夫が別居宣言をした翌日、私は午前中に掃除洗濯を済ませ、夫と無言の昼食を取った後、家を出た。何度も何度もネットで賃貸情報を検索し、「住むならこの駅周辺がいい」「この不動産屋さんだったら親切そう」などと夢想していた頃の情報収集がこの時役に立った。私は一度かかった心のエンジンが止まらないように、絶えず自分を追い立てながら、迷わずある目的地に向かって電車に乗り込んだ。
別居の方法については以前からいろいろ考えてはいた。夫には黙って、ある日突然引越しをするか。それとも夫には伝えて出て行くか。
別居後も私は今の職場で仕事を続けたかった。私の今の職場を夫は知っている。だから黙って出て行ったら職場に連絡される恐れがある。職場に押しかけられて大騒ぎになるのは嫌だった。遠く離れた実家に帰ることも考えたが、今後の生活費のことを考えると、実家の周辺ですぐ仕事が見つかるとも限らず、また親と生活するのも気がすすまなかった。
なので、私は始めから夫には一応オープンにして別居しようと思っていた。一応私から話しておけば、何かあれば私に対して向かってくるだろうから、職場に迷惑をかけることはないような気がした。ただ、別居をオープンにして進めることはとても恐怖だった。夫に言って、無事に別居ができるのだろうか。妨害されたら、それを振り切って別居できるのだろうか…。不安が募る。いや、とにかく夫が何と言おうと別居するんだ。しかも夫から宣言したではないか。私はひたすら立ち止まりそうになる自分の背中を押していた。
目的地に着くと、すぐ目指していた不動産屋に入った。そこでは男性スタッフとともに、40代後半かと思われる女性スタッフがにこやかに対応してくれた。私は予算や条件について話しながら、ふと「実は夫との別居で一人暮らしをするんです」と伝えた。すると女性スタッフは「それは大変ですね。いくつかいい物件がありますからすぐ見に行きましょう」と笑顔で立ち上がった。私は少しほっとした。そして、いくつか物件の中に、ちょうど条件のいいものもあった。私は迷った。もう少し他の不動産屋も見た方がいいのかもしれない…でもそんなことしていたら、いつまでたっても決められないかもしれない。そう、私はいつもぐずぐずと悩んでしまう。今はそんな悩むひまはない。思い切って決めてしまおう!
そして私はその場で即決した。とりあえず手付け金を支払い、敷金などは後日振り込むことになった。女性スタッフは「ご主人は別居することに納得されているのですか?」と聞いた。私は「夫から言い出したんですけどね…どうでしょうね」と答えた。すると「私も元夫と別居した後に離婚したんですよ。こういう時って大変だから、ややこしくなったら遠慮なく相談してくださいね」と言ってくれた。私の目が思わず潤んだ。「その時はよろしくお願いします」と頭を下げ不動産屋を出た。援軍が現われたようで、心強かった。これもきっと縁なんだ。何とかできそうな気がする…私は少し軽やかな気分になった。
家に帰った後、雑念が湧かないうちにと、すぐ夫に今日仮契約をした賃貸情報のチラシを見せ「別居先を探してきたから…ここにもう決めたから」と話した。夫はちょっとぼんやりし、「ああそう」と言ったきりだった。
ああ、よかった。夫もきっと納得しているんだ。案外楽に別居できるかもしれない。いや、あまり楽観的にならないほうがいい。突然何言われるかわからないのが常だ。とにかく、何があっても決行しよう。もう部屋も決めたのだから、絶対に引越しをしよう。夕食の支度をしながら思いを巡らせていた。
夕食の片づけが終わった頃、夫が暗い声で「ちょっとここに座れ」と言った。やっぱりきた…私は身を固くして座った。
「おまえ、決めてきたってどういうことだ?」「そんなお金どこにあるんだ?」「おまえは非常に勝手なことをしているってわかってんのか?!」夫の声は怒気を帯び、大きくなっていく。
私はうつむき、酷くなっていく夫の罵声を聞きながらせわしなく考えた。
いっそのこと、私の怒りや憎しみを夫にぶつけてやろうか。夫に思い知らせてやりたい。夫がどれだけ卑劣な人間か、私がどんなに煮えくりかえるような怒りを溜め込んでいるか大声で訴えてやりたい。でも夫には何を言っても通じない相手だということも私は知っているはずだ。自分の感情に駆られて不利な状況を作ってしまったら更にややこしいことになるかもしれない。私の言葉尻を捉えて逆に私を訴える証拠にされても困る。夫は自分を非難するような言葉は細かいことまでよく覚えている奴だ。
