万全の準備をしたつもりでも、何かしら抜けてしまうのが世の常だが、今回の旅もちょっとした忘れ物をしてしまって、旅の途中で少し慌ててしまった。
一応、写真も一つの趣味としているので、旅にはデジタル一眼レフは欠かせない。
広角やら望遠などの交換レンズやストロボなどの備品をカメラ専用に作られたバックパックに入れて持ち歩いている。
カメラ撮影に必要な全てのモノが入っているが、取り出して戻し忘れたモノがあった。
それは充電器だった。
旅の出発前にフル充電した時に取り出し、バッグに戻すのをすっかり忘れてしまっていたのだ。
ちなみに私の持っているカメラはニコンD-70で、一週間くらいの旅行だったらフル充電した電池1つで充分持つ事を経験上知っていた。
従って電池も1つしかもっておらず、今回も大丈夫だろうとタカをくくっていた。
しかしながら、撮影枚数が増えれば日数に関係なく電池は消耗するし、ホテルのテレビで撮影画像をチェックしながら再生するなどすれば、それだけ電池は酷使されることになって、予定通りにはいかなくなってくる。
ちょうどこれから石垣島へ行くという時になって、急に電池の残量が減ってきて、あと2~3枚しか撮れないところまで追い込まれた。
搭乗する飛行機の時間が迫ってくる中、那覇市内の大型カメラ店を車で捜し求めた。
レンタカーの返却時間も考慮しなければならず、少し焦っていた。
ようやく、全国展開してるカメラのキタムラの店舗を見つけたので急いで飛び込んだ。
充電池と同タイプの乾電池があると勝手に思い込んでいた私は眼の前にいる店員をつかまえると、早速事情を話して、乾電池を買い求めようとした。
だが、かえって来た答は”そんなものは存在しません”だった。
フィルムタイプの一眼レフにはあっても、電力をより必要とするデジタル一眼レフには無いとのことだった。
つまり、充電器か、充電池を購入するしか道がなかったのだが、充電器は店に在庫がなかった。
充電池はあってもフル充電されておらず、どのくらい持つか分らない。
時間が有れば、充電してくれるとの事だったが、生憎その時間も無い。
もう万事休すだと思った。
石垣島での写真を諦めれば、それでいいと思いかけたその瞬間、その店員がちょっと待ってくださいと言って、一旦店の奥へ引っ込んで、手には充電池をいっぱい抱えて出てきた。
なんと、店で常備している充電池の備品だった。
確か該当品があったはずだと備品の山をかき分けると果たして目的の充電池が見つかった。
カメラに装填するとゲージはフルを示していた。
これを中古として売ってくれるかと思いきや、元々非売品だし、どの程度もつか分らないのでそれは出来ないと言う。
じゃどうするのかと思っていると、店員の口から驚きの言葉が出た。
「貴方を信用してタダで貸し出しますよ。沖縄から帰られる時にお返し下さい。」
「えっ、でもこれから石垣島へ行って、3日後に帰るんですけど、もう那覇空港から出る事はなく乗り継ぎしてそのまま帰るんですが・・・。」と私。
「・・・・。」
少し、間があったのはしまったという心理が店員に働いていたのかもしれない。
「いえ、大丈夫です。お帰りになってから郵送でもいいので返却して下さい。」と言って、名刺を差し出した。
名刺を見て驚いた。
店員だと思っていたら店長さんだった。
店長さんだからこその判断だったのかもしれない。
新品を買えば5000円以上はする代物である。
名前も聞かず、勿論身元を証明するものも一切求めず、全く見ず知らずの人間に備品とはいえ充電池をタダで貸してくれるなんて信じられなかった。
旅行者というのもウソかも知れず、どういう基準で私を信用して頂いたのか全く分らずじまいだ。
一見いかにも怪しそうなヒゲオヤジなのにである。
とにかく急いでいたので、礼もそこそこに、その充電池を貸して頂いて、店を後にした。
途中で電池が切れる心配をされていたが、そんなこともなく、結局自宅まで電池はもった。
お蔭様で貴重な思い出の写真を存分に撮ることが出来たのは本当にありがたかったと思っている。
戻ってこない事を覚悟した上で貸し出されたと思うが、その時の店長さんの判断と親切心に頭が下がるばかりである。
帰宅後、フル充電したのち、感謝の気持ちをしたためたお礼の手紙とほんの気持ちの謝礼と共に郵送にて返却した。
このブログを見ていただく事はないと思いつつも、この場においても改めて感謝の気持ちを表したい。
”カメラのキタムラ 那覇・小禄店 店長 森雅彦さんへ”
その節は大変お世話になりました。
本当に助かりました。
ありがとうございました。
こんなことがあるんですね。
いかにも怪しそうなヒゲオヤジ・・・・に笑いました。
きっとこだわりさんが丁寧に返却されたことで、
この店長さんはやっぱり人に親切にしてよかったと
思われることでしょうね。
そしてまた他の困っている人に親切にしてあげられるのでは
ないでしょうか。
どこかで裏切られても、こだわりさんのような方がいてくれた事を思い出して、そう悪く思わないと思います。
本当にいい旅の思い出でしたね。
よく観光地の商店はスレてるなんて聞きますけど、
その店長さんは本当に親切な方でしたね。
こだわりさんじゃなくて伊東美咲だったら違う話でしたけど(^^;
そうやって信用してもらえると、
絶対この信頼に応えなければ…と思いますよね。
しかし本当に親切な店長さんで。
きっと他の接客でもこういった雰囲気がにじみ出る人ではないでしょうか。
ダイレクトに売り上げに繋がる行動ではなくても
こういう人間性がお店の顔になっていくんでしょう。
…いつか検索でたどり着いてくださると良いですね。
今でも信じられない思いでいっぱいです。
せっかくの親切を仇には絶対にしたくなかったですから、ある意味私に対してのプレッシャーにもなりました。
誰でもこういう親切を受ければ同じように思うでしょうが、時間が経つとつい面倒になって一日延ばしにしてると、結局返せずじまいになる惧れが大です。
それだけは避けたくて急いで返却しました。
店長さんに貸して良かったと思って頂きたい一心でした。
観光地といっても、そのカメラ店は市街地にあって、あまり観光客が来るような場所でないので、いわゆるスレてる部分があまりなかったんでしょうね。
だから私のような困った人が泣きついてくることも今までに無かったんだと思いますよ。
今までに嫌な思いをしてなかったからこそ、こんな親切にして頂いたんだと思ってます。
そこで裏切ることをしてしまったら、物凄く傷つくだろうと思いました。
仰る通りです。
その店長さんの気持ちを裏切る事なんて出来なかったです。
確かに人当たりのいい人でした。
こんな繋がりがあるとその人から是非買いたいという気になります。
ですが、沖縄は遠いです。(笑)
敢えて社名と実名を書いて投稿したのは、それだけ検索に引っかかって関係者の目に留まって彼に間接的に伝わるかもしれないし、少しでもいい印象が誰かに伝われば、宣伝となって、ささやかな恩がえしになるというつもりでした。
あくまで気持ちの問題ですがね。