和夫の妻の有紀は美貌の母親に似ていなかった。
父親に似た無骨なエラの張った相貌をしていた。
母親の美豪を受け継いだのは、3男の准三だけであったのだ。
有紀の父親が亡くなったのは、有紀が17歳の高校生の時だった。
幼いころから父親の有三に可愛いがられていた有紀は、父親のような包容力のある愛を求めていたが、男性との縁は遠かった。
中学生から都内の女子高へ通っていて、短大も女子校だった。
26歳になった時に、近隣の世話好きな区議会議員の奥さんの勧めで、和夫と見合いを結婚した。
二人は共に恋愛経験が乏しかったのだ。
だが、不思議なものもで、見合い結婚前のわずか2か月の交際期間でも、恋愛感情は醸成されるものだ。
二人は、椿咲く大島へ婚前旅行をし、図らずも童貞と処女のまま結ばれたが、和夫26歳、有紀20歳の伊豆大島の初夜は、未経験のために互いにぎこちないものとなった。
「痛い、痛い」と腰を引き、交尾即後に顔をしかめた有紀の反応は、和夫には実に心外であった。
愛撫も疎かにした性急な和夫の性行為は裏目に出たのである。
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