すなば たかひろ

「元気で人に優しい鳥取」を取り戻すため、県議になった元新聞記者の挑戦記。みんなで鳥取の未来像を考えましょう!

湖山池高塩分化問題への私の考え方

2014年04月02日 | 日記

 私は記者時代から環境保全について取り組んできましたし、今のその姿勢に変わりありません。湖山池の高塩分化の問題も、環境保全の視点から発言を続けています。もちろん、湖山池周辺に住んでおられる皆さんの住環境も大事です。アオコやヒシが住環境に大きな悪影響を与えていたことも知っており、その対策もしっかりすべきですが、塩分濃度を挙げて淡水性動植物を死滅に追いやるような選択肢は間違えで、他の選択肢を選ぶ出来だと思っているのです。2月議会では高塩分化の中止を求める陳情について、採択を求める方向で討論しました。原稿を掲載しますので、一読いただき、ご理解を賜れば幸甚です。

以下、討論原稿です。

 陳情24年生活環境第27号 湖山池高塩分化事業の中止と見直しを求める陳情に対して、委員長報告に反対の討論を致します。

 この陳情は、2012年3月12日、湖山川の水門が開放され、湖山池の塩分濃度がこれまでになく高くなったため、それまで湖山池で生息していた淡水生の動植物が壊滅的な打撃を受けたことから、鳥取大学で昆虫学を専攻する教授から提出されたものであります。形式的には個人からの提出でございましたが、内容は鳥取県生物学会,日本野鳥の会鳥取県支部,鳥取自然保護の会など12団体合同で、知事と鳥取市長あてに提出された要望書と内容はほぼ同じもので、県内の環境保護に携わっている多くの研究者や県民の皆様の願いを包摂したものと言っても過言ではないと思います。

  湖山池の塩分濃度の問題は、私だけでなく、前田議員、坂野議員も本議会で取り上げてられました。鳥取県の生物多様性を考えると、それだけ大きな問題であるからです。湖山池は元々、湖山川で千代川と繋がっていました。川の流れがありますから、潮の満ち引きがあったとしても、湖山川を海水が遡っていく量は知れており、湖山池は汽水湖といっても、その塩分濃度は非常に低かったわけです。ところが、水害防止の為、1983年に湖山川を直接、賀露港に直結するように河川の付け替え工事が行われます。川ではなく、海と繋がったため、潮の満ち引きに伴って、海水が遡上しますから、湖山池の塩分濃度は急激に高まりました。その結果、湖山池の水を使っていた農業に塩害を生じ、水害防止のために1963年に設けられていた水門を常時閉じ、海水の流入を防ぎ、元の淡水に近い塩分濃度の戻したわけです。

  水門を閉じたのですから、水に流動性は悪くなりました。加えて、周辺の都市化も進んで生活雑排水の流入も増え、水質は一気に悪化してしまいました。戦後、タンパク源として重宝がられていたヒシも取られることがなくなり、異常発生をしました。秋には枯れて、水没しますが、これがまた富栄養化の元となって、また繁殖に輪をかけるという悪循環が生まれました。富栄養化はアオコの異常発生へも繋がりました。そこで、湖山池100人委員会、そして、湖山池会議での議論を経て、塩素イオン濃度を東郷湖並の1リットル当たり2000mg~5000mgにあげる高塩分化事業がスタートしたえわけです。

  ところが、その結果、テナガエビは姿を消し、伝統の石竈漁で取っていたフナもいなくなりました。絶滅危惧種のカラス貝は周辺の池に数個体残るだけとなりました。カヤやヨシ、ガマといった水性植物は、多くの生物を育み育ててくれていましたが、枯れてしまいましたし、トンボの幼生であるヤゴは淡水にしか住めませんから、トンボも見ることはできなくなりました。まさに、陳情書の指摘している状態になったわけであります。

  福祉生活病院常任委員長の報告では、請願に不採択にした理由として3点挙げられました。1点目は農業者や周辺地区住民の同意を得て、「湖山池会議」で取り組みを開始したことが理由とされました。しかし、一昨年11月の本会議の一般質問で申しました通り、住民アンケートは汽水化へ誘導するような一方的な表現が見られたものであったばかりか、湖山池会議も、行政関係者で構成され、湖山池の昆虫や魚介類、水生植物に詳しい地元研究家の参加を求めることもなく結論が出されています。加えて、湖山池会議はその設置根拠となる法令もないただの県と鳥取市の連絡調整機関です。生態系保全は科学的知見に立って考える必要であり、意思決定の過程には大きな瑕疵があったと思います。

 不採択の理由の2つ目は、これまでの湖山池将来ビジョン推進計画に基づく流入負荷の軽減やヒシ狩り船を導入したことが掲げられていますが、水質は改善したのでしょうか。2月5日に開かれた湖山池環境モニタリング委員会では「塩分化の取り組み後も、決して水質が改善されているとは言えない」と委員長が指摘されています。確かに塩分化によってヒシとアオコは退治できましたが、これは水が綺麗になったわけでもなく、ヒシやアオコは汽水では生きられずに死滅したに過ぎません。しかも、ヒシ狩り船は導入に至っては、効果が無いので2011年に琵琶湖から傭船したのを最後に、導入を止め、塩分化に舵を切ったのであり、事実誤認だと思います。

 そして、「環境モニタリング委員会」の意見を踏まえ、湖山池会議で議論を進めていくことが3つ目の理由とされていますが、環境モニタリング委員会では「湖山池の課題に対する意思決定の在り方や制度設計を考える必要がある」という意見が出され、2月13日の湖山池会議でも「湖山池の課題に対する意思決定の在り方については、専門家、地域住民、関連する利害関係者の幅広な意見を踏まえて、行えるよう次回湖山池会議に向けて提案できるよう検討する」という方針が確認されたと聞いています。もしそうであるなら、陳情は不採択ではなく、採択すべきではないでしょうか。

  今回の問題の根本には、自然と人間の共生の在り方があると思います。塩分濃度を上げて、ヒシやアオコを死滅されるという方法は、自然を征服しようという発想です。そうではなく、下水道の整備を進めて流入水を改善し、カヤやヨシ、ガマといった水性植物を増やして水を浄化し、こうしたヨシ原で多くの生物を育み育てて、生物多様性を確保するという自然と共生する生き方が、現代社会では重要なのではないでしょうか。

 塩分化以降、何度もたくさんの魚の斃死がありました。昨年の秋は、湖山池周辺では赤トンボを見ることはできませんでした。アザラシが遊ぶ湖山池ではなく、トンボが湖面の上を飛ぶ湖山池を県民は願っていると思います。私たちはもう一度、長年、鳥取県の自然保護に尽力してこられた先生方の意見に耳を方向け、科学的知見に立って、湖山池の環境保護を考えないといけないのではないでしょうか。

 陳情の採択を願って、委員長報告に反対の討論をしました。議員各位の賛同をお願い致します。

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