて、楽しむという、…それは確かにヒロにしか持ちえない視点。

そしてそれが周囲を変えていくことも、ミオにはもう解っている。

「わかりました!じゃあ今日はしっかり休んで、明日に備えます!」

「うん、完璧に回復しといて」

親指をたてて、よろしく!というヒロに、ミオも親指を立てて、お任せください!と返す。

お休み、といういつもの笑顔に送られて、納戸の扉を閉めた。

双子の姉たちに連れられて、この扉を開けた時とはまるで違う気持ちで、おやすみなさいと言えた。

ミオを取り巻くこの村の全てが、変わっていく。

それを恐れることなく受け入れることで、自分も確かに変わっていくのだ。

良い方にも、悪い方にも変わるけれど。

(大丈夫)

今日の敗北は、終了宣言ではない。

 

ただの前哨戦だ

 

今ここにいない二人が、そういった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちの戦いはこれからだ!

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コメントにお返事のコーナー

■貴沙羅サン

他愛ない二人の掛け合いを楽しんでもらえているようで何よりでございます

そうそう、マント!マント!私自身、幼少期にはシーツをマントに見立ててごっこ遊びを

していたくらいマント好きなので、マントに反応してもらえると、よっしゃー!!です(笑)

書きたいネタはたくさんあれどいかんせん手が遅いのが最大の悩みどころ…ですが

楽しみにしててもらえるとほんと励みになりますアリガトウ

私も言いたいことはついつい長文になってしまうので解ります解ります全然オッケーです

愛です、愛



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