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2011.6.1~。大津波、宮古市、鍬ヶ崎復興計画。陸中宮古への硬派のオマージュ。
 藤田幸右 管理人

■鍬ヶ崎浸水シミュレーションの不実

2012年09月07日 | どうなる鍬ヶ崎

このシミュレーションは現在の鍬ヶ崎地区にかぎらず、地域を越え、時間を越えて影響が大きい。そのためにここに再現して注意を呼びかけたい。シミュレーション図は(1)図~(4)図まで新しい日付けからの逆戻りの順番で示した。残念な不実の連鎖である。




(1) 「鍬ヶ崎の区画整理事業説明会」(2012.7.12)
      で示されたシミュレーション

 (図クリックで拡大)


このシミュレーションを一目見て驚いた。図の真ん中に「津波浸水シミュレーション…」で始まる説明窓があるが、窓で大事な所を隠しているからである。鍬ヶ崎の日立浜、角力浜地区が、というよりこの地区の防潮堤予定線が(間違っているので)窓で隠されているのである。間違っているなら訂正すればいいのにそうしないで小細工をもって隠している。その意味が分からない。? 本気度がマイナスで伝わってくる。また当の地域住民の無反応にも疑問が残る。
  もともとの図面は下図の通りであった。防潮堤の位置がすでに間違っている。「まちづくりを検討する前提となる」といいながらついに訂正される事はなかった。

(1)-2
2012.2.17「鍬ヶ崎地区復興まちづくり計画」に示されたもの。
 


本来、防潮堤を示すピンクの線はそのように陸地側に入りこまず海岸線にそって龍神崎にぶつかる位置であったはずである。

本旨が後になったが、行政はこの図で鍬ヶ崎地区の津波浸水深0(ゼロ)を示している。鍬ヶ崎は津波からの危険がない。少なくとも危険は少ないと言いたいのである。高台移転はあきらめて…と言いたいのである。

 



(2) 「第 4 回鍬ヶ崎地区復興まちづくり検討会資料」(2012.2.6)
      「お詫びと差し替え」図

(2)-1  (2)-2


ここからはまた別の誤り…。左図が「正」、右図が「誤」とされ、右図は「更なる地盤沈下を考慮した」ものであるから誤りだとされる。今次3.11地震で宮古市は地盤沈下が-0.42mあったとされる。将来の地盤沈下を更に(0.ウンm)考慮すると岩手県のシミュレーションと合わなくなるから…「誤」であるという。そのような理由というのも理に合わない話である。a、将来の地震による地盤沈下を考慮する事は誤りでもなんでもない。あるのであればデータとしても貴重である。b、しかしこの「誤」シミュレーションには「更なる(0.ウンm)の地盤沈下を考慮した」という説明も形跡もない。何を言っているのだろうか? c、岩手県と合わなくなるから…とは何のこっちゃ? 岩手県も「誤」シミュレーションも将来の地盤沈下を考慮してないから、それは単に岩手県県土整備部から「鍬ヶ崎の浸水表現はやめなさい」と指摘された事を言っているにすぎないのである。「正」シミュレーションとは、そのため、あわてて浸水を消しゴムで消したものとしか考えられない。許されない事だ。

ではこの「誤」シミュレーションはどこ発のシミュレーションだったのか? 国なのか、市独自のものなのか? 調査主体の事がいつも曖昧である。「正」シミュレーションの出自が県土整備部のものであることは分かったが、そもそも公に公表されたものが訂正されるのであれば、単に岩手県が正しいというような事ではなく、本来、もとに戻ってシミュレーションの白紙化を目指すべきなのである。シミュレーションの諸条件を見直し、出直して地域住民との最初からの話合いに戻るべきなのだ。シミュレーションは「差し替え」ではなく破棄されるべきであった。住民の頭をリセットし、自分の脳みそも正常にもどすべきものであった。

この「正」図「誤」図は単に浸水を少なく見せようとする行政の意図で作ったものにすぎない。そのようなことはあってはならない。シミュレーションに作為やうそがあってはどうにもならない。最低でも条件ごとのシミュレイト図面を全部公開する余裕が必要──




(3) 「第 3 回鍬ヶ崎地区復興まちづくり検討会資料」(2012.1.12)


このシミュレーション図の枕詞に「これまでの検討会で津波シミュレーションの情報を発信してきましたが、国や県から復興まちづくりを検討する前提となる津波シミュレーションの条件が指示されました。これは…効果的な整備を進め、過大な施設整備を行わないためであると考えます。」と。
あきれてものも言えない。シミュレーションの結果に注文をつけている。シミュレーションとは、客観的なデータを入力した多少とも科学的な結果だと思われているが、それを平気で否定して反省の色がない国、県、市の公務員たち。「過大な施設整備を行わないためである」というのは「シミュレーション」とは言わずに「政治」とか「政策」とか「行政」とか「指示」とか「議論」とか「アイディア」というべきものなのです。注文通りのシミュレーションというのなら誰も今後シミュレーションを信用しないことになる。

ところでこの(3)図こそ前の「誤」シミュレーションそのものなのである。単純に平均最高潮位から3.11地震時潮位に潮位を変えたシミュレーションである。「誤り」でもなんでもない。前のものと併記すればよかったのに…。正しく浸水がちょっと残っただけである。正しく浸水をそのままにしておけばよかった。しかしもみ消した。「正」シミュレーションこそ不正、不実なものなのである。国土交通省、県土整備部、宮古市は恥(はじ)を知るべきである。




(4) 「第1回 鍬ヶ崎地区復興まちづくり検討会」(2011.11.10)
      に示されたシミュレーション 


(4)図は最初の検討会に示された宮古湾の津波シミュレーション。この図で平均満潮位(+0.69m)が後ほど(3)図の3.11地震時潮位(-0.46m)のシミュレーションに変わっていることはわかると思う。その潮位差は1.15m。しかし地盤沈下値(-0.42m)が後に「更なる地盤沈下を考慮した」シミュレーションになっているかどうかは分からない=(2)-2図,(3)図=。くりかえすが私は考慮していないと思う。これらの後の図が「更なる地盤沈下を考慮した」とされるのは思いつきのうそで、最高潮位から3.11地震時潮位に変えたときに残ったわずかな浸水を消しゴムで消したいがための言い訳にすぎなかったのではないか?

一見まともなシミュレーション図のように見えるこの方の(4)図も、実施主体、条件、データ等のほとんどの要件が示されていない。ていねいでもなく詳しくもない。何よりも、鍬ヶ崎の津波浸水深を危険だからとか危険でないからとか(この図では危険をいいたい)、行政の政治的目的で勝手に変えられるシミュレーションはまともではない。


(1)図から(4)図まで、これでは今次津波から将来に向かってなにかしら教訓を引き出そうという現地をふくめた全国の津波被災地帯の住民になにも応えることが出来ないことは明らかである。シミュレーションは失望だけだ─




[関連記事] 鍬ヶ崎の問題:鍬ヶ崎は市長に見放された地区?






 

 

 

コメント
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