結婚して7年目、私と夫とは殆ど口をきかなかった。最低限の挨拶「おはよう」「行ってきます」「ただいま」「食事ができました」「おやすみ」を、かろうじて伝えていた程度だった。食事も黙って食べ、片付け終了後は別々の部屋で過ごした。夫がリビングを独占していたので、私はテレビも殆ど見なくなった。夫は常に不機嫌さの雰囲気を漂わせ、私は怒りのスイッチに触れないよう、家事を終わらせると自分の部屋に避難した。もちろん寝るときも別々で、まさに寒々しい家庭内別居状態だった。
私は既に夫を理解しようとする努力を放棄し、夫との関係を修復する意欲も消失していた。夫はまるで乾ききった砂漠か、鋼鉄の壁だった。夫の期待に応えようと、夫の希望に添おうと努力しても、灼熱の砂漠のように虚しく乾き、育むことのできない不毛な関係だった。そして夫といい関係を築こうと、夫と何とかコミュニケーションをとろうと努力しても、頑なに跳ね返され叩きつけられた。
私は、夫に関しては全くの無力だと思い知らされた。
この頃から、私はネットで『夫婦関係』『結婚生活』『離婚』『別居』『DV』などのキーワードで検索しては、世の夫婦はお互いの関係が悪化したとき、どのようにやり過ごしているのかを知ろうとした。そこには様々な悩みを持つ夫婦像があった。私は「いろんなところで結婚生活に悩んでいる人がいるんだ。私だけじゃないんだ」と、自らの心慰める日々だった。また夫と離れたらどこに住もうか、と賃貸情報を検索した。
その時、私は特に別居する意志を固めていたわけではなく、あくまでも現実逃避として一人暮らしを夢想していた。いろいろな駅周辺情報を集めながら、家賃や間取りを見る。それはちょっとした楽しみだった。現実にはこの家から離れて暮らすことはあくまでも夢物語のようにも感じていた。
私の傾向として、よく考えて決めたことは貫き通したい、という信念のようなものがあった。特に自分の人生における重大な選択で、それを簡単に覆すのは軽薄なことであり自分自身に対する信用問題にかかわる、と思いこんでいたのだ。結婚もまた人生における重大な決断であり、その決断に自己責任を取らなければならないと思っていた。そして私達の結婚のために、何人もの人が心からお祝いしてくれた。それを無にしてはいけない、という思いもあった。
しかしそう思いながらも、私の中で結婚生活に期待するものは既に何もなかった。こんな状態で夫婦関係を続け、私は夫の前では自分を押し殺して生きていくのだろうか…。
ある日、夫がふと話しかけてきた。「俺、もしかしたら癌かもしれない」私は心の中で『やった!夫が入院したら私はここで一人暮らしができる。そして夫が死んだらこのマンションは私の物になる』と、物騒なことを考えほくそ笑んだ。しかし顔ではさも重大な出来事のように、顔を曇らせ「どうして?どこか具合悪いの?」と心配そうに応えた。私は夫の前ではとっくの昔からピエロになっていた。夫は「このところ、息切れが酷いんだ。胸も苦しくなる。もしかしたら肺癌かもしれない」と言った。「検査したの?」「いや、してないけど、なんかおかしいんだ。今までいろいろな人に相談したけど、ウメには最後に言った」私は思った。ふん、もったいぶって。夫は今までも些細なことですぐ大袈裟に騒ぐ。今までも何度ガンだ、心臓病だと騒いだことか。そして検査しても異常なしだ。そして夫は「ここのところずっと体調もすぐれないし、会社をやめようかとも考えている」と言った。はぁ?会社を辞める?この人何考えてるの??「どうしてそうなるの?」夫は「会社のシステムが変わって、組織も再編成されることになった。今までの通りに仕事ができなくてしんどいんだ」確かに夫の会社が大幅な改革を目指している、ということは知っていた。そして夫はそのことでストレスを感じているらしいことは、私も何となく察知していた。しかし辞めてどうやって生活するんだ?「辞めてどうするの?」私は、冗談じゃないよ!と言いたいのをこらえて、辛抱強く聞いた。「俺、写真家になろうと思うんだ」はぁ?シャシンカ!?「ずっと写真取るのが好きだったからさ。世界各国を回っていつか写真集を作りたいって思ってるんだ」シャシンシュウ?「生活は、退職金を食いつなぎながらしばらくは何とかなるだろう。ウメも働いているわけだし。そのうちに写真集が売れるかもしれない。少しは印税が入るだろう?そうしたら家でガーデニングをしてみるのもいいな」が、が、がーでにんぐ??夫は淡々と話していた。
私は目を剥いてぶっ倒れそうになった。酸欠になりそうだった。夫はいったい何を言っているの?シャシンカ?妄想抱いているのか?ついに頭がおかしくなったのか?冗談じゃないよ!これ以上に私が働いたお金を使い尽くすのか?会社を辞めたら毎日家にいるのか?海外を回る?そのお金は退職金を使う?じゃあ老後はどうなるの?
