小品日録

ふと目にした光景(写真)や短篇などの「小品」を気の向くままに。

内田百 「柵の外」

2006-05-31 23:58:26 | 内田百
先日(5/16)は、漱石の博士号辞退の手紙を取り上げましたが、今度は、弟子の百鬼園先生の芸術院会員辞退について述べた随筆です。
芸術院会員に選ばれたら、お断りしようと待ちかまえていた(?)百先生が、いよいよその念願を果たす時が来ました。
辞退の理由は、
「なぜと云へば、いやだから。
 なぜいやか、と云へば気が進まないから。
 なぜ気が進まないかと云へば、いやだから。」
との循環論理です。
本音は、題名に表れているように、英語の教科書に出ていたという、柵の外に出た豚の気持ちというわけでした。
漱石の生真面目な頑固さに対して、百先生は、ユーモアたっぷりにとぼけています。
旺文社文庫『夜明けの稲妻』で9ページ。
ちくま文庫「内田百集成 15」に収録されています。
蜻蛉玉―内田百〓集成〈15〉

筑摩書房

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