サイケデリック・ペンタトニック!?

カリメロレコード(架空)の店主の何でもござれの日々の音楽コラム

Juan De La Cruz/Himig Natin

2005年04月19日 22時01分20秒 | 邦楽
フィリピンのニューロックバンドの1973年のセカンドにして、
70年代最高のヘヴィー・ニューロックアルバム。
私のブログのカテコリーでは、「邦楽」。
何故かというとドラマーが、ジョーイ・スミスだから。

ジョーイ・スミスの名前だけで、
ピンときた貴方はなかなかのニューロック通。
そう日本のバンドの中でもとりわけ強烈に”ドラッグ”の
イメージがつきまとう、「スピード・グルー&シンキ」。
そのドラマーがジョーイ・スミスなのである。

その彼が母国、フィリピンに帰国した際に参加したバンドが「Juan De La Cruz」。
ジョーイが参加していないファーストでは、オルガンやサックスが加わった、
同時代のサイケデリックなR&Bバンドという趣きだったのが、
このセカンドではギター、ベース、ドラムと最小限のトリオ編成に。
それにともないサウンドも無駄な装飾を排したブルースを基本にした
ハードロックサウンドに。

そもそもジョーイがどのような経緯で加部”ルイズルイス”正義と
陳信輝とともにS,G&Sを組むようになったのか分からないのだが、
このバンドでは、S.G&Sの正しく延長線の、それでいてその線をさらに
ぶっとくしたような強烈なサウンドを聞くことが出来る。
S,G&Sがわずか2枚しかアルバムを残していないので、
その影を追いたい人には彼らのこのアルバムはとっておきだろう。

歌詞が基本的に英語なので、フィリピンのバンドと言われても違和感はない。
むしろアジアの辺境の国でこのようなサウンドが生まれていたことすら、
あなたは微塵も感じないであろう。
S,G&Sの2ndで演奏されていた「Wanna Take You Home」のよりヘヴィーな再演、
ブルースソング「Blues Train」やロックン・ロールなどの
隙のないそれでいてルーズでアシッドでハードな曲の数々は、
同時代のアートロック、ニューロック、ヘヴィーロックバンドとも全くひけをとらない。
その様は「世界に我ら、Juan De La Cruzあり!」と
高らかに宣言しているようでもある。

マニアの間ではオリジナルのLPが、それこそ数十万で取引されていたらしいが、
最近になってフィリピンでCD化され、それがようやく国内にも出回り始めた。
まだまだ手に入りにくい状態だが、
店頭で見かけた方は是非手にとっていただきたい。

アルバムの一曲目(「Take Your Home」)でこれほどテンションのあがる曲も
そうそうない。素晴らしいロック・アルバムである。