アンナは、鶴橋に実家があり、大阪生まれ、大阪育ちであった。
「アンナ、大阪嫌いなんだ。だから、東京へ来た」
昭は仕事で約1年、大阪に在住したことがあり、「とても、いい街だよ。大阪はね」と言う。
2人はベッドでしばらく休憩する。
酔いもさめてきた。
「大阪は在日の首都である」──。
そう表現したのは、かつて「戦後最大のフィクサー」と呼ばれた許永中だそうだ。
イトマン事件や石橋産業事件で逮捕された彼は、在日韓国人2世として大阪の中津に生まれ、この街をホームグラウンドにした。
全国の在日韓国・朝鮮人50万人のうち、大阪府には最も多い10万5000人あまりが暮らす。
日本国籍を取得した在日も少なくないため、実際にははるかに多い数の人々が朝鮮半島にルーツを持つと見られる。
「アンナには大阪に彼いたけど、韓国へ行ったきり、戻ってこない。日本ではいいことなかっからね」アンナは涙を浮かべる。
そして、昭の胸に顔を埋める。
2人はホテルを出て駅へ向かう。
アンナは錦糸町の北エリアのアパートに住んでいた。
昭はアンナと駅で別れて中野の自宅に帰る。
そして、東京方面へ向かう総武線の電車内はがらがらであり、彩音から妊娠したことを告げられたことを重く受け止めていた。
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