私は夫の老後を想像した。おぞましいものだった。想像できたのは、夫が癌で入院することくらいだった。夫がベッドから動けない時、私は冷ややかな顔で夫を見るのだろう。こいつがずっと私を苦しめてきたんだ、と。私は夫が動けないのをいいことに、夫を虐待するかもしれない。今までの私の苦しみを知れ、とばかりに。
あまりにも不幸な将来だった。私は、これ以上私自身を貶めるのか?夫婦で生活や想いを積み重ねるというよりは、夫への憎悪を積み重ね、惨めで卑小な人間になって年老いていくのか?私は、そんな私になりたかったのか???
この、夫の意味不明な言語のおかげで、モラハラによって麻痺していた私の頭に突如スイッチが入った。画像は現実の将来に切り替わった。私が現実を作るんだ。冗談じゃない。夫の妄想の中で生きてなるものか!!
私は既に夫を理解しようとする努力を放棄し、夫との関係を修復する意欲も消失していた。夫はまるで乾ききった砂漠か、鋼鉄の壁だった。夫の期待に応えようと、夫の希望に添おうと努力しても、灼熱の砂漠のように虚しく乾き、育むことのできない不毛な関係だった。そして夫といい関係を築こうと、夫と何とかコミュニケーションをとろうと努力しても、頑なに跳ね返され叩きつけられた。
私は、夫に関しては全くの無力だと思い知らされた。
この頃から、私はネットで『夫婦関係』『結婚生活』『離婚』『別居』『DV』などのキーワードで検索しては、世の夫婦はお互いの関係が悪化したとき、どのようにやり過ごしているのかを知ろうとした。そこには様々な悩みを持つ夫婦像があった。私は「いろんなところで結婚生活に悩んでいる人がいるんだ。私だけじゃないんだ」と、自らの心慰める日々だった。また夫と離れたらどこに住もうか、と賃貸情報を検索した。
その時、私は特に別居する意志を固めていたわけではなく、あくまでも現実逃避として一人暮らしを夢想していた。いろいろな駅周辺情報を集めながら、家賃や間取りを見る。それはちょっとした楽しみだった。現実にはこの家から離れて暮らすことはあくまでも夢物語のようにも感じていた。
私の傾向として、よく考えて決めたことは貫き通したい、という信念のようなものがあった。特に自分の人生における重大な選択で、それを簡単に覆すのは軽薄なことであり自分自身に対する信用問題にかかわる、と思いこんでいたのだ。結婚もまた人生における重大な決断であり、その決断に自己責任を取らなければならないと思っていた。そして私達の結婚のために、何人もの人が心からお祝いしてくれた。それを無にしてはいけない、という思いもあった。
しかしそう思いながらも、私の中で結婚生活に期待するものは既に何もなかった。こんな状態で夫婦関係を続け、私は夫の前では自分を押し殺して生きていくのだろうか…。
