第２３７６話「食パン」

GITANESはタバコの味がする。
それとは無関係に・・・。

高級食パンブームであるらしい。
いや「下火じゃないか？」という意見もあるらしい。
どちらでもいい。
とにかく、高くて「おいしい」とされる食パン専門店
が増えている（もう減っているらしいけど）。
どんな味がするかというと、食パンの味がする。
そう言う他ない。食パン以外の味はしないぞ。
とにかく食パンの味がする。
一頃は長い長い行列に並んで、それでも買えなかったり
完全予約制だったり、いや当日分は僅少で
だから並ばないと！という時期もあった。
そして苦労を重ねて買ってきて、食パン味の
食パンを食べるのだ。それがいいらしい。
幅はあるんだろうけどそれ以上でもそれ以下でもない
だろうと思うのだが、
まあ、そんなことはいいのですが。

先日、高級じゃない食パンを食べるときに
何の気なしにコーヒーに浸して食べてみた。
こんなことするのは４０年以上なかった。
ついやってしまった。
美味かった。いや本当にうまかったのかどうか
もうわからないのだが、少なくともすんなりと
口から喉、食道を通り抜けた。
ああ、子供のころはこんな感じだったな
と色々思い出した。
いつからか、そういうことをしなくなってしまった。
多分、自分の思い込みのせいだろう。
「こんなことするのは子供。大人はそんな風に
しないもの。」と思い込んでいた。

しかし、色々なパンをカフェオレに
浸して食べるのはフランスでは奇異ではないし、
そして大人もそうなのだ　というではないか。

やってみて美味かったら、もう大人も子供も
恥も外聞も意地も矜持も関係ない。
やりたいようにやるのだ。
大人げないとか、男だからとか女だからとか、
日本人だからとか社会人だからとか、
そんなものに縛られず、コーヒーにパンを浸して
食べるのだ。何者ももう私を止められないのだ。
止められてないし。

あとはごはんにみそ汁をかけて食う
という文化を誰か逆輸入してくれないだろうか。
まずパリあたりで流行ってからであれば
恥ずかしさも半減するような気がするのだが。