何としてでもこの別居は成功させなければいけない。夫が何と言っても、どんなに脅してもこの計画は決行するんだ。それには、いかに夫が納得するようにし向けるかだ。私といたら、いかに夫が不幸になるかを強調するんだ。そう、私がすべて悪いことにするんだ。
本当は夫が諸悪の根元だと言いたいところだが、黙っておこう。これは作戦だ。そう、夫をやりすごすための演技が必要だ。少しでも別居をスムーズにするため、有利に動けるようになるために。
夫の罵詈雑言は更に激しくなっていった。
別居の方法については以前からいろいろ考えてはいた。夫には黙って、ある日突然引越しをするか。それとも夫には伝えて出て行くか。
別居後も私は今の職場で仕事を続けたかった。私の今の職場を夫は知っている。だから黙って出て行ったら職場に連絡される恐れがある。職場に押しかけられて大騒ぎになるのは嫌だった。遠く離れた実家に帰ることも考えたが、今後の生活費のことを考えると、実家の周辺ですぐ仕事が見つかるとも限らず、また親と生活するのも気がすすまなかった。
なので、私は始めから夫には一応オープンにして別居しようと思っていた。一応私から話しておけば、何かあれば私に対して向かってくるだろうから、職場に迷惑をかけることはないような気がした。ただ、別居をオープンにして進めることはとても恐怖だった。夫に言って、無事に別居ができるのだろうか。妨害されたら、それを振り切って別居できるのだろうか…。不安が募る。いや、とにかく夫が何と言おうと別居するんだ。しかも夫から宣言したではないか。私はひたすら立ち止まりそうになる自分の背中を押していた。
目的地に着くと、すぐ目指していた不動産屋に入った。そこでは男性スタッフとともに、40代後半かと思われる女性スタッフがにこやかに対応してくれた。私は予算や条件について話しながら、ふと「実は夫との別居で一人暮らしをするんです」と伝えた。すると女性スタッフは「それは大変ですね。いくつかいい物件がありますからすぐ見に行きましょう」と笑顔で立ち上がった。私は少しほっとした。そして、いくつか物件の中に、ちょうど条件のいいものもあった。私は迷った。もう少し他の不動産屋も見た方がいいのかもしれない…でもそんなことしていたら、いつまでたっても決められないかもしれない。そう、私はいつもぐずぐずと悩んでしまう。今はそんな悩むひまはない。思い切って決めてしまおう!
そして私はその場で即決した。とりあえず手付け金を支払い、敷金などは後日振り込むことになった。女性スタッフは「ご主人は別居することに納得されているのですか?」と聞いた。私は「夫から言い出したんですけどね…どうでしょうね」と答えた。すると「私も元夫と別居した後に離婚したんですよ。こういう時って大変だから、ややこしくなったら遠慮なく相談してくださいね」と言ってくれた。私の目が思わず潤んだ。「その時はよろしくお願いします」と頭を下げ不動産屋を出た。援軍が現われたようで、心強かった。これもきっと縁なんだ。何とかできそうな気がする…私は少し軽やかな気分になった。
家に帰った後、雑念が湧かないうちにと、すぐ夫に今日仮契約をした賃貸情報のチラシを見せ「別居先を探してきたから…ここにもう決めたから」と話した。夫はちょっとぼんやりし、「ああそう」と言ったきりだった。
ああ、よかった。夫もきっと納得しているんだ。案外楽に別居できるかもしれない。いや、あまり楽観的にならないほうがいい。突然何言われるかわからないのが常だ。とにかく、何があっても決行しよう。もう部屋も決めたのだから、絶対に引越しをしよう。夕食の支度をしながら思いを巡らせていた。
夕食の片づけが終わった頃、夫が暗い声で「ちょっとここに座れ」と言った。やっぱりきた…私は身を固くして座った。
「おまえ、決めてきたってどういうことだ?」「そんなお金どこにあるんだ?」「おまえは非常に勝手なことをしているってわかってんのか?!」夫の声は怒気を帯び、大きくなっていく。
私はうつむき、酷くなっていく夫の罵声を聞きながらせわしなく考えた。