ある日、夫がふと話しかけてきた。「俺、もしかしたら癌かもしれない」私は心の中で『やった!夫が入院したら私はここで一人暮らしができる。そして夫が死んだらこのマンションは私の物になる』と、物騒なことを考えほくそ笑んだ。しかし顔ではさも重大な出来事のように、顔を曇らせ「どうして?どこか具合悪いの?」と心配そうに応えた。私は夫の前ではとっくの昔からピエロになっていた。夫は「このところ、息切れが酷いんだ。胸も苦しくなる。もしかしたら肺癌かもしれない」と言った。「検査したの?」「いや、してないけど、なんかおかしいんだ。今までいろいろな人に相談したけど、ウメには最後に言った」私は思った。ふん、もったいぶって。夫は今までも些細なことですぐ大袈裟に騒ぐ。今までも何度ガンだ、心臓病だと騒いだことか。そして検査しても異常なしだ。そして夫は「ここのところずっと体調もすぐれないし、会社をやめようかとも考えている」と言った。はぁ?会社を辞める?この人何考えてるの??「どうしてそうなるの?」夫は「会社のシステムが変わって、組織も再編成されることになった。今までの通りに仕事ができなくてしんどいんだ」確かに夫の会社が大幅な改革を目指している、ということは知っていた。そして夫はそのことでストレスを感じているらしいことは、私も何となく察知していた。しかし辞めてどうやって生活するんだ?「辞めてどうするの?」私は、冗談じゃないよ!と言いたいのをこらえて、辛抱強く聞いた。「俺、写真家になろうと思うんだ」はぁ?シャシンカ!?「ずっと写真取るのが好きだったからさ。世界各国を回っていつか写真集を作りたいって思ってるんだ」シャシンシュウ?「生活は、退職金を食いつなぎながらしばらくは何とかなるだろう。ウメも働いているわけだし。そのうちに写真集が売れるかもしれない。少しは印税が入るだろう?そうしたら家でガーデニングをしてみるのもいいな」が、が、がーでにんぐ??夫は淡々と話していた。
私は目を剥いてぶっ倒れそうになった。酸欠になりそうだった。夫はいったい何を言っているの?シャシンカ?妄想抱いているのか?ついに頭がおかしくなったのか?冗談じゃないよ!これ以上に私が働いたお金を使い尽くすのか?会社を辞めたら毎日家にいるのか?海外を回る?そのお金は退職金を使う?じゃあ老後はどうなるの?
私は夫の老後を想像した。おぞましいものだった。想像できたのは、夫が癌で入院することくらいだった。夫がベッドから動けない時、私は冷ややかな顔で夫を見るのだろう。こいつがずっと私を苦しめてきたんだ、と。私は夫が動けないのをいいことに、夫を虐待するかもしれない。今までの私の苦しみを知れ、とばかりに。
あまりにも不幸な将来だった。私は、これ以上私自身を貶めるのか?夫婦で生活や想いを積み重ねるというよりは、夫への憎悪を積み重ね、惨めで卑小な人間になって年老いていくのか?私は、そんな私になりたかったのか???
この、夫の意味不明な言語のおかげで、モラハラによって麻痺していた私の頭に突如スイッチが入った。画像は現実の将来に切り替わった。私が現実を作るんだ。冗談じゃない。夫の妄想の中で生きてなるものか!!
