* 味方は必ずいる。モラハラ被害に遭ったら外に出よう、離れよう、話そう!
私が職場モラハラを受けている最中は、とにかく上司の気分や顔色が気になり、そのことで頭がいっぱいになってしまった。視野が狭くなり、思考も柔軟性を欠いていた。いつも自分が見張られ、突然攻撃されるのではないかとビクビクし、何らかの仕草や言動も自分を責めるサインと意味づけしてしまい、被害妄想的になっていた。しかもモラ上司は誰も口を出せない状況を作っていたので、私の味方は誰もいない、と思いこんでいた。
しかし職場を辞める直前になってから、関連会社でよく仕事を一緒にさせてもらったり、業務上お世話になった方々に退職の挨拶に行ったとき、「ウメさんが何で違う部署に異動になったんだろうねーって心配していたんですよ。だって、あんなに前の部署でがんばっていたのにね。」と声をかけてくれたのだ。またある人は「あの上司の言うことって地に足がついてない感じがしましたよ。しかもちょっと政治色強かったでしょ。ウメさん、辞めて正解でしたよ。」と私を励ましてくれた。また別の会社の人は「ウメさんの異動もなんか変だったし、後からきた主任は要領を得ないし、いったいどうなってるんだと思ってましたよ。」と、私が事情を話す前から察してくださった方もいた。また、親しくしてくれたある会社の知人に、モラ上司の嫌がらせや主任降格、他所への異動の経緯を簡単に話したら「ええ~~っ!?それって酷いよ。よほどの落ち度があったとか不祥事が無いかぎり、降格なんて絶対できないでしょう!もしウメさんが不当な配置だって裁判起こしたら、会社は確実に負けるよ。」とまで言ってくれた。そうか、そこまで不合理な仕打ちだったんだ。私は上司のモラに対して「なぜ?」「なぜ?」と思うばかりでそんなふうには考えられなかった。
そして、これらの励ましの言葉をもらえるとはまったく思っていなかったので、この一言一言に涙が出るほど嬉しかったのだ。周囲はそんなふうに見てくれていたんだ。誰も味方がいないと思いこんでいたけれど、話せば「それはおかしい」と言ってくれる人はいる。また、「変だと思っていた」と言ってくれる人もいた。
自分の職場から離れれば、味方もいるし、別の世界がある。あの不合理な世界に自分を閉じこめておく必要はまったくなかったのだ。ここで何とかしなければ、と固執しすぎる必要もないのだ。ある程度の努力は必要だろうが、まったく実りのない、自分を傷つけるだけの努力はしない方がいい。私はかつて、この会社にずっと勤めたいと願っていた。だからなんとしてでもがんばって、続けていきたいと思っていた。他に行き場がない、とも思いこんでいた。
しかし自分がするべきことをし、納得できる努力をし、それに対してあまりにも理不尽な要求や攻撃があったら、もうそこから離れた方がいい。為すべきことをしていたら、見ていてくれる人はどこかに必ずいる。そして他に行く場所は必ずある。
職場を辞める最後に、それを確信できたことは本当によかったと思う。そうでなかったら、人間不信に陥って当面働く気になれなかっただろう。
職場を辞めた後、モラ上司から年賀状が来た。私は即座に年賀状を捨てた。そして1ヶ月後になんと自宅にモラ上司から電話があったのだ。「元気?またよかったらうちの職場に遊びに来てね。今度○○というイベントがあるからよかったら見に来て。トラブってやめたわけでもないわけだし、気軽に顔見せてね。」このモラ上司の言葉に反吐が出るほど嫌悪感に覆われた。どうしてこのような信じられないことを言えるのだろうか。まったく不思議だった。しかし私は意に反して、「ありがとうございます。また伺います。」と笑顔で言ってしまったのだ。そういう自分をも嫌悪した。どうして私はいつまでも上司に愛想をふろうとするのだろうか。自分の意志薄弱を憎んだ。
そしてしばらく私はぶらぶらしていたが、そのうちに仕事関係者から声をかけてもらい、少しずつ仕事をし始めた。いくつかの臨時のアルバイトやパート勤めを再開し、そして正社員として働くことが出来るようになった。今の職場に声をかけられたときは、最初から正社員で、と言われたのに「家のことが忙しいのでパートにしてください」と頼んだ。なぜかというとモラ上司のことが頭にあったので「入ってみて良くない職場だとわかったらすぐ辞めよう」と考えたのだ。職場の人間関係がどうなっているのかもよく知らないと、安心して働こうという気になれなかったのだ。そして信頼できる職場だと思えるようになった1年後に、正社員のお願いをしてみたら、すんなり通してくれた。そこの社員の人たちは当たり前に個性があるものの、私への対応も、仕事の進め方もごく普通だった。仕事でミスしたりわからなければ、普通に指摘して教えてくれた。上司もさばさばしてこだわない感じの人で、態度を使い分けたり意地悪な要素はまったくなく、本当に助かっている。今の職場に就職してからもう4年たった。仕事上しんどいことはあっても、やりがいのある仕事を与えられ、自分を活かして働かせてもらい感謝している。
かつてモラ夫とモラ上司からダブルパンチをくらっていた頃には、もしかして自分がモラを惹きよせているのではないか、どこに行ってもモラと出会い、モラに苦しめられるのではないかと思ったりもした。しかし、モラから離れてみればそんなことはなかった。私はモラ夫と出会う前には、いい職場やいい人間関係に恵まれていた。そして、モラから離れてみたら、再び職場でもいい関係を作ることが出来た。いや、モラ被害を受けていたときも、モラ以外はいい人たちが周りにいたのだ。それなのに、モラのことが頭の中を埋め尽くし、周囲を見るゆとりがまったくなかった。
モラとの出会いもあるだろう。モラに絡め取られる時もあるだろう。
でも私達は、自分にとっていい人間関係を作る力をもっている。
その力を持っているはずだと思う。