いっそのこと、私の怒りや憎しみを夫にぶつけてやろうか。夫に思い知らせてやりたい。夫がどれだけ卑劣な人間か、私がどんなに煮えくりかえるような怒りを溜め込んでいるか大声で訴えてやりたい。でも夫には何を言っても通じない相手だということも私は知っているはずだ。自分の感情に駆られて不利な状況を作ってしまったら更にややこしいことになるかもしれない。私の言葉尻を捉えて逆に私を訴える証拠にされても困る。夫は自分を非難するような言葉は細かいことまでよく覚えている奴だ。
何としてでもこの別居は成功させなければいけない。夫が何と言っても、どんなに脅してもこの計画は決行するんだ。それには、いかに夫が納得するようにし向けるかだ。私といたら、いかに夫が不幸になるかを強調するんだ。そう、私がすべて悪いことにするんだ。
本当は夫が諸悪の根元だと言いたいところだが、黙っておこう。これは作戦だ。そう、夫をやりすごすための演技が必要だ。少しでも別居をスムーズにするため、有利に動けるようになるために。
夫の罵詈雑言は更に激しくなっていった。
こうしてウメさんは無事に生活していると分かっているのにドキドキして
「ばれないで。上手くいって」と祈るような気持ちで読みました
逃げ出すためにフルに頭を回転させ作戦を立てているウメさん
カッコいいです。
もう頭がクリアーになってる時点だから、モラ呪縛に縛られることはないよね?大丈夫だよね?
(過去の)ウメさん頑張れ~!!
私も自分でブログを書きながら
当時のことを思い出して動悸が高まりました…(^^;)
あのときは必死でした~。
自分の中では怒りながら怯えたりの複雑な嵐で。
夫が大暴れしたら、私生きてるかしら…って。
でもなんとか生きてます。
いつも応援してくださって嬉しいです(*^_^*)←照れマス…。
ありがとうございます!
ウメより
いつも読んでくださってありがとうございます。
私もこの頃は重大局面を迎え、神経が張りつめていました。
運命やいかに!って感じでしたよ。
私も思い出してちょっとドキドキしちゃいます。
しかしモラ呪縛はこわいですね~。
しばらく呪いがとけませんでしたが
モラハラ被害者同盟の掲示板での励ましや、
ブログに共感してくださる方々からの
パワーを浴び続けていたら、
呪いがスルスルとほどけていきましたよ(^^)
応援してくださってありがとうございます!
脱出まであともう少し、がんばります~!
ウメより
不動産屋さんで、ウメさんが感じた
>これもきっと縁なんだ。何とかできそうな気がする
という、背中を押された感じ、私も動き始めてから、何度かありました。
ちょっとしたことなんですけど、ぎりぎりの心には、うれしかった思いがあります。
家の契約では、かき集めて持っていったお金が、ぎりぎり間に合う金額だったり。(ちゃんと確認しとけって)
お金払う時に小銭をちょうど使い切ると何かうれしい、単純です。
どのように家を出るか、夫さんの反応に、もう過ぎた事ながら、ウメさんの無事を祈ってしまいます。
とにかく、聞く耳持たない人っていうのは
ただひたすら自分の意見をガンガン声高に主張するだけで
まったく話し合いができませんよね。
hachibe-さんのご兄弟の言葉、達観されててすごいです。
まさに、何言ってもわからない人っているのですよね。
私の夫とか、母親とか…(^^;)
そんな時は、相手を変えるのは無理、と
前向きに自分の人生を考えていくしか
解決の道はないように思います。
相手を変えることに固執しちゃうと
自分の人生無くしますもんね。
そう、試練なんですよね。きっと。
しかしね、人間生きている限り、試練はつきものですねえ。
時々生きるのがしんどくなります。
でも、何とかかんとかやってます
いつもありがとうございます~♪
ウメより
そうなんですよ。決行あるのみ!!と
ひたすら自分にはっぱかけてました。
そんな背水の陣で気が張っているときに
ちょっとした言葉や、ちょっとした出来事が
嬉しくなるのですよね~。
わかります~(^^)
支払いなんかも切りよく終わると「ぴったし!」なんて思ったり
スムーズに事が運びそうだと「これはやれってことなんだわ」
なんて思いこんだり。でもそういうことが励みですよね。
私もいろんなちょっとしたいいことを自分と結びつけて
自分の背中押してましたよ~。
まりかさんもそうやってご自身を励ましておられたのですね!
もう少しで脱出します~(^^)/
いつもありがとうございます~!
ウメより