うちのヒモラは、結婚半年で突然退職、しばらく退職金で(40万!)暮らし、小説を書く、とほざきましたよ。
10年ほど、まともな家庭を保ちたいと、無駄な努力をしてしまいましたが、もうすぐ脱出します。(今日、新居の鍵の受け渡しなんです。)
やはり、老後を想像すると、はっとしますよね。私は、もし自分が病気になったら虐待されるに違いないと確信し、動き出しました。
うめさんの言葉は私の勇気の素です。これからもよろしくお願いします。
私の傾向として、よく考えて決めたことは貫き通したい、という信念のようなものがあった
私も同じです
自分の苦痛より一般常識に照らし合わせてしまう
どんなに自分が苦しくても感情が鈍磨して
正しい判断を見誤ってしまう
ウメさんがまだ心に生きていきたい
自分らしくありたいと思う気持ちが残っていて本当に良かった
自分を大切にすることを忘れてしまった人のなんと多いことか
ウメさんが自分と向き合うことを忘れてなくて
本当に嬉しいです
もう、おかしくて、おかしくて、
いえ、私自身の事がです。
たった今、ウメさんのブログを見て、
私も思い出したんです。
それまですっかり忘れていました。
そういえば、ウチの元夫さん、
ずっと、「山伏」か、「仙人」になりたいって
言っていました。
現実逃避が理由にあったんですが、
ふっと思い出して、
そんな夫の事をいじらしいと思っていた自分のことが、
今、とっても可笑しくなってしまいました。
いじらしいなぁって思ってたんだぁ…と(笑)。
ちっこさん、こんばんは!
私もちっこさんのブログを読ませていただく中で
「よくわかる、その気持ち…」って
共感することがよくあります。
>自分の苦痛より一般常識に照らし合わせてしまう
どんなに自分が苦しくても感情が鈍磨して
正しい判断を見誤ってしまう
そうなんですよね~。
つい社会の目をまず考えてしまうのです。
そうじゃなくていいんだ、と
ようやく思えるようになりました。
私が、私であろうとすることに
喜んでくれるちっこさん、何だか嬉しいです(^^)
いつもありがとうございます!
ウメより
☆妙子さんへ
妙子さん、こんばんは!
妙子さんの元夫さんは「山伏」「仙人」ですか!
すごいですね~っ!
ごめんなさい、私も思わず笑ってしまいました。
う~ん、上には上がいるものですね…(^^;)
次元が高い…!
私の夫も「シャシンカ」の前に
「自分で会社を作りたい」などと言っていたことがあって
この人は凄い人かもしれない、なんて
勘違いしていたことがありました。
それが更に妄想めいてきちゃって…。
今なら笑えるのですが、当時は青ざめました。。。
おかげで冷水をぶっかけられて目が覚めましたので
よかったのですけどね(笑)
ありがとうございます~!
ウメより
じつは、着々と新居を整えつつ、気持ちは大揺れに揺れてたんです。やっぱり、不安は大きいです。
でも、ここが、踏ん張りどころと思って、もうひとがんばりです!そうですね、すでに道は開かれているんですね。
そういえば、うちも写真、ビデオにも凝りました。現実逃避なんでしょうかね。
前のコメントでウメさんの表記がひらがなになってました。ごめんなさい。
気持ちの大揺れ、わかります~。
ほんとにこれでいいのだろうか、って
夫に対してまだ努力し残したことはないかって
つい思ってしまいますよね。
そして、私も「私は本当に別居するんだろうか?」
と、どこか信じられないことをしているような、
自分1人で生きていくの?みたいな
なんだか夢をみているような、
いろんな気持ちになりました。
でも、結局は、まりかさんが思ったこと
決断したことが正しいと思います。
だって、10年考えられて決めたことですもの。
まりかさんのこころの声は、真実です!
ご自身の想いを大切にしてくださいね(^^)
応援しています。
(それと、カタカナだろうが、ひらがなだろうがいっこうにかまいませんよ~!)
ウメより
今日は怒りが湧いてくる
あたし、怒ったりしないの、出来ないの
いやな事されて、怒るのでなくて悲しくなるタチなの だからけんかにならないよ
でもね 今日は怒ったよ、元ウメ夫、ヒドイ人だっ 時間を返せ~~~ 心を癒す分も含めて倍の時間を返せ~~~
baniramamaさんはあまり怒ったりされないのですね。
きっと優しい方なのですね。
だってたまたま覗いた、私の荒んだブログを真剣に読んでくださり
一緒に怒ってくださっているのですから。
何だか嬉しいです。
肩をくんでもらってるみたいで。へへ。
ありがとうございます!
ウメより