ととじブログ

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その日のまえに / 重松清

2020-05-09 04:52:58 | 本/文学

「最大級に泣いた」という、武田玲奈(たぶん)お勧めの本『その日のまえに』、重松清著。

リアルで嫌な事や悲しい事がいくらでもあるので、わざわざフィクションに「泣ける話」はあまり求めていないのだけれど、読んでみた。

本書は7編の連作短編集という形式になっている。
すべて身近な人の、または自分の「死」が中核にある。

死がテーマだから、かわいそうにな…つらいだろうな…悔しいだろうな…と登場人物に感情移入はするし、もし自分だったらと考えると、怖く、また悲しいストーリーとなっている。
とは言え、大部分はそれほど泣けない。
しょせんは他人事だからな、という冷めた印象さえ持ってしまう。

では、大して泣けるようなストーリーではないのかというと、決してそうではない。
本書の「泣ける」場面は、突然に、来る。

淡々とした思考や会話や出来事が積み重ねられていき、そこで一気にベールが剥がされる。
そこで、死というものを代償にあらわになった、とてもとても愛おしいものに出会う、と言えばいいのかな?
ちょっと違うかな?
悲しいという一言では言い表せない、どのような感情によるものかすぐにはわからない、突発的な涙に襲われる作品だった。

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その日のまえに (そのひのまえに)
著者:重松清 (しげまつきよし)
発行所:文藝春秋
文春文庫
2008年9月10日 第1刷


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